102.新たな依頼と頼み事
翌朝、俺達は昨日話した通りロサルガの街へ行くことにした。森を抜け街道を沿って暫く歩き続けると街に到辿り着いた。相変わらず1度は門番の人に止められる。俺が冒険者証を出すと訝しげな顔で視られるが通してもらえた。まぁ初めて視る顔の人だったしな。ただ、顔見知りの人も近くにいたのだが········せめて一言あってもいいと思う。面白そうに笑いを堪えながら観てないでくれよ。
街に入り冒険者ギルドへ向かう途中に見覚えのある人とすれ違ったのだが········視界の端、それも一瞬の出来事だったので誰だったか分からない。ただ、凄く懐かしく愛おしい気持ちが溢れてくる。その正体を確認しようと振り返って探してみるが昼が近いのもあり人も多く見失ってしまった。
「ん?どうしたんだ」
俺の様子に気づいたレイナの声にハッと意識を戻し、先程までの溢れてくる感情を振り払う様に首を横に振った。
「········いや、何でもない」
「ん?ま、行こうぜ」
レイナは俺の様子に疑問には思いつつも追求はせず流してくれた。ありがたい。何となくそう思ってしまう。もし追求されたらこの色々な感情が溢れてその人物を探しに走り出してしまうかもしれない。見つかるかどうかもわからず人違いかもしれないのに········。まだ燻る気持ちに蓋を閉め、気の所為であったと自分に言い聞かせながら歩みを進めていく。途中でリンも俺の様子に気づいたのかそっと手を握ってきてくれた。何も言ってこないリンとレイナに感謝である。
冒険者ギルドに入ると掲示板の前に冒険者が群がりあーだこーだと言い合ったり、食事処では昼間っから酒を飲んだり昼食を摂っている人で賑わっている。そんな冒険者達を横目に俺達は受付へ向かいガルシアに話がある旨を伝えた。暫く待っている間にリンは自分のパーティーの所に一旦帰るとの事で別れた後にガルシアのいる執務室へと案内され中へ入ると········ガルシアは盛大な溜め息と共に頭を抑えていた。
「んん!ギルドマスター。ローナさん達をお連れしました」
案内してくれた受付の女性が咳払いをするとガルシアは俺達に気付き申し訳ない表情で言った。
「ああ、すまない。格好悪いもん見せちまったな。確かダンジョンについての報告だったよな。そっちに掛けてくれ」
そう促され俺達は椅子に掛けるとガルシアも対面に座りダンジョンの事を話そうとは思うが········その前に、だ。
「さっきはどうしたんだ。溜め息なんかついて」
「あー········まぁ、ちとな········」
ガルシアは歯切れが悪くそう応えるが、しばらく考えると「ま、いっか」とポツリと零すと話始めた。
「最近、魔族と人族が結託してあちこちで暴れているらしい。こっちにも注意喚起がきてんだ。つってもどちらも野盗崩れの連中だがな。········ただ、それに関連してるか分からねぇが獣人族の姫さんが居なくなったらしい」
「はぁ········」
「俺も何度か面識あるんだが········活発な姫さんで思い立ったら直ぐ行動すんだよ。要するにじゃじゃ馬だな。腕っ節も強いから攫われたって線は薄いんだが········獣人族ではやれまた始まっただの姫様をお助けせねばだの混乱しているらしい」
「それはまた困った姫さんだな········でも何でそれが溜め息の原因になるんだ?」
「獣人族の王から各ギルドに娘を探して捕獲してくれって依頼がきてるんだ。おおよそ目星はついているって話もきてんだが········って、あっ、そっか。そうだったな。この件は大した問題じゃないな」
話している最中に一人で納得しだしたガルシアに俺達は意味が分からなず首を傾げるしかなかった。そんな俺達の様子にガルシアは笑いながら言った。
「わりぃわりぃ。一人で納得しちまって。ちと頼まれてくれないか?報酬は出すからよ」
「········まさかそのお姫様探しに関してか?」
ローナはガルシアが言いたい事を察したのかそう言うとガルシアは頷いた。
「おう。たぶんだが近々そのじゃじゃ馬の姫さんは今お前さんらが探索しているダンジョンに行くだろうから出会ったら捕まえてくれ」
「やはりか········一応確認するが護衛とかは連れがいるって情報はあるのか?」
「いや、そういった話はねぇな。護衛は付いてねぇし連れもいないんじゃないか?」
「なら非常にマズいな」
「マズいわね」
「実力は如何ほどなのか分かりませんがとてもマズいですね」
「········早急に見つけた方が良いかも」
口々に出る神妙な言葉にガルシアの笑顔は凍りついていた。俺もローナ達と同様に非常にマズいと思っている。ただ、レイナだけはピンときてないようだ。········なんで一番理解してないんだよ。俺と一緒に探索して危険なのは分かっているだろう?リンの時は分かってるのになんでだよ。
「········まさかとは思うが今回の報告は悪い内容なのか?」
そうであって欲しくないといった様子で絞り出すようにガルシアが言うとローナが応えた。
「ああ、悪い報告だ。『竜の牙』からどの程度聞いているんだ?」
「あいつ等からは5階層、ルゴウとほぼ同じ内容の話だってとこだな」
「ではそれ以降の階層の話をしよう」
ローナは5階層以降の出現する魔物や構成などを説明していく。時折俺も手書きの雑な地図を見せながら補足していく。報告をしていく内にガルシアは段々と顔が引き攣っていき仕舞いには頭を抱えて項垂れてしまった。
「ーーーという訳なんだが········やはり頭が痛くなるものだな」
「ああ、本当にふざけたダンジョンだ。マジで頭が痛い。じゃじゃ馬姫じゃどうにもならんし最悪死ぬぞ。はぁ········因みになんだが、お前らで今後もダンジョンを進めて行くことは出来るか?」
「今の所は問題無い。ただ安全策として解毒薬をある程度揃えなければいけないが········」
「万全を期すには必要なもんだしな。········つっても解毒薬はここじゃ品薄だからな。そっちは手配しておこう」
「ありがたい」
「代わりと言ってはなんだが姫さんの件は頼んだぞ。たぶんこの街には寄ると思うがダンジョンで遭う可能性が高い。俺の目星としては何処かでそのダンジョンの話を聞いて実際に行きたくなったんだろうと考えてんだ。まぁ、獣人族側も同じ見解らしいしな。んで、そうなるとお前たちが········というよりはルゴウが遭う確率が高そうなんだよ」
「了解だ。依頼や探索をしつつお姫様を探してみるとしよう」
「ん?いや、ちょい待てガルシア。なんで俺が高そうなんだよ」
確かにダンジョンで鍛錬しつつ金稼ぎをしようかとは想っていたがローナ達と確率的に変わらないだろう。それにいつその姫が来るか分からないってのに。するとガルシアは何を聞いてくるんだと言わんばかりに呆れながら言った。
「決まってんだろ?お前さんはゴブリンで目立つから間違って攻撃される可能性が高いし、物資が揃うまでは上の階層を探索し続けるだろう?なら他の奴よりも出遭う確率は高いはずだ」
「まぁ確かにそう言われるとそうだな」
「でだ。姫さんの特徴についてだが、髪は金色、背は········ユーリより少し高めぐらい。虎人族特有耳と尻尾がある。後は········名前か。ミラ・グルヴィシアってんだ。まぁここらじゃ獣人········特に虎人族はあまり見ないから遭えばすぐわかるぞ」
「········わかった。出会ったら連れてくる」
「任せたぞ」
ガルシアから新たな頼み事を託され、報告も終わったので今日はここで解散することになった。そういやレイナは珍しく静かだなと思う人もいるだろうが········途中から、ローナがダンジョンについて話している時には寝てました。よくガルシア達はスルー出来ていたな。俺は起こそうか迷ったけど皆触れてなかったから気にしないようにしてたんだけどさ。
·····················
·································
·············································
「あの~、ユーリさん?」
「········ん、早くはじめて」
「········本当にいいの?」
「········くどい。········いいからやる」
「えー········っと、········はい」
ユーリは俺の膝の上に座りながら胸元を開けさせ、若干の恥ずかしさからか頬を赤く染めながらも期待の眼差しを向けてくる。かくいう俺は承諾は貰ったものの本当にしても良いのか困惑している。なんでこうなったんだっけ?ちょっと振り返ってみるか················
〜1時間前〜
ギルドを出てからさてどうするかと考えていると不意に袖を引かれた。何だと思い引かれた腕を見るとユーリが俺を見上げてきている。
「どうしたんだ?」
「········早速だけど付き合ってもらっていい?」
「えーっと········何に?」
「········ナイショ。········レイナ、少しの間ルゴウ借りる」
「ああ、構わないが········ん?ってあの話の事か」
「········そう」
「ま、約束だったしな。なら行って来い。あ、くれぐれも変な事すんじゃねぇぞ」
「········わかってる」
ユーリが短く応えるとレイナは肩を竦め手をひらひらと払い出しながら言った。あの話········?約束········?んー、あっ!?あの俺の貸し出しの件か。俺はようやく思い出し納得するとユーリは催促する様にまたも袖軽く引っぱってきた。
「はいはい、付き合うよ」
「········うん」
「あ、ルゴウちょっと待ってくれ」
ユーリについて行こうとする前にレイナが何かを思い出したのか俺を呼び止めた。レイナの方を見ると期待する眼差しと笑顔で手を出してきている。
「酒代少しカンパしてくれ」
「························」
いや、レイナさん。まだ持ってるよね。あんたどんだけ飲む気でいるんだよ。ってか俺ももう金が少ないからダンジョンで手に入った物を換金しないと無いんだけどさ。
俺は訝しげな表情をしつつも持ってきている魔法袋から手に入れた防具を渡し言った。
「忘れてると思うが手持ちが無いんだ。これを売って足しにしてくれ」
「そういやそうだったな。でもあんがとな」
レイナは悪びれる様子もなく俺から受け取るとレヴィアを連れて歩いて行った。やれやれと思い俺達も行こうかとユーリの顔を見ると哀れみの目で見つめてきていた。
「········大変だね」
「まあこれくらいは問題無い。可愛い恋人の為だ。これから甲斐性を上げてかなくちゃな」
「········そっか、頑張って。········ルゴウも売りに行く?」
「だな。手持ちが無ければ困るしな。すまないがダリルの所に寄らせてもらうよ」
「········うん。········それが終わったら付き合って」
「あいよ」
ユーリの有り難い申し出に俺は感謝しながらダリル商会へと向かっていった。手持ちは幾らか残しておこう。これからもロサルガに来る機会が増えそうだし余力はあるに越したことはない。
ダリル商会で売る物を売ってある程度資金を得た俺とユーリはユーリが普段使っている宿へと来ていた。あれ?頼み事は?と首を傾げながらもユーリについて行き部屋の中に案内された。俺は何となく荷物を下ろしに来たのかなと考えているとユーリはやはり荷物を下ろした後、ベッドに座った。そしておもむろにポンポンとベッドを叩き隣に座るよう促してくる。
「?」
「········早く座る」
「はい?」
ユーリの意図が分からん。取り敢えず座るか········。俺も持っている荷物や武器を下ろしユーリの隣に腰を下ろす。
「················」
「················」
いやなにこの状況!?何でユーリは黙ってるんだよ。すっげー気まずいんだけど。まさか変な要求されないよね!?男と女が部屋で2人っきりで居るのはあんまり宜しく無いんじゃないかな。いやでも流石に普段の態度からしてユーリが俺に気がありそうな感じもないし、風呂の件だって開き直ってただけだしな。
俺はあくまで友人として接してきているんだ変な憶測はしないでおこうと肝に命じていると黙っていたユーリが口を開いた。
「········ルゴウ、お願いしたい事がある」
「お、おう。なんだ?」
頼み事じゃなくてお願い事?そう疑問に思いながらもユーリに顔を向けると何やらもじもじしだしている。そして意を決したのか俺に顔を勢いよく向け目を見つめなが言った。
「········おっぱい、大きくしたい。········手伝って」
「························································はい?」
いや本当に何を言ってるんだ??予想の斜め上過ぎて意味が分からない。俺がユーリの言葉に困惑しているとずいと顔を更に近づけ言い出した。
「········レヴィアやマリアから聞いた。········異性から揉まれるとおっぱいが育つって。········だから手伝って」
「何で俺なのさ!?別に俺じゃなくて好きな人が出来てからでいいんじゃないかな!?あと近い」
俺はユーリの肩に手を置き乗り出した身体を離した。するとユーリは何を言ってるんだと云わんばかりにヤレヤレと肩を落とした。
「········そんな人いつ出来るか分からない。········それに歳を重ねると育たないとも聞いた。········なら身近な男?雄?ででしてもらうのが手っ取り早い」
「いやいや。それで俺という選択肢はーーー」
「········問題無い。········つべこべ言わずにさっさとする」
そう言うとユーリは立ち上がり俺背を向け膝の上に座り、胸元のボタンを外し始め今に至るって訳だ。
軽く現実逃避がてら振り返ってみたものの········良いのかね本当に。てかさ、これってレイナとの約束破る事になるんじゃない?やっぱり宜しくないな止めさせよう。
「な、なぁユーリーーー」
「········大丈夫。········これはおっぱいを大きくするマッサージ。········他意は無いしそれ以上はしない」
「い、いやでもーーー」
「········焦れったい。········早くしろヘタれ」
俺の態度に痺れを切らしたユーリは俺の手を掴み無理矢理自分の胸へと押し当てた。申し訳程度のふにっと柔らかい感触が手に伝わってくる。········まぁうん。柔らかさを楽しむには物寂し········んん!!じゃなくて········その········なんだ。慎ましい胸だから········うん。ごめん、これ以上は可哀想で言えない。ユーリはユーリで自分の胸に押し当てている俺の手に自分の小ささに若干の涙目になって震えだしている。見てて惨まれない。
「········私だって女の子らしい身体に育って欲しかった。········幼児体型だと魅力的じゃない。········ルゴウも私は魅力的じゃないって思ってるはず」
あー········そのぉ········うん。俺が悪い訳じゃ無いんだけどさ。なんかごめんなさい。こうなったら協力してあげるか。ただこれだけは言わせてもらおうか。
俺は推し当てられているユーリの胸を優しく、決して痛くならないように揉んでいく。
「········!?」
「俺は別に胸の大小で女性を好きになるわけじゃないんだよ。他の奴は知らんが俺にとってその人が大切かどうか一緒に生きていきたいかが重要だと考えているんだ。外見なんぞ二の次だ。それにもしレイナやリンがユーリと同じ体型だろうが愛せる自信はあるぞ」
まぁ、大きい方が揉み応えもあるし幸せなんだが········ユーリみたいに小柄で小さくても抱き締め甲斐があっていい。
「········ん!········そ、そういうものな········ん!!」
「まぁこれは俺の考えだから全員がそうじゃないと思うがな。だから小さいからって落ち込んだりしなくていいぞ」
「········っふ········ん········わ、わかった。········で、でも大きいのは憧れ、る」
「そういうもんかな」
「········レヴィア、みたいに········ん、大きくて肩、が、凝るって言ってみたい」
「いいもんでもなさそうなんだけどな········」
俺はただ淡々と手を動かし出来るだけ何も考えない様にしている。うん、じゃないと精神が保たん!!まだ始まったばっかりなのにユーリってば揉むたびに嬌声を挙げているし、段々と目が蕩け息遣いも粗くなってるから刺激がヤバいって。感じ過ぎやしないかな。
「ゆ、ユーリ?一旦止めるか休憩でもはさむか?」
出来れば俺の精神の為にも中止をして欲しかったのだがユーリはふるふると首を横に振った。
「········い、いい。········つ、続け、る」
「お、おう········」
無意識だろう。俺の腕をきゅっと掴んで離さない様にしてきている。あー、もうこうなったらとことん付き合うしかないじゃん。
俺は理性だけは手放さないようにユーリの気が済むまでこの苦行を必死に堪え続けていった。
善行 9/108
あ、アウトじゃないよね(震え声)




