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ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
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44.興味ありませんか?


 気を取り直して俺達は今度はヤクト商会のお店に来た。外観は通常の家より大きめで2階建てとなっている。中に入ると1階部分は雑貨や日用品の類いが多く陳列されている。種類も露店よりは多く揃えられているが、露店よりも奇抜な商品は少ない気がする。価格に関しては·····どっち付かずって感じかな。安く付いてる物もあれば高く付いてる物もある。前回は荷卸しで入ったから気にはしてなかったけど、商品が観やすくて気配りが出来てそうなお店だと思える。

 俺が商品を観てそんな感想を抱いていると店員さんが話しかけてきた。


「いらっしゃいませー、何か御求めですか?」


 俺が振り返ると愛想の良い女性の店員が声を掛けてきた。俺が振り返っても態度を変える事もなく返答を待っている。


「あ、あぁ。生活に必要な物を探しにきたんだ」


 この人は会った事のない人だな。昨日は男の人と一緒に作業してたし。初対面で驚かれないってもしかして初めてじゃないか?

 そう内心、俺の方が驚いていると店員はなんの気無しに会話を続け始めている。


「生活に必要な物······ですかぁ。どういった物が必要なんでしょうか?縄とかでしょうか?」


「うーん、安ければ石鹸とか歯を磨く物とかかな」


「なるほど、石鹸であればこちらが安いかと、値は少し張りますがこちらの石鹸の方がオススメですね。泡立ちも違いますし。縄もありますよ」


「うーん、使ってから決めたいから予算も問題ないし2つとも買うかな」


「ありがとうございます。洗面具などはこちらの棚に揃えてありますので。後はあちらには縄や布関連も用意してあります」


「どうも······ありがとう······」


 なんだろうか、なんか違和感を感じるような気がする。普通の接客のようで違うような。そしてなんか期待の眼差しがするような。····気にしないで買い物をしようか。

 俺は店員の目線を気にせず日用品を更に物色し続けた。その間に店員から必要以上にセールスを受けていた気がする。例えば····


「調味料は産地によって香りや味が違ってきますからオススメはこちらですね。後は美容に良いとされるスライムローションって言うのが流行りでして······」とか


「大きめの布····シーツでしょうか?それくらいの大きさの布は結構値が張りますが大丈夫でしょうか?わかりました、大丈夫のようですので用意しますね。あとこちらの縄もいかがですか?縛りつけるには良いと思いますよ。傷つけにくい物ですのであると便利です」とか


「工具ですか····ノコギリとかハンマーは揃えてはないですね。他の店に行けばあるかもしれませんが申し訳ありません。変わりとしてはなんですが荷馬車を率いる際に必要な鞭は揃えてますよ」等である。


 ··········いや、おかしいなとは思ってたんだよ。所々で必要ない物を勧めてくるなと思っていたんだけどさ。途中で合流したユーリは早々に察したのかニヤニヤしてて何も言わないし。逆にレイナは察した感じもないが疑問には思ってそうだ。これ言わなきゃいけないんだろうか?


「何故です!?何で買わないんですか!?」


 俺がそうこう考えているといきなりそんな声が上がり俺に詰め寄ってきた。


「あれだけさりげなくオススメしていたのに見向きもしないなんて······あなたゴブリンなんでしょ。必要じゃないの!?」


「お、おう?」


「そりゃ、ゴブリンをお客にしたのは初めてですよ。こんなに話せるゴブリン聞いた事がないくらいですもの。ただ、ゴブリンと言えば女性に酷いことをする魔物でしょ。なら例え無害そうであっても奥に秘めた欲望を解き放てばケモノの様に変わるはず。そう思うでしょ。そこまで読み解いたにも関わらず普通の買い物って·····なんで!」


「なんでも、そもそも普通に買い物しに来ただけだし。縄とか要らんかな」


「貴方はホントにゴブリンなのですか!?縛ったり叩いたり出来るんですよ」


「いや、そんな趣味は無いんだけど」


「私は興味あります!」


「ワッツ!?なに言ってんのこの人は!?」


 ホントに何言ってるんだこの娘は!?店の中で他に客は····あ、俺達だけだ。なら良かった····のか?いや良くないな。ユーリはうわぁって引いてるのが見える。レイナは···分かってなさそう。そのままわからんで良いからユーリに聞くな。······あーあ、言わんこっちゃない真っ赤になって俯いてるし。可愛らしいな。ユーリは良い顔してるし。あっちに混ざりたいな、ホントに。


 ユーリ達を見てたら気持ちが落ち着いてきたので問題の店員に目線を向けた。こちらにまだ期待を込めて見ている。


「本当に興味はないんですか?」


 いや、言葉にもしてきたな。なんで一気に残念な娘になるんかな。途中まで良かった····ような気がするのに。


「興味はないよ、残念ながら」


 俺はため息混じりでそう応えるとスゴくガッカリした様に肩を落としていた。


「そんなぁ·····」


「そこまでショック受けるような事じゃ無いんだけどなぁ」


 そう言うと本当に心底残念そうにしていながらも会計を済ませて貰った。最後に店員さんはボソッと独り言の様に「はぁ、帰ったらこの気持ち旦那に慰めてもらいましょうか·····」と呟いていたのが驚きである。旦那さん、居たんだ······


 まぁ、色々と今日は収穫があり満足いくものだったので良しとしよう。終わりよければ全て良しと思い何かを忘れて帰ろうとしたとき肩に腕と腕に柔らかい感触があった。·······あぁ、この感じ昨日も遭ったな。組まれた方向に顔を向けるととても良い顔のレイナがそこにいた。ってか立ち直るの早いな、さっきまで顔を真っ赤にしてたのに。


「さ、荷物置いたらレヴィアを連れて飲みに行こうぜ」


「ホントにお酒好きだねぇ」


「おう、1日の疲れを飛ばしたりするのに最適だからな。ユーリはどうする?」


「······今日はパス。他のメンバーもいないし」


「了解」


 そう言ってレイナがユーリから視線を外した時俺はまだユーリに目を向けていると親指を立てて口パクで『ガ·ン·バ』と送ってきた。俺はため息を吐きつつ気持ちを切り替えて、とりあえず楽しもうと思うことにするのであった。まぁ、2人と飲むのは嫌いでは無いんだけどちょっと飲むペースが早いってのと絡みが段々と·····いや、まぁ楽しんだけどね大変なんだよね。


善行 4/108


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