8.福音の地下室
この小説にはパロディ、オマージュがあるので、参照元を検索エンジンに入力したURLを脚注としてつけておくことにしました。
例)タイトル https://www.ecosia.org/search?q=The+Catcher+in+the+Rye
たぶんURLを踏むと草が生えます。
検索エンジンについて https://www.ecosia.org/search?q=Ecosia+wiki
全13話構成です。
拙い文章ですがよろしくお願いします。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。加えて、このなかで語られた言葉はいかなる真実をもふくみません。
ペインテロルが起こってしばらくの間、一朗は何もする気が起こらずただただどこかの邸宅に上がり込んではそこで夢を見たり、食べ物を直接販売しているショッピングモールや物流センターに入り込んでたらふく万能食を奪ったり、自堕落な生活を送っていた。
その日も今日はどの家に上がり込もうか、それともどこかのホテルに忍び込もうかと考えながらニルを引き連れていた。しかし、何もない日が続いたため、ニルは飽きを感じて、どこか面白いところに行きたいと言った。
そこで一朗がニルを連れてきたのは終鳴門と呼ばれる場所の近くにある朽ち果てた赤と白の電波塔がある場所だった。しかし、そこでもニルは満足しなかった。
「おい!一朗!こんな残骸の何が面白いんだ?」
2人は立ち入り禁止の金網を乗り越えて、塔の破片が散らばる廃墟の中を歩いていた。
「何がか。そうだな……。なぜ僕はここに来ているんだろうな。」
「自分でも分からないもんに俺を巻き込むな!ここは古い煤と埃の匂いしかしないぞ。」
一朗は真っ二つに折れたタワーの巨大な脚の側にしゃがみこんだ。そして塔の土台や破片を触っているうちに、一朗の頭の中にふと記憶が蘇ってきた。
「そういえば、昔父さんと来たことがあったな。」
「こんな殺風景な場所にか?」
「ああ。皆が忘れてしまった戦争の跡を見るって言って方々を引っ張り回されたよ。父さんはここに来るや否や夢中で話していた。この塔は古代、巨神兵のプロトンビームでへし折られたんだって。マドロスパイプをくゆらせながら。」
「ふーん。本当に歴史が好きだったんだな。」
一朗は地についた塔の先端を見ながら呟いた。
「ここで起きた戦争や、政治、文化、歴史の真実を知りたい、そう言ってデータベースを毎日掘り返していたよ。」
「そうか。」
ニルがそう相づちを打ったのを見て一朗は立ち上がって言った。
「ああ。そろそろここを出るか。」
一朗とニルは金網の外に出て、あてもなく歩き始めた。2人は龍塚と呼ばれる地胎尊像のある小道の横を通り、人工樹林が鬱蒼と茂る道を進み、治安維持管理者の派出所の前をそーっと歩いた。緩い坂道を登り、急カーブする道を行くと、小さなギャラリーのある角を曲がって林を抜けた。すると向かいの道路の左手に今にも壊れそうなヒビだらけの建物が佇んでいるのが見えた。すぐにニルが大きな声を上げた。
「おい!あれは映画館じゃないか?あのマークは見たことがあるぞ!」
ニルは駆け出していった。一朗が後を追うとその建物の隣に丸く青い球体の円周を金色の文字が囲うオブジェがあった。
「普遍的スタジオだ!こんなところに古代式のシアターがあるなんて……!」
ボロボロになったその建物に驚く一朗をよそに、ニルは今日の上映スケジュールを見た。
「もうすぐ始まるぞ!観よう、一朗!早く中に入るぞ!」
「わかったよ。」
ニルに急かされて、一朗は建物に入り脳波認証ゲートをすり抜けた。アンドロイドが店番をする売り場から、ポップコーン風味の万能食とコーラ味のジュースを盗み出し、シアターまで歩いた。
「で、どんな映画を見るんだ?」
「さあ、知らない。なんて言うタイトルだ?」
「お前、それぐらい見てから入るだろ、普通……。」
「良いじゃないか。どんな映画だって。」
シアターの入り口の隣にポスターが貼ってあり、そこにタイトルが書かれていた。
「”The Future to Back”だとよ!」
2人はシアターに入り誰もいないシートのど真ん中へ座った。
2時間程映画を見て外に出てみると、夕焼けが辺り一面を赤く染めていた。子ども連れの親子や、何やら討論をしながら歩く4、5人の集団が側を歩いていた。それを横目に一朗が伸びをした時だった。映画館の隣の交差点にホバリングをした白い自動車が猛スピードで突っ込んできた。
そして、そのまま歩道に向かって信号を待っていた子どもに衝突しそうになった。一朗が声を上げ、駆け出そうとした時、討論をしていた男のうちの1人の目が赤く光ったかと思うと、瞬時に自動車に反応し、子どもを庇った。バンパーがひしゃげる大きな音を立てて自動車は男性を轢いて映画館にぶつかった。
一瞬沈黙が流れた後、集団は男の様子を見に行った。男は何かを喋ろうとして事切れた。それを見て集団は涙を流し、口々に叫び始めた。
「彼は救われた!」
「チャネリングだ!」
「慈悲深いダヴ様が降霊したのだ!」
それを見たニルが訝しげな顔で言った。
「何なんだ?あいつらは?仲間が死んだってのに。」
すると、映画館に衝突した自動車のガルウイングドアが開いて、オレンジ色のダウンベストを着た青年が声を上げながら車から出てきた。
「ドク!まずいよ!人間を轢き殺してしまった!また戻らなきゃ!」
反対側から白髪で白衣を着た老人が飛び出してきた。
「慌てるな!マーティン!未来はまだ決定していない!」
老人は道端にあったごみ箱を見つけるとその中を漁って黄色い万能色の食べかすと飲み物の残った缶を取り出した。
「ただでさえ、行ったり戻ったりで訳が分からなくなっているのに!」
青年は嘆くように白衣の老人に叫ぶ。
「最初から言っているだろう!歴史の改変には危険が伴うと!」
老人は車体の後部にある筒を開けてその中に食べかすと缶の液体を入れた。
「この未来はディストピア小説が歴史の教科書になっちゃっている!」
青年は白衣の老人の襟元を掴んで、輝く茶色い目で言った。すぐに老人はその手を払った。
「マーティン、単に教科書が変わったんじゃない。恐らくこの世界は私たちが歴史を変えたせいで、ディストピア小説が実現してしまっている。私たちの過去での歴史改変の選択が未来を変えてしまったのだ。」
「ならどこでどう選択すれば良かったんだ!僕らが歴史に修正を重ねたせいで、こんなことに……。」
白衣の老人と青年は口論を続ける。
「絶望するのはまだ早いぞ、タイムパラドクスで我々が消えていない限り希望はある。我々は今確かに生きている。過去がどうであれ今ここに生きる限り、いつだって未来を変える事は可能だ。」
そう言うと老人は残った空き缶も筒の中に入れた。
「わかったよ、ドク!」
「いくぞ!マーティン!」
青年と老人は再び車に乗り込んで去っていった。
残された集団は口々に救われた、降霊したとか彼らを赦さねばならないなどと涙を流しながら叫んでいた。すぐに目が赤く光る治安維持管理者が駆けつけた。
それを見た一朗とニルはその場を離れ始めた。
「一体何なんだったんだ?」
「あの爺さんと青年については知らないが……。轢かれた男たちはわかる。あれは宗教団体“科学的幸福”の信徒だ。」
「科学的幸福?何だそれは?」
「原子歴以前からあるこの都市で最も歴史ある宗教団体で、地胎尊という神体を祀っている。この都市の約1/4の人々が神とのチャネリングを特徴とするその教義を信じていると言われているんだ。」
「ふーん。何だか不気味な奴らだったな。」
「僕も奴らは気味が悪い……。だが、信じるものが何かはっきりしているのはそれはそれで良いところもある。」
「どういうことだ?」
「無宗教だと自分で思っている人々には自分が何を信じているか無自覚なまま生きている人も多いからだ。それに比べれば自分が何を信じているのかはっきりしている人々の方が、自らを知っている。」
「それもそうかも知らないが……しかし、一朗、今の轢かれた男は契約者が身体を貸し出す時に似ていなかったか?」
一朗は少し考えて口を開いた。
「……確かにな。言われてみれば。目が赤く光っていた…。まさかあれはリモートで乗っ取られたのだろうか……?」
その言葉を聞いてニルは輝く目で一朗を見言った。
「なあ!その教団の本部に潜入してみないか?」
一朗は苦笑いを浮かべた。
「お前は楽しそうだな。」
「ああ。面白そうじゃないか。潜入して教団の闇を暴くんだ!」
「良いだろう。行ってみよう。教団の本部、最大の精舎はJY19駅、野宿と呼ばれる町の近くにある。」
2人はメトロに乗り教団の本部に向かった。JY19駅に着くと日が落ちかけており、精舎へ向かう信者で人混みができていた。
「何だってこんなにも人が多いんだ?」
「信者は説法を聞いたり、瞑想したりしに週に1日はどこかの精舎を訪れるからな。」
「酔狂な奴らだな。」
人の波に揉まれながら一朗とニルは黄緑色の背の低い植物が生える教団の敷地を歩いた。教団の敷地の中央にそびえる精舎と塔に向かって、松明が焚かれた道の中を進んでいた時だった。一朗は前方に星のマークのついた学生帽を被り、古ぼけたマントを着た男を見つけた。
「あの男は……!今度こそ捕まえる!」
一朗が駆け出すと帽子を被った男も走り出し人混みの中をすり抜けていく。
「おい!一朗!またか!」
ニルが一朗を追う。
先頭近くまで来ると一朗は学生帽の男が巨大なペディメントを支える大きな柱が並ぶ精舎の中へ入っていくのを見た。一朗はそれを追って精舎の中へと入っていった。
精舎に入った一朗を出迎えたのはけばけばしい装飾と誰もいないこぎれいな受付のある広いホールだった。ホールの中央の壁には空へ向かう2羽の鳩が描かれていて、その前には地下へと降りていくらせん階段があったが、そこには男の影はなかった。
「いない……!」
ニルが後を追ってきた。
「一朗、走り出すときは何か言ってくれよ。何があった?」
一朗はニルを見るとバツが悪そうに答えた。
「ああ……。悪かった。友人に似た男が…。」
「見間違いじゃないのか…?」
2人が息を切らしてホールに佇んでいると、白地に金色の刺繍が施された派手な祭服を着た男が信者を引き連れて精舎の中に入ってきた。
「本日の法話はこちらで行います。」
そう言って男はエントランスの隣にある部屋に誘導して行った。
「まあいい。あれについて行くか。」
ニルはそう言って集団の横を歩き始め、一朗はその後をついて行った。導かれた信者たちは大きな講堂のような部屋に入っていった。一朗とニルは真ん中あたりの壁にもたれかかって信者の様子を見ていた。
その後、法話が始まり、祭司の男は長々と以下のようなことを語った。世界への絶望に囚われるのは悪ではないこと、その中での救いとは何か、また、見えるものだけを信じてはいけないということ、人間の知性では完全な真実を得られないこと、美しさとは何かということ、しかし、感じられるものだけが世界ではないということ、そして愛のために人は生きなければならないということ。そのようなことについてひとしきり述べた後、1人の女性の信者を壇上に迎えた。
そして、祭服を着た男が言った。
「この方は今日ここで自らの罪を告白し、懺悔を行うためにいらっしゃいました。皆さま、お聞きください。」
「私は……」
女性信者は震える声で話し始めた。
「私は人を殺しました。」
講堂がざわめいた。
「私はとある病院で医師をしていました。ある患者の癌治療を担当していたのです。私は患者に対してリヴァイアサンの指示に従ってハイリスク薬を投薬する治療を行っていました。」
「その方は、女性の義体を持った男性の方で笑顔の眩しい方でした。リモートで往診するときはいつも原子歴以前の歴史の話、Banned Skyの作品の背景の話や、赤と白の塔が巨神兵に折られた話などをしてくれました。そんな話を息子さんにして、色んなところを連れ回して、煙たがられたとも笑っていました。」
女性信者が遠い目で語るのを信者達は見守っている。
「その日、その方は容態が急激に悪化して、病院に運ばれてきました。その方の癌は様々な臓器に転移していましたが、この都市の医療用のアンドロイドと臓器再生技術を駆使すれば、困難ではありますが命を救うことは可能だ、そう思った私は除去手術を提案しました。」
祭服を着た男は慈しみを込めた眼差しを送る。
「しかし、リヴァイアサンの可視化の結果は厳しいものでした。リヴァイアサンによれば、除去手術の結果男性が助かる確率は4.7%、さらにたとえ助かったとしても、術後、人間らしい生活を送れる確率は3.2%程度であり、もしそれが失敗した場合、多大な苦痛が彼を待ち受けているだろうというものでした。」
「彼を救うことが出来る確率はごくわずか……。その患者さんの息子に連絡を取ろうとしましたが、行方不明になっているとのことでした。彼の命は私の手に委ねられました。私は限られた時間で迷いましたが、結局、私は彼を救う決断をすることができず、リヴァイアサンの推奨する手に従って、手術を行いませんでした。」
女性信者の目から涙が溢れ落ちた。
「その患者さんは最期に意識を取り戻してこう言いました。“息子に、信念を貫き通すお前は私の誇りだ、と伝えてください”そう言ってその方は息を引き取りました。……伝わることのないその言葉は今もなお私の心の中で宛先人を探しています。私は思うのです、もし、あの時、決断ができていれば、私が私を信じていればあの方は……。」
そう言って泣き崩れた女性信者の背中を祭服を着た男がそっと撫で、男は口を開いた。
「そのような極限の状況で決断が出来ないのは、あなただけでは」
「一朗!こいつに夢を見せろ!」
気づかないうちに涙を流していた一朗はニルの叫び声に目が覚めた。見ると、壇上でニルが祭服を着た男の手に噛み付いていて、側にはドリームキャッチャーが転がっている。男は叫ぶ。
「私の腕が!一体なんだ!?何かいるのか?」
一朗が辺りを見回すと、講堂にいる信者達の目には赤い光の残滓が残っていた。辺りが困惑する中、祭服を着た男が転がっているドリームキャッチャーを掴んだ。
「夢を見せられていたのか!?」
一朗は戸惑いながら銀色の装置を取り出し、起動すると講堂に赤い閃光が走った。
「モンスター!キャッチだぜ!」
祭服を着た男はそう叫んでどこかに飛び出していった。混乱する信者達が騒ぎはじめるなか、一朗は壇上のニルのもとへ向かった。
「何が起こったんだ!?」
「あの祭服を着た男だ!奴はドリームキャッチャーを使って信者たちを洗脳していたようだ。どんな夢を見せていたかはわからないが……。」
「何だと…。」
「やっぱりロクでもない奴らだぞこの宗教は。」
「ああ……。そうだな。」
「教祖を懲らしめ行くぞ!」
一朗はそのニルの言葉に頷きながらも、隣で泣き崩れて肩を震わせている女に目をやった。ニルはそのことに気づいた。
「一朗……。」
「この女の話は……現実だったのか?」
「そうだ……この女は、恐らくお前の親父の……。」
一朗はそれを聞いて少しの間、目をつぶった。そして、目を開けるとポケットから赤と白の塔の破片を取り出し、涙を流す女の目の前に置いた。
「それを見てこの女は分かるのか?」
「解析すれば塔の破片であることは容易く分かるだろう…。」
一朗は立ち上がって歩き始めた。
「行こう、ニル。」
「ああ、一朗。」
一朗がホールに戻ると、そこでは夢から覚めた信者が騒ぎを起こし始めていた。教団の職員と、まだ講堂に入っていない信者の中にいた契約者が騒動の鎮圧を図っている。一朗は館内の案内図を見た。
「教祖の部屋はこの地下にあるようだ。」
ホールの混乱をよそに一朗とニルは地下室へと続くらせん階段を降りて行った。
地下は暗い一本道になっていてじめじめとした穴蔵のような息苦しさを感じた。一歩一歩、踏み出すごとに足音が通路の響き渡った。そして、その長い通路の果てに古い扉があった。一朗はその扉を開けた。
その部屋に入るとひどく冷たい空気が肌を撫でて、一朗は身震いをしたが、すぐに義体の体温が上がり震えがおさまった。さして広くもない部屋の両脇には2羽の鳩のマークが描かれた背の高いサーバーが並んでおり、回転するファンの音が空間を占めていた。
入り口から部屋の奥まで黒ずんだ赤い絨毯が伸びていて、数段段差が上がったその向こうには黒い人影のようなものが映るベールが揺らめいていた。
「あれが教祖か?」
「恐らくそうだろう。」
ニルは一朗の顔を見上げながら言う。
「どうする?このままドリームキャッチャーで奴に夢を見させるか?」
「いや…。奴にも何か言い分があるかもしれない。少し話を聞いてみよう。」
そう言うと一朗はドリームキャッチャーを解除した。すると、ベールに映る人影から穏やかな声が聞こえてきた。
「驚いた。いつからそこにいた?どうやって忍び込んできたんだ?」
一朗はその声に敵意を隠すことなく言う。
「お前と同じさ。夢を見せてここまできた。」
「同じ……ね。そうか、そのドリームキャッチャー……。君もあの男から譲り受けたのか?」
一朗は予期しない返答に問いを返した。
「あの男?誰のことだ?」
「違うのか?私の言っているのは樫田という青年のことだ。」
「その男はまさか学生帽にボロボロのマントを着た……」
「ああ、そうだ。いつもバンカラの格好をしている。」
「おいおい、一朗、どうしたんだ?」
「その男について知っていることを話せ。奴は何者だ。」
一朗はニルを無視してようやく掴んだ男の手がかりに必死の形相で問うた。ベールに映る教祖の影は微動だにせず静かに言葉を返す。
「私も詳しくは知らない。ただ、彼はどこからか壊れたドリームキャッチャーを調達しては提供してくれる。」
「壊れたドリームキャッチャー?」
「ああ、そうだ。夢を見る機能が壊れて、コモンセンスのセーフティを外すことが出来るドリームキャッチャーを。」
「僕の持っているものと微妙に違う……?任意の夢を見せるものではないのか?」
「いや、彼はそれは作ることはできないと言っていたが…。」
「他に何を知っている?」
「彼が民主主義者であるということ。それだけだ。」
「民主主義者…本当にそれ以上何も知らないのか?」
「あとは何も知らない。」
「おい、お前ら、何の話をしているんだ?」
蚊帳の外のニルは不機嫌な表情で一朗を見た。一朗は我に返って本来の目的を思い出した。
「悪い、ニル、何でもない。何でもないさ。」
「それで、君たちは何をしにきたんだ?」
教祖は慌てる一朗に穏やかに問いかけた。
「俺たちはお前を断罪しにきたのさ。このインチキ宗教をな!」
ニルの言葉を聞いた教祖は深いため息をついた。
「まあ待ちなさい。君たちのような人たちは時折り私の目の前に現れる。しかし、私の言葉を聞いて気を変える人もいる。一度話を聞いてみないか。」
「善人を洗脳しておいて自分は地下室に隠れて引きこもっているお前の言葉を聞いて?」
「……私は人々に人を善を行う勇気を授けているのだ。人を救いたくても救う決断ができない、暗闇を超えて跳ぶことのできない人たち、私はそのような人たちを救っている。このパニック……君は私の子らの信仰を引き剥がしたようだが。」
「お前が洗脳せずとも善行を積む人もいる。僕はお前の支配から解放しただけだ。」
「君の言うことは一理あるが、思慮が浅い。」
「なぜそう言える?」
「なぜか?それは君が《完全なる善》について考えたことがないからだ。」
「《完全なる善》?」
「君は《完全なる善》について考えたことがあるか?全く瑕疵のない、あらゆる側面において真実である善を。」
「いや、そんなことはないが……。」
「ならわからないだろう。《完全なる善》に囚われた哀れな人々の心を。それは人を自暴自棄に走らせ、動けなくする。いわば、それについて考え、それに従おうとせんとすると自ら進んで自らを痛めつけるようになり、果てには自らを地下の中に閉じ込めてしまう……。」
「なぜ閉じこもるんだ……?」
「完全なもの追い求めるからだ。考えなさい。君が完全なる善に従うと強く決したとして、全ての行動を、完全無欠な善に従って行うことができるか?そもそもあるいはそれに従ったと思ったとして、後から一片も悔やむことなくそれが完全なる善に従えているのか疑わずにいられるか……?その疑いの中、選択を重ねることで、さらなる最善の選択肢が後から現れ自らの誤りに気づく。さすれば、次の選択はより深い疑いにとらわれることとなる。その中で次々と選択をすることを強い続けられる中で、選択するという行為そのもの、何かを救うことで何かを殺し、何かを排除してしまうということが完全なる善を遠ざけていくことに気がつく。その尽きることない美しい観念に魅せられながら、完全なる善を選択することができないという絶望に打ちひしがれ自らを痛めつける。絶えず押し寄せる疑いと強いられる過ちの中で次の一歩を踏み出せるのか……、こんな訳で動くより動かないほうがマシになる……。」
「動かずにどうするんだ。」
「重要なのはその次だ。《完全なる善》を追い求める者にとって勿論動かないということは次善の選択肢でしかない。」
「そりゃ、そうだ。むしろ」
「そうだ。寧ろ、疑いと誤りに囚われて動かないことは最低最悪な選択肢だ。だから自身の全てを疑うもの、完全なる善を求める者は疑っているということそのものを疑い始める……。そして、そのうち、疑いに疑いを重ねながら最善を求め彷徨うものはいつしかそれに気づくことになる。たった一つ、たった一つの揺るぎない真実、どれだけ疑っても離れない一つの真実を理解し始める。それは例えどんな理由であれ、この世には救われない人々がいるということだ。そして、少なくとも今その人らを救わなければ《完全なる善》は程遠いということに。」
「……。」
「そして、それを理解した時、不完全な善に打ちひしがれる絶望、自棄はその意味を変える。疑いの地獄が反転する……。それは自らの限界を超えることを可能にする。自らの懐疑を超えて、自らの領分を超えて、例えその身体が灼熱の弾丸で撃ち抜かれても何の苦痛もなく他者を救う手を取り、善を実行することができるようになる。そして、それはきっと少なくとも、《完全なる善》に近づく行為であると微かな希望を持ちながら虐げられた人々に救いをもたらすことができる。そこに救いが生まれる。――その信仰が完成したときには、罪と罰の概念も、報いという概念も消失する。罪や過ち――完全なるものと人との間の隔たりの関係はすべて、取り払われている――これこそが「福音」にほかならない。それは一つの新しい実行、本来的な善の実行の中に投影される。「時刻」、時間、肉体的生命とその危機というようなものは、彼にとっては存在しない。その実行のみが完全なものへ至る道であり、実行こそはまさに――。……「福音」とは何を意味するか。まことのいのち、永遠のいのちが発見されているということ。それは現に存在している、誰のうちにも在る。愛のなかに、距たりのない愛のなかにあるいのちとして。福音は心における一つの経験であり、それはいたるところにある…そしてそれは――。……本当の救いは他者を救う権能が自らにあるということを知ること、そしてそれを行うことにある。その境地では人を救うということと救われるということが一致する……。私が救うのはその善を実行できない人たちだ。そのような人たちの背中を押しているのさ。」
「ああ、そんなことがあれば最高だな。でも、そう言いながら、当のお前はなにもしないでベールに隠れて地下室に引きこもっているじゃないか!」
一朗は声を荒げた。
「……ものにはやり方がある。私は、私に出来得るたった一つのやり方で他者を救っている。」
「お前自身はそこであぐらをかいて、安全装置の外れたドリームキャッチャーで市民を洗脳することでか……?」
「君は理解出来ないだろう。どうやら私に君を救うことは出来ないようだ。」
「お前の言うことなんざ理解したくもない。」
一朗は吐き捨てるようにそう言うと、ドリームキャッチャーを取り出した。
「そうだな。他に私が君にしてあげられる話といえば……。さっきの女性信者がいただろう?それに関して一つ教えてあげられることがある。」
ドリームキャッチャーを掲げる一郎の手が止まった。
「……どんなことだ?」
「君はこの都市の秘密を知りたくはないか?」
教祖を覆うベールが揺れる。
「秘密?」
ニルが思わず聞き返した。
「先の女性は自身の患者が癌で亡くなったと言っていたね。……あれはリヴァイアサンが殺したんだよ。」
「何だと?」
一朗は思わぬ言葉に驚いた。
「おかしいと思わないか?義体化技術と再生医療技術がここまで発達しているこの都市で癌で死人が出るなんて。」
「なぜリヴァイアサンがそんなことを……?」
「それはわからない。ただ、リヴァイアサンはこの都市の住人を癌で殺しているのだろうというのはわかるさ。事実この都市の死亡者の死因の約97%が癌が占めているのは知っているね。」
「それがどうした?それは証拠にはならない。」
ニルは冷静に切り返す。
「そうかもしれない。でも、彼女のような医者が毎日のように私の元に懺悔しに来ていると言ったら君はどう思う?」
「……しかし、それでも」
「そして、私が救った人々、セーフティを外した者たちが多くの人々を救っていると言えば……?」
一朗は動揺を隠せなくなった。
「それは……」
そこで、ニルが口を挟んだ。
「でも、なぜリヴァイアサンは人を殺すんだ?」
「それは恐らく、この都市の人口が増えすぎるから、そしてそれが未来の人々の自由を圧迫するからだろう……。私たちは癌から救った人々の生活を追跡調査したことがある。彼らは常人の寿命の4〜5倍は生きた。誰もがこうなってはただでさえ逼迫している資源の分配が破綻する…。そして、寿命が伸びた人間に関しては誰もが交通事故で亡くなったのを確認している……。あらゆる乗り物がリヴァイアサンに統御されているこの都市の中で。」
「……。」
「現在の人間の寿命はリヴァイアサンが定め、人間の命を刈り取っている。そして、リヴァイアサンは“今目の前に現に苦しんでいる”人々を捨てて見殺しにし、存在するかどうかも分からない未来の人々を明確に選択しているのだ。私はこの状況を良くないと思っている。」
一朗はその言葉に納得しかけている自分がいるのに気がついた。
「そうだな。願わくば……私の願いを聞いてくれるのであれば、リヴァイアサンを破壊してくれないか…?コモンセンスを眩ませて、ここに侵入できる君にならそれができるかもしれない。」
一朗はその願いに沈黙せざるを得なかった。少しの間、並び立つサーバーのファンの音がその場を支配した。そして、一朗は口を開いた。
「……話したいことはそれだけか。」
「そうだな。私から君に何かしてあげられることというのは、それぐらいだ。」
「例えそれが真実であったとしても……お前をのさばらせているわけにはいかない。」
「それは…」
何か言葉を発しようとした教祖よりも早く、真っ赤な光が走った。
「諸君!とどのつまり!」
けたたましい叫び声が部屋の中に響いた。
「なにもしないのが一番いいのだ!」
そして、一朗とニルは部屋の奥まで歩いてベールを引き剥がした。見るとそこには、表面で金の塗料が輝いている地胎尊像があるだけだった。ニルが匂いを嗅ぎながら言った。
「どういうことだ?一体俺たちは誰と喋っていたんだ?」
一朗が地胎尊像を調べると、それはスピーカーであることに気がついた。
「これは……?」
「だから地下の世界万歳――」
正確無比に夢の一節を叫ぶ声が響く中、背後で扉の開く音がした。
「フウ、やれやれ、騒ぎが起こったおかげで、余計な説得の手間が省けたぜ。」
一朗が振り返るとそこには乱雑に祭服を着た男が立っていた。男がその服を脱ぎ捨てると中からボロボロの学生服とマントが現れて、どこからか星のマークの学生帽を取り出して、それをかぶった。一朗は思わず叫んだ。
「お前は…仮面の男!」
叫ぶ一朗を意にも介さず男は部屋の中に入る。
「おやおや、これはいったいどういう状況だ?あのサーバー教祖の野郎はとうとうバグっちまったのか。」
「おい!誰だ?お前は?」
ニルがそう言うと男は不敵な笑みを顔に浮かべて言った。
「喋るbio-A?これは珍妙な!」
「そんなことはどうでもいい。お前は誰だ?」
「俺か?俺はアオイ。樫田葵だ。」
樫田と名乗った男はそのまま2人の側を通り抜けようとしたが、一朗が男の肩に手をかけた。
「おい、この前Wアカデミー附属病院で医師が死んだことについて何か知っているだろう?」
男は振り返って笑いながら言う。
「フフフ、殺人事件だったか。覚えているような覚えていないような。」
「お前…!」
その時、長い廊下から誰かが走ってくる音が聞こえてきた。
「ダヴ様の部屋を探せ!」
それを聞いてニルが叫ぶ。
「誰か来るぞ、一朗!ドリームキャッチャーを使うんだ!」
「クソッ!」
一朗がドリームキャッチャーを取り出すと、祭服を着た男が数人と、目が赤く光る契約者たちが駆け込んできた。
「樫田葵に……bio-A?お前らそこで何をしている!?」
再び地下室に赤い閃光が走る。男たちは一斉に口走り始めた。
「「「「「「「「「ぼくがよりどころにできる本源的原因、その基礎とやらはどこにあるのだ?どこからそれを持ってくればいい?ぼくなどさしずめ思索の訓練を積んでいるから、どんな本源的原因を持ってきても、たちまち別の、さらにいっそう本源的な原因が手繰りだされてきて、これが無限に続くことになるだろう。そもそもあらゆる意識ないし思索の本質はまさしくそういうものなのだ。してみればこれもまた例の自然法則というわけである。では結局のところ、最後の決着はどうなるのだ?なに、それもおなじことだ。たったいま、ぼくが復讐について話したのを、思い出してほしい。(たぶん、諸君にはよくつかめなかっただろうが。) ぼくが言ったのは、人間が復讐をするのは、そこに正義を見出すからだ、ということである。」」」」」」」」
「おい!お前。何だそれは!?面白いものを持っているじゃないか!?」
樫田は周囲で夢の一節が呟かれるよりも大きな声を上げた。
「何って、これはお前が僕に与えたものじゃないのか……?」
一朗は戸惑いながらそう言った。
「何を言っているんだ?お前は…?」
一朗の様子を見ながら樫田は自身の用を思い出したようだった。
「いや、まずはそれよりも、流星のかけらだ。」
ニルが訝しげな声で反復する。
「流星のかけら?」
困惑する一朗とニルをよそに樫田は地胎尊像を蹴り飛ばした。像は内部の空洞に乾いた音を響かせて倒れた。
「フフフ、偶像なんざ無駄、寧ろ、偶像こそ憎むべきものだと言うのに。」
そして、しゃがみ込んだかと思うと床が開いてその中に入り込んでいった。
「隠し扉が……?」
一朗とニルが床に開いた扉を覗くと狭く暗い階段が地下のより深くへと続いていた。
「一朗!何かわからないが、あいつは面白そうだぞ。」
「……面白いかどうかはともかく、奴が何者で、何をしているのかは気にかかる。降りよう。」
一朗とニルが階段を降りて行くと階段を降りた場所に小さな点の光が差し込んでいた。中に入ると、暗闇の中で星空が作られている。部屋はドーム状のプラネタリウムになっているようだった。部屋の中央には黒縁の白い筒が頂点についた三脚が置かれていて、古いボロ切れを着た男が高らかに笑っていた。
「ハハハ、ついに手に入れた!流星のかけらを!」
部屋の中央に歩みよっていくと樫田が一朗とニルに目を向けた。ニルは樫田に尋ねた。
「流星のかけらってのは何なんだ?その筒がそうなのか?」
「フフフ、喋るbio-A。その筒はただのカモフラージュのための入れ物、望遠鏡さ。原子歴以前の貴重な代物ではあるが…。流星のかけらはこれだ。」
男が手に持っていたものを差し出すとそれは無色透明のレンズのような物体であった。一朗はそれを見ながら尋ねた。
「それは何なんだ?」
「これが何かって?これは理性の力のリミッターを解除するものだ。それは破壊にも創造にも向かい得る危ういもの……。そして、こいつはリヴァイアサンを破壊するのに必要なキーでもある。」
ニルが驚いた表情で尋ねた。
「リヴァイアサンを破壊するだって?そんなことができるのか!?」
「ハハハ。そうらしい。別にこれが何だって俺にはどうでもいいがな。俺はこいつが売れさえすればそれで良い。」
すかさず一朗は樫田に尋ねた。
「売れれば良いということだな?」
樫田は張り付けた笑みを一朗に向けた。
「ああ。相応の対価が俺に支払われさえすれば良い。買うのか?お前がこれを?」
「おい!一朗、お前まさか……。」
「ああ……ニル。僕は、リヴァイアサンを破壊する……!」
ニルが一朗を見るとその表情は意を決したようだった。樫田は一朗に尋ねた。
「で……お前はどんな対価を俺に支払うことが出来る?」
一朗は震えを隠しながら自身のドリームキャッチャーを差し出して相手がどんな反応をするか子細に観察しながら言った。
「このドリームキャッチャーの製造法だ。他者に夢を見せることができる。さっきの教祖に聞いた話ではお前は故障してセーフティを外すことができるものしか与えていない。」
「……製造法ね…。フフフ……」
樫田は少しの間、腹から込み上げる笑いを止められないようだった。一朗はその様子を見つめていた。そして、口を開いた。
「……良いだろう。そのモノじゃないというのがいい。その製造方法はお前以外に知っているものがいないだろうからな。」
一朗は安堵と恐怖が合い混じった感情が芽生えるのを感じながらも言った。
「……契約成立だ。」
「ああ、お前が本当に製造法を知っているのか確認させてもらう。」
「わかった。後で一つ作ってみせよう…」
「待て、もう一つ必要なものがあるんじゃないか?」
「何だ?」
一朗を見て樫田は笑みをうかべる。
「お前は王家の墓の内部にどのようにして潜入するんだ?」
それを聞いたニルが口を挟んだ。
「なぜ王家の墓に潜入しなければならないんだ?王様の死体を掘り返すのか?」
その言葉を聞いて樫田は笑い始めた。それをよそに一朗がその疑問に答えた。
「王家の墓には死体が埋まっているわけじゃない。」
「なら何だっていうんだ?」
「王家の墓は膨大なデータベースで、リヴァイアサンのマザーコンピュータがある場所だ。原子歴以降この都市で起きた出来事、この都市で生きた人々が感じ、思ったこと、その全ての記録、コモンセンスから取得された情報がそこに保管されている。お前は地図を持っているのか?」
「ああ。そうだ。フフフ。俺がリヴァイアサンの目の前まで連れて行ってやるよ。そのかわりだがその行く道に俺を同行させろ。それだけでいい。」
おかしくてたまらないといったように樫田は言った。一朗はその様子を見て怪しんだ。
「何を企んでいる……?」
「フフフ、何も。お前の行く末を見るのは面白そうだからな。何が起こるか分からなそうで。」
「一朗、こいつは信用出来ないぞ!」
ニルは唸りながら言った。
「ハハハ、嘘はついていないさ。ただ俺は自分の持つものを、より良いものと交換したい、俺はまだ今ここに無い、誰も見たことのない、“より良い”を求めている、ただそれだけだ。ハハハ…」
その小さな星空の中に大きな笑い声が響き渡った。
脚注:
※1 https://www.ecosia.org/search?q=Onarimon
※2 https://www.ecosia.org/search?q=Tokyo+Tower
※3 https://www.ecosia.org/search?q=Giant+God+Warrior+Appears+in+Tokyo
※4 https://www.ecosia.org/search?q=Hebiduka+Tokyo
※5 https://www.ecosia.org/search?q=Jizo+Bosatsu
※6 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%84%9B%E5%AE%95%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E7%BD%B2+%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%BF%E3%83%AF%E3%83%BC%E5%89%8D%E4%BA%A4%E7%95%AA
※7 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E6%B8%AF%E5%8C%BA%E6%84%9B%E5%AE%95%EF%BC%92%E4%B8%81%E7%9B%AE
※8 https://www.ecosia.org/search?q=Back+to+the+Future
※9 https://www.ecosia.org/search?q=Marty+Mcfly
※10 https://www.ecosia.org/search?q=Emmett+Brown+Back+to+the+Future
※11 https://www.ecosia.org/search?q=DeLorean
※12 https://www.ecosia.org/search?q=Harajuku+Station
※13 https://www.ecosia.org/search?q=Meiji+shrine
※14 https://www.ecosia.org/search?q=%E3%83%9D%E3%82%B1%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%80%81%E3%82%B2%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A0%E3%81%9C%EF%BC%81
※15 https://www.ecosia.org/search?q=The+Antichrist+Nietzsche
※16 https://www.ecosia.org/search?q=Notes+from+Underground
※17 https://www.ecosia.org/search?q=AI
※18 https://www.ecosia.org/search?q=Laughing+Man
※19 https://www.ecosia.org/search?q=Notes+from+Underground
※20 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%8D%83%E4%BB%A3%E7%94%B0%E5%8C%BA%E5%8D%83%E4%BB%A3%E7%94%B01
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。加えて、このなかで語られた言葉はいかなる真実をもふくみません。