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ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
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46.勝負の行方は····


 開始の合図が掛かったがお互いに相手の出方を見合う形となっている。間合いを少しずつ詰めながらどちらが先に飛び込む形でもない。


「おら、何時でも掛かってきて良いんだぜ」


 ガストは余裕が有るのかそう煽ってくる。挑発だとは分かっているが、このまま何時までも動きが無いでは勝負が着かないので誘いに乗ることにした。


「わかった、なら遠慮なくいかせてもらう」


 そう言って俺はガストに素早く詰め寄り先ず右手に持つ剣を振り下ろした。ガストは片手で剣を持ち受け止め様としたが瞬時に何かを察して両手持ちに切り替えて受け止めた。


「っく、ふう見誤ってたみたいで悪ぃな。力はそこそこ強いじゃねぇか」


「それはどうもっ、と」


 俺は攻撃を終わらせる事もなく右手を素早く戻し、左手に持ってる剣を水平に薙ぐようにガストに振るった。勿論、ガストもそれに合わせて防いでいる。


「まだまだいくぞっ!」


 そう言いつつ俺は同じ様に素早く角度を変えつつ切り込んでは引き戻し、相手に反撃する暇を与えないようにしていった。ガストは反撃しようにも防戦一方で少し焦りの表情を見せていた。


「っチ、このままやられっぱなしも癪だから本気でいかせてもらうぞ!」


 そうガストが言うと野盗の頭が使っていたオーラみたいなものを身に纏い始めた。それと同時に先程よりも剣で打ち込んだ際の感触が変わり始めた。感覚的に言うのであれば、先程まで枝に対して打ち込んでいたものが木に対して打ち込んでいたかの様なそんな感じである。

 更に防戦一方だったガストは切り返してくるようになった。むしろ打ち合う度に攻防が逆転し始めてきている。


「どうした!さっきまでの威勢はどうしたんだ?押され始めてるぞ?」


 そう言ってガストは自分の方が有利と感じ始めたのか、こちらのペースを更に乱すため煽ってくる。俺はと言うとそんな挑発に乗るわけもなくひたすら攻防を繰り返していた。気づいていると思うがまだ仙気を身に纏っていないため押され始めている訳であり、俺も余力は十分にある。では何故に使わないのかと言うと·····こんな安全にしかも人と打ち合う機会が無いからである。何時もであれば殺し合いになるのに死なないで済むと分かると好機と思ってしまっている。

 いや、慢心するなこれは勝負なんだって言うのは分かる·····けどまだもう少し打ち合いたいのが本音だ。


 ただひたすら打ち合い続けたがガストは一度態勢を立て直す為か俺の剣戟に合わせて後方に大きく跳んだ。俺はここで追撃を敢えてせず息を整える事を選択した。ガストはまだ余裕そうに息を整えながらも口元を吊り上げながら言ってきた。


「ちっとはやるなぁ、ここまでやりあえるなんてな」

(いや、意味わかんねぇよ。ゴブリンがこんな強い訳ねぇだろ。こちとら闘気纏ってんだぞ。それとほぼ互角位って。挑発してペースを乱そうとしたが意味がなかったしどうすっか)


「ふぅ、どうも」


 俺は息を整えつつ返事をして、まだもう少し打ち合おうかなと考えてた矢先何杯目かわからないがレイナがヤジを飛ばしてきた。


「おーい、ルゴウー。早く終わらせろよー。じゃないと俺も乱入するぞー」


「ええっ!?」


 あの人良い感じに酒が入ってきてるのか変な事を言い始めた。隣で飲んでいるレヴィアも「そうですよー、早くして下さい」って言ってる。短い付き合いだがこれは絶対乱入してくるなと思い、少し残念に思いつつ泣く泣く自分の持つ全力で挑むことにした。


「すまない、レイナなら本気でやりかねないからここからは全力で行かせてもらう」


「へ?全力?」

(え、嘘だろ?あれで本気では無かったの?)


 ガストの心境を知るよしもなく、俺は仙気を身に纏い戦闘態勢に入った。ガストは俺の変化に気づいたのか慌てて戦闘態勢をとりオーラを身に纏い始めた。


「おら、掛かってこいや」

(いや、大丈夫だ。たかがゴブリン。少し強くなるだけだ。ビビる事はない)


「では、いくぞっ!」


 そう言って俺はガストに駆けながら普段はあまりやらない戦法を取ることにした。先ず右手に持つ剣をガストに投擲し更に時間差で左手の剣も投擲した。ガストは俺のこの行動に舌打ちをしながらも1本目は避けたが時間差で投げた2本目は防ぐ事にしていた。狙い通りである。その間にも俺は詰め寄っていて背中に差していた大剣を抜きつつ振り下ろした。


 ガストは舌打ちをしつつ回避が間に合わないと考えて剣で受ける選択を取ってしまった。そう受け流す訳ではなく受け止めるという選択肢である。


 仙気を纏った俺の一撃はガストのガードを簡単に叩き潰しながらそのまま肩に直撃し、更にそのまま振り抜く形で地面に叩きつける。叩きつけられたガストは立ち上がる事もなく、また動かなくなった。


 周りの喧騒が無くなり、場が鎮まり帰っていた。審判役の人もただ見ているだけである。

 ········やばっ、殺ってしまったか?木剣でも打ち所悪ければ死ぬし、取り敢えず呼吸と脈の確認をしないと。

 そう思い急いで木剣を投げ捨ててガストを仰向けにし呼吸を確認した。·······胸は動いてる、呼吸は大丈夫そうだ。ひと安心である。


 審判役の人は意識を取り戻したのかガストに駆け寄って完全に気を失っている事を確認した。そして·····


「この勝負、ガストの気絶によりルゴウの勝利とする」


 その宣言により周囲から歓声と悲鳴入り雑じった声が上がった。まぁ賭けで負けた奴らと勝った奴らだな。レイナ達も喜んではいるがそれは違う喜びだろうなぁ。


「よっし、ルゴウよくやった!いやぁこれで今日はただ酒に臨時収入も得られたし良いこと尽くしだなぁ」


「さぁ、ルゴウが戻ってきたら飲み直しましょうか」


「だな!」


 はぁ、予想はしてたよ。後、飲み直すって言いながらさっきまで普通に飲んでたでしょが。

 俺は再度深い溜め息を吐きつつ2人の所へ向かうのであった。


 善行 4/108

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