37.道中(強制連行)での話
俺はレイナに連れられて荷馬車の近くまで来ていた。御者をやってる人からはぎょっとした顔で見られてしまった。いやまぁ、連れて来られたのがゴブリンだからねぇ。
御者の男はレイナに不安そうに尋ねてきた。
「レイナさん、大丈夫····なんですか?ゴブリンですよ?魔物ですよ?襲われたりしませんか?」
いや、まぁそうだよね。普通はそう思うよね。対するレイナは何事も無いように振る舞った。
「大丈夫だよ、安心しなって。ルゴウは何にもしないよ。むしろ良いヤツだ」
「は、はぁ。何でそう言いきれるんですか?善人面して近づいて後から····って考えられません?」
「そうはならないさ。もしそうだったとしても俺達がいるんだぜ」
「まぁ、そう言うことなら良いんですが····まぁ、私は街さえ着ければ文句は言わないですけど」
「おうさ、気にせず気楽に行こうぜ」
いや、ちょっとは気にしてほしい。敵になるつもりは毛頭も無いけど····俺の意思を気にしてほしい。
「ルゴウも諦めたら?レイナは一度決めたらそのまま直進してきますから。それに私達も貴方が居た方が説明もしやすくなりますから」
「はぁ、わかったよ」
俺はレヴィアの言う通り諦め溜め息を吐きながら返答した。もうどうにでもなれ精神だ。
何時までも気にしていたらどうしようもないので聞きたい事を聞くことにした。
「そう言えば、『土蜘蛛』の頭と呼ばれている奴が『アナライズ』って魔法を使っていたんだけど、俺も使って見たが意味が分からなかったんだけど教えて貰えないか?」
「あー、アナライズね。あれは魔物や武器、宝石、薬草等を調べる為に使うもので便利と言えば便利な魔法なの。ただ人に対して使ってもあまり意味は無くて自分が扱える魔法や剣技などの熟練度を知ることが出来るだけなんです。それ以上に詳しく何が出来るかまでは調べる事が出来なくて、魔力の消費が高いから戦闘面では需要が無いんですよね」
「あー、やっぱりそうなのか。何となく検証してみてそうなのかなぁって思ったんだけどその通りだったんだ」
やっぱりアナライズはもっぱら物を調べたい時にしか役に立たないらしい。一瞬ゲーム感覚になりそうな世界だったのにこう言うところは妙に厳しいらしい。
「まぁ、他の魔法よりは覚えやすい魔法では有るけども使い勝手が限定的でむしろ知識を付けた方が早いって考える人の方が多いですね」
「教えてくれてありがとう、レヴィア」
「いえいえ、これくらい問題ないですよ」
そう言ってレヴィアは優しく微笑んでいる。はぁ、ええ子やわぁ。癒されるわぁ。むしろ何でこの子に彼氏が出来んのやろ?俺がゴブリンじゃなければ名乗り挙げたくなるのに。
そんなことを考えているとレイナが肘で軽く突いてきてそっと小声で話掛けてきた。
「ルゴウ、こう見えてコイツ酒癖凄く悪いから気をつけな」
「え?」
え?そうなの?いや、もしかしたらレイナの勘違いかもしれない。お酒で羽目を外す位は誰だって·····
「この前なんか飲んでる時に男が絡んで来てしつこかったからって理由で殴りつけた挙げ句、ボコボコにした時や、飲み比べ勝負の時相手が降参したにも関わらず強制的に飲ませたりしてたな。他にも色々とあるんだが····」
「お、おう」
マジかぁ。想像がつかないわぁ。他の話も気にはなるんだんだけど·····隣を見たくはない。だって明らかにレヴィアが怒ってそうな雰囲気を出してるし。
「レイナー、何を言ってるのかしら?場合によっては怒りますよー」
「い、いやー何でもないよ。アハハハ」
「····今回は聞かなかったことにしますけど、次は無いですからねぇ」
「わかったよぉ」
お、おっかねぇ。顔は笑顔なんだけど目が····。レイナも心なしかホッとはしてるけど、怯えてたし。深くは考えないでおこう。
ふと、レイナが何かを思い出したのか俺に聞いてきた。
「そうだ、アナライズで思い出したんだがルゴウってどれくらい進化してるんだ?打ち合った感じキング位かなぁって思ったんだが」
「····そう言えば調べて無かった。ただのゴブリンでは無いとは思っていたけど」
「それなら私が先程観たんでわかりますよ、彼ゴブリンジェネラルですよ」
「「·····はぁ!?」」
暇だったのか此方の話に合流したユーリであるが俺がゴブリンジェネラルであること知った時に2人して驚いていた。何故に?珍しいって意味か?いやでもキングと話もしてたから珍しいって訳でも無さそうだ。
「嘘だろ、ゴブリンジェネラルって····だって俺の豪炎剣を受け止めたんだぞ」
「·····レヴィア、冗談はキツい。レイナはこのパーティーの火力担当でジェネラル位は余裕なはず。キングでも多少苦戦しても問題無いくらいだし」
「本当なのよねぇ、まぁ『はぐれ』ってのは付くんだけど」
「はぐれ·····って、だとしても普通じゃねぇよ」
「·····ルゴウの強さはゴブリンにしては異常」
·····普通じゃないんですか。でもこれだけは言いたい。
「異常に強いと言ってもあの時1対5だったら確実に負けてた自信が有るんだけど·····俺はただダンジョン潜っては戦って、日常生活では死なない為に自己鍛練を行ってただけなんだけど」
そう、レイナと1対1だったからギリギリ凌げただけで、あれ以上打ち合いしてたら厳しいものがある。むしろ負けていたような····
「まぁ、普通じゃないけど珍しいって訳でも無いからな。そう言った魔物って案外多いし」
「·····確かに、レイナにしてはマトモな事を言ってる。こっちの方が異常か」
「ユーリ、一度お前が俺の事をどう思ってるか話し合った方がいいか」
「·····フ、そんなの決まってる。ただの筋肉馬鹿」
「よーっし、その喧嘩買ってやる!」
······あー、また始まった。ホントに仲良いよな。止めるのメンドイしもう観てようかな。レヴィアも前方に居たローナも溜め息を吐いて呆れてるし。
そんな2人を気にしないようにレヴィアと新たにローナと会話を楽しみつつ、ロサルガと言う街に向かっていった。
善行 4/108
ホントはこうする予定ではなかったんです。ただ面白そうだからって感じで書き続けたら暴走してしまいました。面白く感じて頂ければ幸いです。




