104.これは予想出来んって
遅くなり申し訳ありません
来月からしばらくの間ですが仕事の事情で投稿出来ない可能性が高いのです。申し訳ありません
「街中にゴブリンの上位種がいるにゃんて警備はいったい何をしてるにゃ」
槍を構えながら俺の動向を窺いつつ悪態をつく獣人族の女性。容姿は猫っぽい耳に尻尾、髪は金髪でセミロング?と言っていいのか分からないが肩より少し長い。背もユーリ位だろうか。服装も身軽にするためか軽装でやや露出が多い。しかし常識の範囲内の露出だからそこら変の軽装を好む冒険者とさして変わらないくらいだ。········うん、名前の確認はとれてないがほぼ間違え無いだろう。請けてすぐ出逢うとか誰が予想したよ。出来るわけ無いじゃん。
取り敢えず彼女の警戒心と誤解を解いて武器を納めてもらうか。俺は彼女に声を掛けようと手を挙げ、戦う意志の無い事をアピールしようとした時ミナが俺の前に立ち両手を広げて彼女に言った。
「止めて!!ルゴウに何するの!」
「退くニャ!ゴブリンは危ないにゃ。早くこっちに来るニャ!」
「ルゴウは危なくないよ!優しいよ」
「それは騙されてるだけにゃ。ゴブリンは狡賢いサイテーの魔物ニャ!」
「他のゴブリンとは違うもん!!」
「あー、ちょっと落ち着け。ほらミナも」
ヒートアップしていく言い合いに割って入り、ミナの頭をポンポンと優しく叩いた。ミナは不満気な目で「だってー」と言おうとしたがそれを掻き消す程の驚いた声が飛んできた。
「ニャ!?しゃ、喋れるのかにゃ!」
「喋れるよ。俺はミナとユーリに危害は加えてないし、何かする予定もない。だから一旦落ち着いてーーー」
「嘘ニャ!!そっちの子にお前の臭いが染み着いているニャ!動かぬ証拠だニャ!」
俺の言葉を遮りユーリに勢いよく指を差した。指を差されたユーリはいきなりで驚いたのか身体をビクッと強張らせた。誓って豊胸マッサージ以外はしてないからな。だからユーリさん。モジモジしないでもらえるかな紛らわしいからさ。
「もし仮にそうだとして何でユーリは俺の近くに居続けてるんだ?普通は逃げたりすんだろ」
「························あっ確かにそうにゃ。おかしいにゃ。ん、ん~~?ってことは仲が良いって事かにゃ?」
俺とユーリの様子に気づいた彼女は構えを解き、自分の顎に指を添えコテンと首を傾げた。俺は警戒が緩まった事に少し安堵しつつ彼女の言葉に頷いた。
「仲は良いぞ。友人であり冒険者仲間だ」
「········ルゴウの言う通り。········仲の良い友人」
「そうなのかにゃ········って冒険者!?」
彼女は驚きの声を挙げたと同時に尻尾と耳がピンと立っていた。いやまぁ普通に驚くよな。ゴブリンで冒険者って中々無いからな。無理もないもんな。
「········そう、こう見えて冒険者。········しっかりギルドからタグも貰ってる」
「ほ、ホントだにゃ。········しかも銅級にゃのか」
ユーリは俺の首に掛けてあるドッグタグに指を差しながら言うと彼女は確認する為に俺に近づき、ドッグタグをまじまじ見つつ関心した様に呟いた。
「ギルドからも問題無しとお墨付きも貰ってるし少しは信用してもらえないか?」
「ん~~········わかったにゃ。もう何もしないにゃ。あと、いきなりで突いたりしてごめんにゃ」
彼女は俺への警戒を完全に解き、俺に向き直りペコリと頭を下げた。ようやく納得してもらえて良かった。
「いいよ。誰だって俺を初っ端で見たら警戒なり何なりするだろうし········分かってもらえただけで十分だ。寧ろ俺みたいなゴブリンは稀だからあんたの判断は間違ってないぞ」
「········そう。········ルゴウが変なだけ」
「いやユーリ。変じゃないからな。理性的とか友好的と言ってもらえないか?」
「········ルゴウは存在自体が特殊過ぎ。········ルゴウみたいなゴブリンは居ない。········結論、変なゴブリン」
「あー········うん。そう言われると否定出来ん」
「········でも、そこがいい」
「········お、おう」
な、なんだ?下げてから上げるなんて今まで無かった気がするんだが········ユーリの心境がイマイチ掴めん。お陰で返事がどもる様な感じになってしまった。
ふふんと心なしか柔らかい笑みを浮かべながら見てくるユーリと気恥ずかしくなって目を逸す俺を獣人の女性は交互に見比べ、ハッとした表情をしだした。
「ニャ!?ま、まさか········いやいやいやいや、まさかにゃのかにゃ!?」
「········言っておくがユーリとは違うからな。マジでただの友人だ」
「················そう、まだ友人。········ルゴウにはちゃんと恋人が2人いるし、そうなりつつあるのも1人いる」
「ゴブリンの雌かにゃ?」
「いいや2人とも人族だ。もう1人は········エルフ族なんだが········そのユーリ?まだ正式には付き合ってないからな」
「················································にゃ?」
「········でもそれは時間の問題。········とっととくっつけ」
「········································にゃ?にゃ?」
ユーリと俺の言葉にキョトンとし、目蓋を瞬かせ意味が分からないといった様に首を傾げた。まぁ普通は理解出来ないよなぁ。ゴブリンに恋愛感情を持つなんてさ。ってかユーリ?まだってなんだよまだって········いや、そこはスルーしておくか。
「それよりもだ。まずは自己紹介をーーー」
「ま、待つニャ!?何普通に流そうとしてるのかにゃ。えっ、恋人いるのかにゃ!?それもさ、3人も!」
俺の言葉を遮り混乱しながらも身体ごと詰め寄りながら言ってきた。ち、近い········ってか意外と胸が大きいな。微妙に当たりそうな距離なんだけど。
「あ、ああ。俺には勿体無いくらいの可愛い女性達だな」
「ま、マジかにゃ········」
信じられないといった表情を浮かべる彼女の肩に俺は手を置き軽く離す。彼女も俺のした行動に理解したのか「ご、ごめんにゃ」と小さく呟き何とか落ち着いてくれた。
「········自己紹介。········さっさとする」
「そうだな」
何故か若干不機嫌になったのか少しトゲのある言い方のユーリにどうしたんだと疑問に思いながらも俺は頷いた。
「俺の名前はルゴウで隣にいるのがユーリ。俺は見ての通りゴブリンで銅級の冒険者をやっている。ユーリも冒険者で『紅の戦乙女』のパーティーメンバーだ。後はこの子はミナって言って孤児院の子だ」
「『紅の戦乙女』は知ってるにゃ。この子がそうなのかにゃ」
「········子供扱いしないで。········私は成人してる」
彼女の言い方になおも不機嫌そうにユーリが言うと彼女は驚きの声を挙げた。
「にゃ!?そうなのかにゃ。いくつにゃ?」
「········17」
「························にゃー········そのごめんにゃ。同い年で失礼だったにゃ」
ムスッとしながらユーリが零す様に言うと彼女は1度ユーリを下から上へと見ていった後、気まずかったのか尻尾をたらし反省しながら言った。
「········っく、背も胸も小さいからって馬鹿にして。········背は駄目でも胸は追いついてやる」
「そ、そこで········判断········してない········にゃ。ね」
ここで俺に振るなよ。お前が悪いんだからな。ユーリの地雷踏み抜きやがって········そこんところデリケートなんだよ。しかも全身見たのがなお悪い。プロポーションはお前が全体的に勝ってるんだから恨めしそうにされるのは当たり前だろ。
「はぁ········助けはしないぞ。お前が悪い」
「ニャニャ!?ひ、ひどいにゃ」
「········胸が大きいからって調子のらないで」
「のってないにゃ!ごめんにゃ!謝るにゃ」
「········ふん」
完全に怒ってしまったユーリに彼女は懇願するかの様に縋りついた。こればっかりはどうしようも出来ん。まぁでもこのままじゃ話も進まないし宥めるか。
「まぁユーリ。反省してるところだし許してやれ」
「················はぁ、わかった。········その代わりに········んっ」
ユーリは一旦彼女を退かすと俺へと両手を広げて何かを催促してきた。俺はユーリのその行動に首をひねると再度溜め息を吐いた。
「········そこに座る。········そして抱っこする」
「········はい?」
「········嫌なの?········じゃあ許さない」
いや、意味が分からないからな!?何で抱っこする必要性があるのさ。友人って········しかも男にそうして貰うってどういう事?
俺は困惑している中、ユーリはなおも手を広げ訴える様に見つめてくるが一向にしようとしない俺に業を煮やしたのか無理矢理座らせ俺の膝の上に乗ってきた。
「········ん」
そして催促するように俺の手を引っ張ってきたので観念してユーリのお腹周りに手をまわし、軽く抱き締めてあげる。すると満足したのかふんすと鼻を鳴らし彼女にドヤ顔を決め込む。一方で彼女はその一部始終を呆然とみてポツリと零す。
「········えーっと、本当に友人かにゃ?付き合ってないのかにゃ」
「まぁ········はい。友人········だよ?」
「········そう友人。········これすると落ち着くの今日知った」
「そ、そうにゃのかー」
いやうん。彼女が遠い目になるのもわかる。やらないもんな普通。だからミナ。顔を真っ赤にして「へぇ~、大人ってそうなの········」とか言わなくていいからな。参考にしないでくれ。
「ん、んん!!と、取り敢えず話を戻そうか。自己紹介の続きをしよう」
「やー、正直この状況で無理がある気はするにゃ········情報が多すぎるにゃ」
「本当に一旦気にしないでくれ。俺だって飲み込めてないんだから」
「あーうん。わかったにゃ。次はミラの番にゃ。ミラはミラ・グルヴィシアっていうにゃ。ミラって呼んで良いにゃ。よろしくにゃ」
「あー、ミラ・グルヴィシア········ミラ・グルヴィシアねぇ。ウン、ヨロシク」
マジかぁ········マジかぁ········いや、特徴も一致してたしそうじゃないかなとは思ってたよ。うん。でもさ、幾ら何でも出逢うの早すぎやしないか?ガルシアから言われてそんな時間経ってねぇぞ。
俺は頭を抱えたい衝動に駆られるが手はユーリに取られているので空を見上げる事しか出来ない。ユーリもユーリで表情が無くなり遠くを見つめている。
「ん?なんにゃなんにゃ。急に空なんか見上げて。ユーリもなんでそんな顔してるにゃ」
「あー、いや。その········なんだ。ミラってこれから暇か?」
「これからかにゃ?今日泊まる宿探して飯食って寝るだけだから暇にゃ」
そっかー、それは好都合だな。まぁ暇じゃなくても連れてくしかないんだけどさ。
「んじゃ俺とユーリと一緒に冒険者ギルドに来てくれないか?」
「別に構わないにゃいけど········なんでにゃ?」
何となくミラも察してきているのか警戒しつつも探るように聞いてきた。俺としては隠す必要も無いので理由を伝える事にした。
「ガルシア········ギルドマスターからミラを探す様に言われてるんだよ。ミラって姫さんなんだろ?獣人族の国で勝手に居なくなったって大騒ぎなんだとよ」
「········だから一緒にくる」
「嫌ニャ!!ダンジョンに行くまで絶対に帰らないニャ!折角苦労してここまで来たのに手ぶらで帰りたくないニャ!」
ミラは大きな声を出し警戒色を強め駄々を捏ねる様に言った。そうは言われても俺は頼まれただけだし困るだけなんだよな。それに何も言わずに勝手に出ていったミラが悪い。
「そこはガルシアに言って説得してくれ」
「ニャ~········こうにゃったらーーー」
「········逃さない」
ミラが逃げようと踵を返したと同時に膝の上にいたユーリがスルッと俺の腕から抜け出し一瞬にしてミラの行く手を阻んだ。
「にゃう!?」
ミラは一瞬にして目の前に表れたユーリに驚きの声を上げた。ユーリは冷静にかつ素早くミラの一瞬の隙をつき、何処からともなく縄を取り出し脚と腕に巻き付け拘束した。
························うん。レイナも大概強いんだけどユーリも負けず劣らずだと思う。たぶん今のは斥候としての技だとは思うけどレイナとは違うベクトルで強い。流石は金級、思わず拍手をしてしまう程の手際だった。ユーリも俺の拍手に気を良くしたのかドヤ顔をしている。
「うぅ~、解くにゃ。ミラは帰りたくないのにゃーーってニャっ!?」
藻掻こうとしたが縛られた両足のせいでバランスを崩し転けーーーそうになったがユーリが支えて転ばずに済んだが········その際に胸掴んだらしい。一瞬にして恨めしそうに睨んでいる。
「········ッチ」
「ニャ~~!?抓るニャ!?痛いニャ!」
そのまま力いっぱい手に力を入れミラの胸を鷲掴みにする。ミラは本当に痛いのだろう。若干涙目になっている。
「どうどうどうどう。落ち着けユーリ」
流石にミラが可哀想だと思い俺はユーリを引き離した。引き離したユーリはまだ恨めしそうにミラを········正確にはミラの胸を睨んでいる。そんなことしてると大きくならんぞ。
「にゃう········ヒリヒリするにゃ········」
「ユーリ。転びそうなのを助けたのは良いが今のは駄目だぞ」
「········大きいのが悪い」
「ユーリも成長するからそれまで耐えてくれ」
「········わかった。········もうしない」
ユーリは不満気ではあるが一応は納得してもらえた。ただ期待を込めた眼差しと共にボソッと「········これからも積極的に手伝って」と言われ頷く事しか出来なかった。
善行 9/108




