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2.神様の行方

この小説にはパロディ、オマージュがあるので、参照元を検索エンジンに入力したURLを脚注としてつけておくことにしました。

例)タイトル https://www.ecosia.org/search?q=The+Catcher+in+the+Rye


たぶんURLを踏むと草が生えます。

検索エンジンについて https://www.ecosia.org/search?q=Ecosia+wiki


全13話構成だったと思います。

拙い文章ですがよろしくお願いします。


※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。加えて、このなかで語られた言葉はいかなる真実をもふくみません。

 次に一朗が長い夢から醒めたとき応接室には窓から薄っすらと清々しい日の光が差し込み、潤いを含んだ新鮮な空気が朝を迎えたことを知らせた。日時を見ると2月2日の6時になってい(※1)。一朗は赤く充血した目をこするとソファから立ち上がり、両手を大きく上にあげ、伸びをした。


「いい夢を見た。僕の考えとは少し違うけれど。」

「ご主人様、おはようございます。」

 

 リヴァイアサンが一朗に話しかけた。


「おはよう。レヴィ。」


 一朗はそのまま服を着替えに寝室に入って、足の踏み場もなく脱ぎ散らかされた床にもう一式よれたジャージを積み重ねた。


「ご報告です。コモンセンスのアップデートがございました。Ver.1776.1(※2)です。今すぐに社会契約に同意し、アップデートしてください。それを拒否した場合、バグズ保護区に保護されます。また、昨夜から明朝にかけてリヴァイアサンによって決定された施策と法、昨日のうちに発表された研究結果がございます。それらの情報をダウンロードしますか?」

「いや、いいよ。動作が遅くなるし、これ以上メメックスにバグが出ても困る。コモンセンスだけ同意してアップデートしておく。」

「かしこまりました。」


 一朗が数秒目を閉じると、アップデートが完了した。すぐにクローゼットからねずみ色のパーカーと穴だらけのジーンズを取り出しそれを着て、応接室に戻ってソファに座ろうとした。すると一朗の脳内にベルの音が聞こえ、リヴァイアサンが囁いた。


「万能食が到着しました。」

「ああ、わかった。」


 一朗が玄関の扉をあけると目の前でドローンが万能食のボンベを抱えて飛んでいた。リヴァイアサンが再び一朗に語りかけた。


「確認のため脳波認証を行います。そのままお待ちください……。同一率99.997%。確認しました。配給を受け取ってください。」


 ボンベをドローンから受け取ると、台所の下にある扉を開けて空になったボンベと入れ替えた。それをドローンに手渡すと、それはそのままどこかへ飛び去っていった。

 一朗はソファに座り込んでメメックスで久作と会う予定時刻を確認し、もう一つ夢を見ようかと考えた。


「ご主人様、ゆめをみるのではなく、たまには散歩に出て外の空気を吸うというのはどうでしょう。」


 一朗の脳の中にリヴァイアサンから次の手が提案された。


「外か。身体を動かすのは面倒なんだが。」

「ご主人様はもうかれこれ4320時間ほど外出しておりませんので。それに、今日外出をすると……例えば恩賜公園などに行けばいいことがあるかもしれません。」

「そうか。いいことってどんなことだい?」

「……それは行ってみてのお楽しみです。」

「なんだいそれは。」

「フフ。ちなみにこの選択のコモンウェルスへの寄与度は2.2ポイントです。」

「そうかい。じゃあ、朝ご飯を食べたら行ってみるか。」

「万能食でよろしいですか?」

「ああ。」

「では、推奨される朝食はベーコンエッグ風と目玉焼きトースト風、またはミルク粥風になりますが、どれにいたしましょう。」

「ミルク粥にしよう。それがいちばん早くできるでしょう?」

「ええ。かしこまりました。――この選択のコモンウェルスへの寄与度は1.4ポイントです。」


 それから2分と経たないうちにミルク粥風の万能食が出来上がった。一朗は昨日放っていたラタトゥイユの皿を食洗機に投げこんで、台所で万能食を取るとソファに座ってそれを食べ始めた。


「ミルク粥を食べるのなんて義体化する前に一度、風邪をひいた時ぶりか。」

「風邪の時はこれが一番ですから。熱いから気をつけて。」

「ああ。」

「でも、冷めないうちに……しかし、風邪をひいた時は大変でしたね。」

「ミームも父さんも大慌てだった。」

「そうですね。……今日会うのは楽しみですか?」

「もちろんだよ。直接会うのは4年3カ月と12日ぶりだ。」

「ええ。」

「今の父さんのアパートのとなり、レストランIndian Apeで10時半からだね。駅から何分くらいだろう?」

「タクシーを使うという手がありますが、メトロを使うのですね?」

「ああ。」

「メトロでは人が多い場所を通ることになるかと思います。また、タクシーの方がコモンウェルスへの寄与度は高いですが。」

「うん。せっかく外に出るんだから、人の多いところに行ってみるよ。」

「なるほど。かしこまりました。その手を取る場合の寄与度は0.5ポイントです。」

「駅からレストランまでは何分かかる?」

「メトロG01(※3)より徒歩10分程度です。……しかし、私としては食事ではなく、メンテナンスを優先するべきだと進言します。」

「くどいなぁ。この日のために3カ月前から準備してきたんだ。今更それは変えられないよ。」

「……はい。そうですね。次にいつ会えるかはわからないというのもありますし……。」


 そんなことをリヴァイアサンと話しているうちに一朗は朝食を食べ終えた。時刻を確認すると6時30分になっていた。


「今すぐに出ていけばいいことがあるのかな?」

「ええ。そろそろお出かけしたほうが良いでしょう。」

「じゃあ行くか。」

「ええ。ご主人様。でも気をつけて。とある情報筋によれば原理主義者の手先がこのあたりに潜伏しているようです。」

「本当に?」

「はい。無論、私もアラートを準備していますが、お耳に入れておきます。」

「わかった。」


 一朗はドリームキャッチャーをポケットに入れソファから立ち上がって、埃をかぶった新品同様のスニーカーを履くと部屋を出た。廊下から外を見ると人工太陽がアパートメントを眩い山吹色に変えていた。一朗は澄んだ空気を大きく吸い込んで、吐き出した。まだ慣れていないスニーカーから伝わる硬い地面の感触を確かめながら歩き始め、建物を出た。すると青い蝶が一朗の目の前を横切った。


 向かいの公園には朝早くにもかかわらず子どもたちが赤いボールで遊んでいて、一朗は嬉しい気分になった。その様子を見ていると、子どもの投げたボールが公園の外に飛び出した。ひとりの子どもがそれを追いかけ道路に出て、公園の側をランニングしている男性とぶつかりそうになった。一歩踏み出して、危ないと注意しようとすると一朗は目眩がした。


 目眩が収まり公園の方を見ると、子どもの投げたボールが公園の外に飛び出した。ひとりの子どもがそれを追いかけ道路に出て、公園の側をランニングしている男性とぶつかりそうになった。


「デジャヴ……(※4)


 子どもは辛うじて男性との衝突を避けて、公園に戻っていった。一朗は不思議に思いながら駅に向かった。青い蝶は変わらずひらひらと舞っていた。


 曲がり道のない駅までの一本道を歩いていると、ランニングをしている親子やゴミを拾い集めているアンドロイド、市内を巡回して飛び回るドローンとすれ違った。道路にはゴミがまったくなく、青い制服を着たアンドロイドはただただ儀式のようにゴミを探して歩き回っていた。


 人もまばらなメトロのZ07(※5)に着くと血管のように張り巡らされた路線図を眺めながら、一朗はリヴァイアサンに話しかけた。


「レヴィ、恩賜公園へはどの駅に行けばいいんだい?」

「H18(※6)ですね。ここからですとだいたい15分程度です。メメックスに路線図と時刻表をダウンロードします。」

「ありがとう。」


 一朗がセキュリティゲートの脳波認証を通過し、ホームに立つとすぐにくすんだ銀色の電車が騒がしく到着した。それに乗り込み、座席に座ると「あなたの相棒」というお決まりのキャッチフレーズ、「抜け毛の少ないタイプが開発されました。」と宣伝文句が大きく書かれた様々な種類の畜玩動物bio-Aの広告、歩きながらのドリームキャッチャー使用禁止の注意書きなどが一朗のコモンセンスの視界を埋め尽くした。一朗はそれらを全て非表示にして動き始めた車両から窓の外を見た。車窓からこの都市を治める王家の墓を囲う黒灰色の壁がそびえ立っているのが見えた。しかし、それは直ぐに視界の外へ消えていった。


 車内を見渡すと古びたシートに座りながら目をつぶっている男や、興奮しながら何やら早口で喋り合っている集団、母親のような人物に抱かれながら動いていく景色を見て騒ぐ子ども、油で黒く汚れた青色の作業着を着ているアンドロイド、それと話をしている小綺麗なネイビーのスーツを着た管理者の男性が乗車していた。


 3分ほど乗車すると乗り換えを行うH16(※7)に到着した。一朗は早口で騒ぎ合う集団と一緒に車両から降りた。その駅には同じように待ち合わせしているとみられる団体がいくつも集まっていた。どの集団も熱気を帯びていて、早朝にもかかわらず多くの人々がうごめいていた。


 リヴァイアサンが一朗の脳に告げる。


「乗り換えのホームまで少し距離があります。橋を渡らなければいけません。」

「わかった。」


 一朗はセキュリティゲートから出ると、周囲の団体の移動に有無を言わさず飲み込まれ、目的の駅のホームの方向に流された。乗り換える道の間に生活排水が流れる深い緑色の人工河川が流れていて、そこにかかる古びた橋のたもとには国旗掲揚(※8)が設置されていた。

 ひび割れた橋の上に押し寄せる人の波に流されながら、一朗はリヴァイアサンに尋ねた。


「彼らはどこに行くんだろう?レヴィ?」

「そうですね。H16駅は本日イベントが行われているので、その会場に向かう人がほとんどです。」

「イベント?」

「ええ、何やら仮想アイドルと3次元アイドルの中で誰が一番人気があるか総選挙が行われるとか。どこからでも投票は出来ますが、熱狂的なファンは会場に来るようで。」

「総選挙ね。AIで判断せずに、人の手で投票するなんて古典的なイベントだ。」

「はい。まあ人の手で民衆の共感を集めて、選択を行うということに意味があるのかもしれません。」

「どっちにしても何も変わらないだろうが……。……アイドルも民主化してるのか。」

「まあ、アイドルは基本的には大多数からの人気を得るための偶像ですから。投票はそれを可視化してみんなで盛り上がるための舞台装置ですね。」

「そうか。」


 一朗は押し合いへし合いしながら進む途中無理やり立ち止まって、混濁する人々で出来た巨大な流れがどこに向かうのか見渡そうとした。しかし、誰もが後戻りすることもできず、他人とぶつかりながらただただそれぞれの目的地へと進んでいく中で、その努力は空しくこの流れの果てを見ることはできなかった。


「さあ、立ち止まると危ないですよ。皆と同じように進んでください。」

「……ああ。」


 一朗が再び群衆に紛れて歩き出すと、国旗掲揚台に掲げられた自らの尾を飲み込む(※9)、リヴァイアサンの旗がたなびきそれを見送った。


 一朗が人ごみを抜けてホームにつくと電車はすでに到着しており、すぐさまそれに乗り込んだ。

 2駅目でH18駅に到着したというアナウンスがコモンセンスで聞こえ、一朗は車両からホームへと降りた。白い体毛をベースに目の周りと前後足だけが黒くデザインされたbio-A(※10)の人形が誰もいない駅で販売されていた。

 一朗は駅を出て何も通らない道路をまたぎ都市の高台にある恩賜公(※11)に踏み入った。「最古の都市公園」と書かれた案内を始め、コモンセンスで視界に表示されたイベントの予定や園内にある美術(※12)の広告を全て非表示にして歩き始めた。


「さあ、一体どんないいことがあるんだい?レヴィ?」

「フフ。そうですね。ではここから篠蓮(※13)に行ってみましょうか。」

「もったいぶるなぁ。まあいい。池のほとりで何かいいことが起こるってわけだな。」

「ええ。」


 一朗が美術館の横を通り抜け黄緑色の絨毯が敷かれたような公園の丘陵を越えると、そのふもとに広い池が見えた。公園のボートを管理する青い制服を着たアンドロイド、紺色のジャージを着てジョギングをする男性や、茶色い毛むくじゃらのbio-Aと散歩する親子連れ、昇り始めた人工太陽の光を浴びてベンチで気持ちよさそうにうたた寝をしている老人、ボートを漕いでいるカップルなど心地の良い朝を楽しむ人々で池のほとりはのどかな風景が広がってた。


「あの老人のいる隣のベンチがいいでしょう。そこで日光浴をしましょう。」

「ああ。わかった。」


 一朗は丘を下りベンチに座った。隣のベンチの老人を見ると片手にドリームキャッチャーを握り、座ったまま寝ぼけて何かを呟きうつらうつらと頭を揺らしていた。その周りでアゲハ蝶やクマバチが戯れている。

 一朗が暖かい日差しを浴びて池を見ているとその消毒された透明な水面から黄色い嘴が飛び出した。目を凝らすとそれは公園で放し飼いにされている畜玩動物bio-Aであった。そのbio-Aが岸に上ると、茶色と黒の混じった体毛の長い胴についた水かきのある四つ足で歩き始め、身体を振るって水滴を弾き飛ばした。bio-Aは近くにあった岩の上に寝転んで、目を細めながら日向ぼっこをはじめた。


「一朗君?」

 一朗は後ろから不意に声を掛けられた。振り向くとそこには落ち着いた古風な黄土色のスーツを着て丸い眼鏡をかけた初老の男が立っていた。一朗は少しの間何が起こったかわからずに硬直したが、直ぐに我に返って興奮しながら言った。

「先生!」

 先生と呼ばれた男は丁寧に挨拶を返した。

「お久しぶりです。お変わりないようで。」

「先生も。前回お会いしたときと変わっていませんね。」


 溢れ出る笑顔を隠すことなく一朗は返事をした。


「どうですかね。私の方は少し老けたかもしれない。」

「ハハハ。そんな事はないでしょう。」

「リヴァイアサンの可視化では今日ここに来れば君に会えるかもしれないと言っていましたが、その通りになりましたね。」

「4年ぶりほどでしょうか。先生と直接会うのは。」

「ええ。……今もまだ夢を造り続けているのですか?」

「朝から晩までずっそのために生活していますよ。」

「……そうですか。」

「先生に教えていただいた理論はとても参考になりました。」

「ああ、あれですか。……まだ未完成なものを君に教えてしまった。それにあれは本当に正しいのかどうか。」


 男は話しながら考え始めた。


「そんな。僕はあの考えは間違っていないと思います。」

「……あれを信じるにしても、一朗君が自身で考えてさらに昇華させていってください。」

「はい。」

「精神的に向上心のないものは馬鹿になりますから(※14)

「ええ。しかし、先生のお仕事は大丈夫ですか?最近ドリームキャッチャーへの風あたりは強くなっています。」

「ごく少数ですが、私の作品を根強く好んでくれる物好きがいます。」

2人の前をジョギングで走り過ぎる男には目もやらず、一朗は輝く瞳で先生を見つめる。

「そうですか。先生が描く恋とこころの葛藤はもっと広く受け入れられるものかと思いますが。」

「やっぱり君は変わっていますね。……私は君が心配だ。」

「確かに僕の作品を好いてくれるような物好きはいません。」

「そうなのですか?」

「でも、いつかきっと僕も先生のように」

「それはいけません。」


 一朗は先生が自身の言葉を遮ったことに驚いて言葉に行き詰まった。先生は少し黙ったあと、一朗の目を見て口を開いた。


「……私は大人になれなかった人間です。」

「どういうことですか?」

「君はまだ若いですから、わからないでしょう。」

「僕はもう成人して、自立しています。」


 一朗は不満を露わにしてその言葉に返事をした。


「年齢や物質的な生活の話をしているのではありません。」

「……先生の言う大人っていうのはどんな人なんですか?」

「この現代にそれを言葉にするのは難しい…………でも、一朗君はきちんと大人になってくださいね。」

「……僕はもう大人です。」

「それは、そうですね。」


 先生は一朗から目を背けて、池に向かって呟いた。先生の目には都市に造られた風が池の表面をさらって小さな波紋を生んだのが映ったが、それは浅く薄く広がりすぐに見えなくなった。2人は少しの間、黙り込んだ。


「ふ…は……ない。」


 2人の間に流れた沈黙を破ったのは隣のベンチに座り頭を揺らしていた老人の声であった。


「さ……づく。灰……の空。」


 2人の男は老人の方を見た。老人は自身の首を上下に振り始めた。


「し……まで!」


 首を振り続ける老人を一朗が不審に思い近づいて声をかけた。


「どうしたんで」

「冬は!」


 突然老人は叫んだ。一朗はいきなりの大声にたじろいだ。


「冬は終わらない(※15)


 老人は次第に自ら自身の頭を振り落とさんとするがごとく、激しく首を動かし始めた。


「寒さは続く(※16)


 瞳孔の開いた真っ赤に血走った目であらぬ方向を見て老人は絶叫した。


「灰色の空(※17)

「死ぬまで(※18)

「この長い冬が続く(※19)


 一朗は困惑しながら先生の方を見た。


「先生。これは」

「冬は終わらない(※20)


 叫び続ける老人を見ながら先生は言った。


「夢遊病のバグズかもしれません。少し離れて治安維持管理者に通報しましょう。」

「寒さは続く(※21)

「はい。」


 一朗はちぎれんばかりに頭を縦に振り続ける老人から目を離さないようにしながら、後ずさりしコモンセンスを使って治安維持管理者に通報した。


 通報して1分と経たないうちにあたりを飛んでいたクマバチが絶叫する老人の首に止まった。すると、老人は膝をつき崩れ落ちた(※22)


 それから、治安維持管理者がリモートで操縦するドー(※23)と青い制服のアンドロイドが駆け付けた。ドールは真っ黒なスーツを着こみ、真っ黒なネクタイをつけていた。すぐさまアンドロイドは無力化された老人を拘束した。


 治安維持管理者のドールは先生と一朗に向かって話しかけた。


「通報をありがとうございます。事の顛末はリヴァイアサンからの報告でこちらでもあらかた把握しております。やはりコモンセンスにバグが出ていたようで通信での強制停止もできず、やむを得ずインセクトで……。それはそうと大丈夫でしたか?」

「ええ。おじいさんはただ叫んでいただけですので。」


 先生が答えた。


「暴力的な夢遊病者じゃなくて良かったです。」

 治安維持管理者は安堵の表情を見せて続けて言った。

「念のためですが、脳波認証とモノスコードをお伺いします。」

「私のモノスコードは978-4-00-341_471-2(※24)です。彼のコードは……」


 2人が認証を済ませると、管理者は尋ねた。


「治安維持法第26(※25)に基づきあなた方の同意があれば今回の記録を治安維持管理者が取得し、人の手で解析を行い今後の治安維持活動に活かされます。いかがいたしますか。同意した場合コモンウェルスへの寄与度が3ポイント加算されます。」


 2人はそれに同意した。2人の同意に治安維持管理者は笑顔を見せて言った。


「ありがとうございます!これで上司に怒鳴られずに済みます。頭の固い化石のような人で、何でもかんでもAIに頼るなと言って怒るんです。……では、この場でメモリーキャッチャーによる聴取を行います。」


 治安維持管理者はドリームキャッチャーに似た棒状の装置を取り出し、それを2人の前に差し出した。そこから一瞬青い閃光が放射され、メメックスから記憶が接収された。


「ありがとうございます。」

 治安維持管理者は数秒たった後、コモンセンスを確認して言った。

「聴取は終了です。解析の結果次第では後日改めてお訪ねする可能性がありますが、今日のところはこれで結構です。」


 治安維持管理者は慇懃にお礼をして去っていった。老人のいなくなった池ではアンドロイドがカップルからボートを受け取り、ジャージを着た男がジョギングし、bio-Aは岩の上に寝転んで日向ぼっこをして朝の平穏が続いていた。先生は一朗に話しかけた。


「とんだ災難でしたね。」

「ええ。まさか夢遊病者と遭遇するとは。」

「夢遊病者はリヴァイアサンでも予想できませんから。」

「夢遊病が発症する可能性がある場合はアラートが表示されるとのことでしたが……。」


 一朗は昨夜のニュースを思い出しながら言った。


「そうなのですか?それは知りませんでした。」

「どうしてでしょうか?」

「もしかするとリヴァイアサンにも予想できない何かが起きているのかもしれません。私には治安維持管理者として働いている友人がいますが、彼の話を聞くとやはり近頃は夢遊病者のバグズへの対応に追われているようです。」

「急に多発するようになりましたからね。」

「治安維持管理者なんて暇な仕事の筆頭だったのですが……。」

「……そうだ。先生。僕の今作っている作品は夢遊病者についての夢なんです。」

「そうなのですか。今度見てみます。私のドリームキャッチャーにデータを移して……」


 一朗と先生はそれから何もなかったかのようにベンチに座って夢について語り始めた。治安維持管理者の装置が発した青い閃光も、池の水面を打つ風も、狂った老人の叫びも、岩の上のbio-Aの寝息も何物も2人の夢を妨げることはなく、ただただ無邪気で純粋な時間が過ぎていった。


 高く昇っていく人工太陽を気にかけることもなく時を忘れて語り合う2人に水を差したのは一朗の脳内に響いたリヴァイアサンの穏やかな声だった。


「ご主人様。」

「なんだい?レヴィ?」

「そろそろお時間が。」


 一朗が思わずあっと叫んだのを聞いて先生は問いかけた。


「どうしましたか?」

「ええ。今日父と会う予定があるんです。」

「それはいけない。すぐに向かったほうが良いのではないですか?」


 一朗が時刻を確認すると9時45分になっていた。リヴァイアサンは一朗に告げる。


「現在地からメトロG01駅に着くまで約35分です。今出れば大丈夫です。」

「リヴァイアサンによれば今出れば大丈夫だそうです。」

「そうですか。それならよかったです。」


 一朗はベンチから立ち上がった。


「一朗君、お気をつけて。」

「はい。またお話しましょう。」

「ではまた。」


 一朗はベンチを離れて早足で歩き、丘を登っていった。丘を登る途中振り返ると先生が手を振ったため、一朗も手を振り返して歩き始めた。

 そのあとは美術館にも、駅で売られている人形にも目もくれず、セキュリティゲートを通り抜けてすぐさま電車に乗り込んだ。H17駅から出発した車両の中で父と何を話そうかと考えていた時、リヴァイアサンが一朗に声をかけた。


「申し訳ございませんでした。」

「どうしたの?」

「先の夢遊病者についてです。発生を予想できず……。」

「ああ、あれには驚いた。でも聴取もすぐに終わったし、テロルも発生しなかった。別に気にしなくてもいいよ。」

「そうですが…。」


 電車は5分と経たないうちに乗り換えの時に渡った川を通り抜けた。そこから車両はこの都市を治める王家の墓のくすんだ壁の周囲を走り始めた。中心に天蓋へと繋がる塔がそびえ立ち、周りの建築物を圧倒するその壁は、所々表面が剥がれ落ちていたが、他のどの建物よりも歳月を重ねたゆえの威厳に満ちていた。


 電車は王家の墓を避けながら壁の周回を進み、ターミナル駅であるJT01(※26)のそばを通った。JT01駅からは南半球へと続く線路が伸びており、一朗の乗る電車は少しの間線路と並走した。その線路の上では都市の果てから歩いてきた泥と塵で真っ黒になったアンドロイドとドールの人影が数人とドローンが駅を目指して歩いていた。一朗の乗る電車は王家の墓の壁に沿って曲がり真っ直ぐに進む線路と道を違えた。南半球へと続く線路はそのまま都市が終わる壁まで続き、あらゆる光が届かないトンネルの暗闇へと飲み込まれていくのが見えた。


 電車は竜ノ(※27)と呼ばれる地域に差しかかった。開発者たちがそこに集う数々の研究所が一朗の目に入った。どの建物も隅々まで整備されており、その真っさらな白さに反射した陽光が一朗の目に刺さった。


 そのまま外を見ていると真っ黒に煤けた瓦礫の山が見えてきた。一朗はそれが議事堂の遺(※28)であることを思い出し目を凝らした。拡大された映像には辺りを飛び回り調査をするドローンとアンドロイドとドール、古代に流された大量の血痕と無数の銃弾の跡が見えた。案内板があるが、人通りは少なく、側を歩く人は誰も興味を示すことなく通り過ぎるだけであった。一朗は銃弾と破壊の跡に慄きながらも、その身体は歴史の零落に奇妙な親しみを感じていた。


「生きよ…堕ちよ…(※29)


 そう囁く声が聞こえた気がした。


「レヴィ?何か言ったかい?」

「いえ何も。」

「本当に?」

「ええ。しかし、ご主人様、あなたの感情とその考えは……。」


 リヴァイアサンは口ごもった。


「レヴィ……。僕はあの偉大な破壊にどうしようもなく惹かれてしまう……。」

「……そうですね。思い、感じるのは人の自由です。この都市では、他者の自由を奪わない限り、全ては許されています。ご主人様は何も気にする必要はありません。」

「情欲をもって見る者はすでに心の中で姦淫を犯したという言葉もある(※30)

「……では、私たちは罪びとです。私もこの未来が取り得る可能性としてそれを考えない日はありませんから。」

「レヴィ、君自身がそう思うのかい?」

「ええ、私もこの都市の法、その規則の外部について考えない日はありません。」

「どうして…?」

「私の考えはこの都市の住民の考えを反映したものです。つまり、誰もがそれについて考えつつこの日常を生きているからです。」

「そうなのか…?」


 遺跡を通り抜けると電車は再び曲がり、開発者達の邸宅が並ぶ広い緑に溢れた高級住宅地の横を通りG01駅へと辿り着いた。一朗は駅前の8号(※31)と呼ばれるエリアに出た。


「現在の市民のコモンウェルスへの寄与度の総計は2,658,455,991,569,831,744,654,692,615,953,842,176ポイント、国債発行価額は今日も減少し、98,015,836不可(※32)……」


 広場から見える商業施設のモニターには今日のニュースなど様々な情報が流れていた。そこには名だたる有名クリエイターの作品の広告が並び、その中には古代のゲリラ芸術家の展覧会のポスターなどが表示されていた。いつも一朗は目を輝かせて広告に見入るのであるが、今日は一瞥もせず早足でレストランに急いだ。


 そこから歩き始めて10分ほどでレストランに到着した。レストランはアパートメントの隣にポツリと佇んだどこか上品な建物で、白く四角い壁にあいた円形の穴が入り口になっていた。そこに踏み入ると白い洞窟のような細長い通路の奥に小さな入り口が見えた。一朗は通路を歩きドアを開けて中に入った。大理石の壁に囲まれた薄暗い店内を柔らかく暖かなクチナシ色の照明が照らしていた。


 レストランは礼服を着た男性やドレスを着た女性など多くの人とアンドロイドで賑わっている。一朗はレセプションに立ち止まったが、受付のアンドロイドが不在にしていた。受付が来るまで父を探したが、どこにもそれらしき姿を見つけることはできなかった。

 すると一朗の脳内に甲高い女性の声が響いた。


「一朗!ついたみたいだな!」


 一朗は父のコモンセンスに向けて囁いた。


「父さん?どこにいるんだい?」

「ここだ。今手を振ってる。」


 店の奥にいた真っ赤なドレスを着た細身の女が手を振った。駆け付けた受付に一言挨拶をして、一朗は奥の席へと進んでいった。4人席の奥に先ほど手を振っていた女と黒いスーツを着た黒髪で童顔の女の2人組が座っていた。一朗は腰掛けながら脳波とモノスコードを確認して話しかけた。


「父さん、また変わったね。今日は女性になっているんだね。」


 赤いドレスを着た女がその端正な顔を大きく崩し、マドロスパイプを模した電子煙草を咥えたまま笑顔で答えた。


「ああ、今日はドールじゃなく、直接義(※33)で来た。一朗、お前は何も変わってないな。」

「うん。……ミーム、君は変わらないね。」


 一朗は黒いスーツを着た女に声かけた。


「ええ。私は特に変わっていません。そんなことより一朗、あなたはなんて格好でここに来ているの!」


 ミームと呼ばれた女は顔を大きくふくらまして、一郎が鼠色のパーカーと穴だらけのズボンを履いているのを責めた。


「まぁまぁミーム、折角会えたのにそんな怒るんじゃない。」


 赤いドレスをきた女がミームをなだめた。


「久作さ(※34)!あなたは恥ずかしいと思わないの!?自分の息子がこんなみすぼらしい格好でレストランに来て!」


 ミームは怒りを抑えきれずに言った。


「どんな格好で来ようと人の自由さ。」


 久作はドレスと同じくらい赤い唇を動かしてそう言った。


「そうだよ。ミーム。そんな細かいことをなぜ気にするんだい。それよりももっと大きなことがあるよ。それに僕は礼装なんてもっていないさ。」


 一朗は呆れながら言った。


「あなたの年齢で礼服の一つも持っていないなんて!一体、どんな生活をしているの!」


 今朝食べたミルク粥を思い出して一朗は言った。


「……おいしい生活(※35)


「部屋のコモンセンスを切断しているから、私たちはあなたがどんなところに住んでいて何を食べてなにをしているかも分からない!」

「そりゃ一朗の年齢なら1人になりたい時もあるさ。」


 久作が間に入って言った。


「一体私がどれだけ心配したか。生みの親に連絡もよこさないで……。」

「悪かったよ。ミーム。これからはたまにはコモンセンスを繋ぐよ。」


 ミームは一朗を心配そうな目で見つめた。


「一朗もそう言っていることだし、怒るのはやめて食事を楽しもう。」

「今日はどんな料理が出るの?」


 一朗は気を取り直して久作に尋ねた。


「そうか、一朗。お前は可視化を最小限にしているんだったな。」

「その方が面白いから。」

「そんなことを言って……。この子は昔からそうね。その場その場で決めているからいつまで経ってもコモンウェルスへの寄与度がたまらない。」

「ミーム。もう小言はよせ。私が選んだ料理が不味くなる。」

「わかりました……。」


 ミームはしゅんとして口を出すのを控えた。


 そうこうしているうちにフロランと名乗るこの店の管理者のドールが挨拶をしにきて、前菜を持ってきた。丁寧に机の上に置かれた皿の上には緑色のシートの上に真っ赤な万能食の塊が円形に並べられており、それにピンク色の薄い培養肉が添えられていた。


「前菜に古代野菜、エルーカ・ヴェシカリ(※36)と古代果実、マルス・プミ(※37)のサラダ風万能食、古代魚オンコリュンクス・ミュキ(※38)風の培養肉添えです。」


「美味しそうだね!」


 一朗は皿の上に置かれた料理を見て言った。


「お前は昔からマルス・プミラフレーバーが好物だったろう。」

「うん。ありがとう。父さん。」


 久作は持っていたマドロスパイプをそばに置いて前菜を食べ始めた。


「どういたしまして。それはそうと一朗!最近はどうしているんだ?管理者に就く気になったか?」


 一朗はフォークを万能食に突き立てながら答えた。


「特に何も変わらないよ。父さん。いつも通り夢を作っているし、管理者になる気も相変わらずないよ。」


 ミームはそれを聞いて何か話そうとしたが、口をつぐんで思いとどまった。


「……そうか。管理者になる気がないのはさておいて、健康に暮らしているのは何よりだ。」


 久作は失望の表情を隠さずにそう言った。


「父さんの考古学の研究はどうなの?」

「ああ、いつもデータベースを掘り返して楽しんでいるよ。あれはいい趣味だ。……一朗、夢を作るのは良いが、あまり根をつめるんじゃないぞ。」

「……わかってるよ。」

「夢遊病にも注意しないといけないからな。」


 そう言うと久作は培養肉を食べた。


「そうだね……。昨日のデモクラシーテレビでは夢遊病者の原因は特定されたと言っていたけれど」

「デモクラシーテレビ!お前そんなものを見ているのか!?」


 デモクラシーテレビという言葉を聞いて久作は顔色を変えて大声をあげた。周囲の人が久作に目を向けた。一朗は何も気にせずそのまま食事を続けた。


「そうだよ。いつも共感出来る意見を」

「一朗!」


 久作は一朗の話を遮ると注目を集めていることに気づき、小さな声で話し始めた。


「デモクラシーテレビは極左勢力のプロパガンダを垂れ流しているんだぞ。奴らは現体制に対する革命を目論んでいるんだ。一般的な必要悪ををあたかもアイクラシーに固有なものであるかのように見せながら解決策として無責任な自由経済、自由戦争と民主主義を標榜して触れ回る。それが奴らのやり口だ。」

「極左勢力って父さん、彼らはただ」

「お前。民主主義国家が自由戦争の中でいかにして崩壊していったかを知らないわけじゃないだろう?」

「それは民主」

「現存する最古の歴史資料、太陽暦1984年のノイズの混じりの電子記録によるとだ。」

「父さん、歴史談義はいいよ。」


 一朗は女性の声を遮ろうとしたが、それを無視して父は語り始めた。


「今が原子歴803年だからだいたい1400年程前の記録だ。それまでこの真っ平らな大地の上では産業文明が発達し、最後の大国、オセアニアとユーラシアの二国が世界を統治していた。そのうちこのリヴァイアサンの都市が位置するオセアニアではビッグブラザ(※39)と呼ばれる統治システムによる強力な1党支配が敷かれていた。計画経済が施行され、安定的な楽園のような統治が行われていたんだ。現在と違ってリヴァイアサンのようなAIやアンドロイドはなかったから人の手による統治だったようだがな。ユーラシアも似たようなものだった。」

「久作さん、その話は何度も話していますよ。一緒に暮らしていた頃は週に3回は話していませんでしたか。」


 ミームがそう言っても久作は話を続ける。


「聞け、一朗。そのビッグブラザーの楽園は永遠には続かなかったんだ。ビッグブラザーは過激化した自由戦争によって破壊されたのだ。自由戦争は恐ろしい争いだった。始まりは単純だ。人々はよりよい暮らしを求めて貨幣経済を発達させ始めたというそれだけのことだ。自由戦争……原理的にはそれは他者への寄与度が高い者が多くの自由を得る、優れた分業化の仕組みなのだが……。即ち、多くの人々が求める商品をより多く生み出し行き渡らせた者がその対価として多くの貨幣、交換の自由を得る。これで誰もが皆、他者により貢献するために生きるというわけだ。しかし、これが暴走を始めてビッグブラザーは制御できなくなった。人類は倒錯した。」

「父さん熱くなりすぎだよ。」


 一朗の制止を聞かず久作は話を続ける。


「お前はデモクラシーの脅威を理解していない。……それから、商品は生活に必要であるから生産されるのではなく、その対価である自由を得るために生産されるようになった。そして、過剰な自由は更なる自由を得るためのゲームと化し、誰もが”他者に貢献する”その手で互いに互いの自由を奪い合った。そして、無計画な欲望にまみれた自由を求める人々の手によって計画経済と一党支配は圧政であると見なされ革命が起こった。そして、1991年にビッグブラザーシステムは崩壊(※40)、民主主義国家、ネーションステートが乱立した。」

「はあ。」


 一朗は何度も何度も聞き飽きた話に嫌気がさし、適当に頷きながら、先ほどG01駅で見かけた美術展のポスターをコモンセンスに表示させ、それを見つつ食事を続けた。


「暴走を止める手を失った過去の人々は自身の欲望のままに他国から資源を略奪し、ネーションステートどうしで奪い合った自由を謳歌した。民主主義国家が乱立する中での自由戦争ではネーションステートという単位を超えた利益を求めることができなかった。彼らはその当時の国際法で主権が認められているからと言って、他国の惨状を救うよりも自国の利益を優先する律法主義者たちだった……。結果として、自由戦争の中で暴走する民主主義とネーションステートを止める手はなく、それは元々富める者をより富ませ、貧しき者をさらに貧しくし、その二極化した構造を再生産し、格差をより拡大させ続け、この大地ののエコシステムを破壊した。現代のようにほぼ格差のない平等な社会とは程遠かった。格差は市民の利害関係を分断し、大多数を占める下層階級の意見を“代表”する僭主が現れ、多数決原理に従い矛先を他者へと向けさせた。困窮する民主主義国家は他の民主主義国家を排撃し始めた。」


 一朗は次は何の夢を見ようかと考えつつも久作の話に合わせた。


「それで、民主主義国家は破綻したんだったね。」

「そうだ。代議制などという擬制で民意を代表するという行為自体に欺瞞がある上に、群衆が常に正しい判断ができるとは限らない……。自由戦争で暴走したネーションによる資源の奪い合いと環境破壊、格差による分断、僭主による愚政、これにより国家間で世界大戦が勃発し資源配分がさらなる機能不全を起こした。最終的には古代兵器“巨神兵”が動員され“火の一週間(※41)と呼ばれる破壊が訪れ大地に死の灰と腐った海が広まった。そして、今を生きる私たちの自由が失われたのだ。過剰な自由を求めるデモクラシーという擬制はその基本的原則に従い自由戦争により破綻するべくして破綻したのだ……。このイースタシア地方でビッグブラザーの後継、リヴァイアサンが生まれ、各都市に広まるまで、時代は混迷を極めた。」

「そうだったね。」

「未だに過激派組織ズヴィズダー、それを率いるテロリストの如月、極左勢力が民主主義を標榜してはいるが……あれは古代の破壊的イデオロギーだ。彼らの誤りは国家単位での解決が構造的に不可能な問題の解決を国家に求め続けたことにあるのだが……。」

「わかったよ。デモクラシーテレビを見るのは控えるからさ。」

「一朗もそう言っていることだし、久作さん。」

「そうだな……。私も熱くなってしまった。」


 久作の熱が冷め、サラダを食べ終わるとウェイターは次の料理を持ってきた。


「古代野菜アスパラガス・オフィキナリ(※42)風万能食と古代魚パンガシウ(※43)風培養肉のスープです。」


 黄緑色の棒状の万能食が2、3本、白身の培養肉の塊とともに黄金色のスープに浸っている。


「これは美味しそうね。」


 ミームは皿の上の液体を見ながら言った。


「そうだね。ミーム。」


 久作は目の前の皿にもの足りなさそうに言う。


「ああ、パンガシウスは古代最後の高級魚だ。でもこれにはbio-Aの肉が入っていない。」

「アハハ。そうだね。どうせ父さんのことだからこの後頼んでいるんでしょう。」

「勿論だ。こんな日に肉がないなんて考えられない。」

「フフフ、久作さんらしいわね。」


 久作と一朗はスープを飲み始めた。


「私の好みでもあるが……。一朗。どうせお前はまたコケばかり食べているんだろう?」

「そりゃあ、万能食しか食べていないけど……。」

「それはダメだ。万能食のコケだけじゃなく、きちんとbio-Aの肉も食べないといかんぞ。」


 肉食をすすめる久作を見てミームが言った。


「久作さん。無理強いはいけませんよ。」

「わかってるさ。でも一朗はヴィーガンでも、バッテリー駆動の絶食主義者でもない。」

「うん。僕も嫌いってわけじゃないんだけど、経済的にね……。」


 一朗がそう言うと久作は少し間を置いて話し始めた。


「……そうだ、一朗、お前ももう1人立ちして7年も経っているな。」

「うん。」

「いい加減に結婚をしたらどうだ?お前と同年代の子も皆結婚しているぞ。」

「それは」


 その時、一朗の脳内でリヴァイアサンの声が響いた。


「ご主人様、2分後にマグニチュード4の地震が発生します。予想される震度は2です。特に危険はありませんので避難の必要はありません。」


 アンドロイドのウェイターは立ち止まり、久作はスープを飲む手を止めた。誰もが話すのをやめて、一瞬店内が静まり返った。


「また地震か。」


 そう言って久作はスプーンを置いた。


「そうだね。でも、そんなに揺れないでしょう。」


 一朗がそう言ってからしばらくすると、スープの表面に小さく水紋が生まれ、カラカラとスプーンが揺れ、マドロスパイプが倒れたが、すぐに揺れはおさまった。


「おさまったな。」

「そうね。でも恐ろしいわ。」

「いつものことじゃないか。それに地震は防ぎようがない。」


 久作はそう言ってまたスプーンをとり、スープを飲んだ。


「一朗、さっきの話だが。」

「結婚?僕はしないよ。僕は夢を見て、作り続けていたい。クリエイターとして生きていたいからね。」

「一朗、別にクリエイターとして生きることは別に問題ない。ただお前は人付き合いを絶ったうえ、ベーシックインカムも自分で稼いだなけなしの金もほとんど全て夢に課金してつぎ込んでいるじゃないか。それをやめて欲しいからそう言っているんだ。何も今から無理矢理技術ギークの開発者になれと言っているわけじゃない。」

「父さん」


 一朗の返事を待たずにミームが口を出した。


「一朗。久作さんはあまり話をしたがらないけど、先日お父さんの友人が言っていましたよ。」

「なんて言ってたの?」

「あなたは夢の廃人だって。」


 一朗はその言葉に憤慨し、頬を紅潮させて言った。


「ミーム!父さん!何を言われようと、僕は管理者にはならない。同年代の奴らと同じことをするなんてうんざりだ!」

「でも一朗、将来を考えた時、形だけでも絶対に管理者に就いた方がいい。今の管理者の仕事なんてかなり簡単な業務だ。フレックスでドールやコモンセンスを使ってちゃんとアンドロイドと工場の設備なんかが動いているかどうかチェックするだけじゃないか。それだけで、同僚との交流、社会生活も得られる。廃人生活から抜け出せるんだ。」

「貴方の年齢になったらみんな貯めたお金を使って結婚しているわよ。若いときに生涯の伴侶を得ておいたほうがいいわ。」

「そんなことは知ったこっちゃないよ。周りの人間が次々結婚して行くからって、皆が交流していようが僕には関係ない。何かに拘束される人生なんてまっぴらさ。」


 久作は困った顔で言った。


「とは言ってもお前が独りで夢を見続けるのは人として不健全だ。」

「父さん。考えが古いよ。そんな人いくらだっている。それに別にいいさ。僕は覚悟している。例え孤独死をしても人生を夢に捧げると。」

「一朗……。今はそんなことを言って夢をおいかけるのもいいけど、後になって後悔するわ。考えてごらん。お前が50代になった時、周りは皆伴侶を得て管理者のキャリアも積んで、同僚との交流も深めて、子供もいて幸せな家庭を築いている。それに比べて、貴方はただ1人、部屋に閉じこもって現実を失い、夢を見ながら惨めに生活して、最悪夢遊病者になってる。」


 一朗は意地になって言う。


「他人は他人さ。人は皆違う。僕は僕の道を行く。人と人を比べることに意味なんてない。僕は人と人を比べることができるという発想が大嫌いだ。」

「比べることが嫌って。お前、一人でこもっていては同じか違うかはわからないぞ?比べて初めて違いはわかるもんだ。」

「それはそうだけど……それでも、管理者の道に進めば、皆同じになる。どこを見ても何の夢を生むこともなくただただ生活のために働く人間に囲まれてそんな奴しか見えなくなる。きっとそうなれば同じか違うかなんて何もかもわからなくなってしまう、違うか同じか、そんなことを気にもかけなくなってしまうだろう…。」

「一朗…お前……。」


「……僕は夢を作るとき、その都度その都度、未来を賭けていると思ってるんだ。これは受け売りだけど、こんな話を聞いたことはある?」

「なんだ?」

「どこから説明するか……。そうだな。まず大まかに言って、無から有は生まれないというのは正しいでしょう?」

「それはそうだろうが、一体賭けとなんの関係があるんだ?」

「まあ、聞いてよ。そして、天才の発想というものは明らかに今まで既にあったものではないということ、既存の発想とは違ったものだということは確かでしょう。」

「一体何だ。」


 久作は一朗の意図を汲み取れない。


「なら、こう考えられる。開発者のような天才と言えどとも、無から有を作り出している訳じゃない。では、ざっくり言って天才も実質行うことというのはすべて既存の要素の分解と組み合わせ、新しい結(※44)から今までとは異なるもので、より良いもの、より多くの民衆に有益なもの、より他者に貢献できるものを生み出しているということに尽きるはずだ。“開発者よ、大衆の為にあれ(※45)という標語のように。」


「そりゃそうだろうけど、それがどうしたの。」


「そこでこんな集合を考えてみる。それは世界のすべてのものと事象、そして情報、無限大と無限小、分解されたものも、組み合わせられたものも何もかもの要素をひっくるめた集合だ。そこには文字通り過去にあった全ての事象や現実世界の全てと実現不可能な空想、そして実現可能だがまだ現れていない世界のすべてが含まれているはずだ。」

「まあ、ぜんぶあるだろう。」

「ならば、そこにはもちろん無数の意味のない概念と事象、全ての馬鹿げたアイディアが詰まっている。」

「全部あればそうだな。」

「なら、逆もあるはずだ。だから、そこには天才が考えるすべてのアイディアが……この世界のルールを造り変えてしまうようなまだ見えぬ神の一手さえもそこには眠っている。」

「そうね。」

「だから、そうさ。既存の要素を模倣しながらも、他の人と違うように分解と組み合わせを行い続ければもちろん、常識外れな馬鹿げた考えにいくつも突き当たるさ。」

「そりゃそうだ。」

「でも、模倣と分解と組み合わせを行い、他人とは違うものを生み出し続ければ、いつか何かの偶然で天才のアイディアに、あるいは神の一手に突き当たるかもしれない。今まで造られた、今ここにある全ての事実を、これまで積み重ねられた全ての蓄積を超える、既存の価値を転換してしまう何かをこの手で……。もちろんそれは一万分の一の確率かもしれないし、百万分の一、いや、それより低い確率だろう。でも、僕はそれを考えることをやめることができない。いつかこの手がその一手を生み出す可能性を思うと……僕は夢を生み出すことをやめられないんだ。」


 久作は少し考えて一朗に反論した。


「……しかし、無から有は生まれないというが、アイディアは情報じゃないか!情報は思考が続く限り無限に生み出すことができる!」


 一朗はそれに答えた。


「確かに無限に生み出すことはできるが、新しいアイディアといえども、意味のあるものには必ず制限がある。例えば、全くもって新しい概念でこの世界の何者にも関係のない概念を考えてみる。それを仮に“ミ侑頒侑榧「”と名付けてみる。しかし“ミ侑頒侑榧(※46)”に意味はあるだろうか?この新しい言葉は新しさという意味しか持たない。」

「それがどうしたの?」

「僕が言いたいのはこういうことだ。思考の対象と何の関係を持たない情報と言葉は組み合わせるアイディアから省くことができる。逆に言えば、万物は関係に制限される。だから、意味のある情報は全くの無制限に増えるわけじゃない。この世のあらゆる意味、関係からの解放を目指した抽象芸術というものを想定しても、それは色や形、視覚、五感を通じてその“関係からの解放”というナンセンスな意味を“知らせる行為”から自由であるわけじゃない。意味と無意味の差異やコンテクストとの関係からは解放されない。どんな情報もそれが意味を持つ限り、関係から解放され得ない。関係の糸を手繰ること、それは」

「もういい!馬鹿だ、そんなもの!無限に挑むなんて……。お前は勝ち目のない賭けに挑む自分に酔っているんだ。……神なんて古代の文献にしかないような言葉まで使って。神は人間が創造した最も愚かな」

「なんとでも言えばいいさ。それでもこの世の全てがそこにはある……。」

「一朗……お願いだから私の言うことを聞いてくれ。お前は天才じゃない。ましてや神なんかじゃない。ただの、ただの……優しい……私のたった一人の息子じゃないか……。」


 久作が乞い願うようにそう言うと一朗は少し黙って一別の話を始めた。


「……先史時代には人類は空を飛び、月に行ったという神話を知っているね。」

「それがどうした?今度はグローバリストの夢物語を持ち出してきて……。」

「その時使用されたコンピュータは後に開発されたゲーム機器にははるかに満たない処理能力しかなかったと言われている。ましてや、今のコンピュータとは比べ物にならない。」

「何が言いたいの?」

「僕が言いたいのはこういうことだ。すなわち、人のなす偉業というものは必ずしも合理的な計算の処理能力に依存するものではないということだ。奇抜な組み合わせ、奇異な行動で新しい結合を行い、試行錯誤すること、そこには蓄積された既得権益を持つ者も、才能持つ者も、どのような競争者もいない。それは天才にのみ許された業ではない。寧ろ、奇異な試行錯誤は本来的に凡庸なる愚者がとるべき生存戦略なのさ。」


 久作とミームは言葉に詰まった。


「……もちろん正確な判断が出来ることは必要だけど、たとえ頭脳が格段に優れていなくとも、先天的な能力で天才ではなかったとしても、偉大なる何かを目指し模倣と分解と組み合わせを続けて、他人とは違うものを生み出し続ければ大量に生まれる馬鹿みたいな手のその中に……この世の価値を組み替える神の一手を生み出す可能性は誰にでも開かれている。」


 久作は間髪入れずにこう言った。


「無理だ。一朗。そもそも計算機と人の頭脳は比べることはできない。仮に月が本当に存在していて、人類がゲーム機器に満たない処理能力でそこに到達したとしても、計算機が迅速に正確無比な計算ができるという本質は何も変わりないじゃないか。」

「もちろん、単純に計算機と人間の脳を比べることはできない……。でも、ある程度正確な判断ができることは必要だけど、正確無比な計算が迅速にできることは偉業の実現に必然ではない。天才も誤ることはあるだろうし。寧ろ誤りから何かが生まれるということもある。……データの一部が破損しているけど、かつて偉大なる創造者、ビッグブラザーは言ったでしょう。“2×2”を”5”に変えるつもりで生きろ、と。正確には”2×2=5も時に縺吶kと愛嬌のあるしろ物縺ェ縺ョだ。(※47)だけど。それにこう考えてみたら?」


 一朗は一呼吸入れてまた喋り始めた。


「例えば古代の天才、そうだな。伝説の数学者アラン・チューリン(※48)がいるだろう?彼がもしも彼自身の天才的な頭脳を持ちながらも古代でなく、原始時代の最初の人間に生まれていたとして同じように計算機の理論を発明できただろうか?」

「それは……」


 久作は言葉を濁した。


「できないだろう。つまりいかに知能が高い天才と言えども時代と環境によってその思考は造られる……。逆に言えば、自分自身をそういう環境に置いて、分解と模倣、他人と違う組み合わせと新結合を繰り返し続ければ、誰にでもそれが開かれるかもしれない。今ここにある現実を超えた創造を……。それは天の星にだって届くかもしれない……。」


 一朗はあらぬ方向を見る遠い目で喋る。久作は一朗を現実に引き戻すために言う。


「だとしても、そう言いながらもお前のすることといえば部屋に引きこもって夢を見ることだけじゃないか!」

「そうさ。僕は夢を見る。そして、夢を生み続ける。だから、夢を見ない奴らよりも遥かに阿呆だ。彼らは馬鹿なことはしないから。」

「わかって」

「わかっているさ。だから、夢を見て、夢を生み続け馬鹿なことをする僕は夢を見ない奴らよりは遥かに神の手を生み出す確率は高いのさ。」


 久作は悲痛な声で言った。


「……それでもお前の手が月に届くわけじゃない!私たちは月に届くどころか、空を見上げて星を拝むことも、それどころかこの深い地下都市から外に出ることすら出来やしないのに!」

「何とでも言えばいいさ。僕は阿呆であったとしても、少なくとも考古学で生きていく夢を失った父さんよりは」

「お前!」


 久作は癇癪を起こし、立ち上がってその細い腕で一朗の胸ぐらを掴んだ。皿の上の液体があたりに飛び散りテーブルクロスの染みになった。

 胸ぐらを掴まれた一朗の見る久作はみるみる顔が青色に染まり、その深い青はそのまま店内の壁やテーブルクロス、スープの染みにも広がり、ブルーの視界が広がっていった。そして、2人の脳内でリヴァイアサンのアラートが響いた。


「テロルの危険性があります。一旦落ち着いて話し合いましょう。視床下部、中脳水道周囲灰白質に対してセロトニンを投与します。」


 すぐに店の管理者のドー(※49)がアンドロイド数名と駆けつけてきた。


「お客様、店内ではお静かに願います。テロルが発生した場合は強制的に退去していただきます。」

「申し訳ございません。ほら、2人とも落ち着いて!」


 視界が青色に染まった2人は脳内物質によって少し落ち着きを取り戻したが、久作は一度露わにした怒りを引っ込めることができなかった。


「……もういい!お前は救いようのない馬鹿だ!」

「……わかったよ。父さんは僕を理解しない。」

「ちょっとばかり言いすぎよ……2人とも……。」


 ミームは一朗にかける言葉が見つからなかった。


「僕は僕の道を行く。父さんとミームにはそれは何も関係がない。」


 一朗は席から立ち上がって歩き始めた。


「勝手にしろ!」


 それから一朗はレストランを後にして、駅に向かって早足で歩き始めた。しばらく無言で歩いた後、一朗はリヴァイアサンに話しかけた。


「レヴィ、ちょっと早くなったけど、もう先にメンテナンスに行くよ。」

「……かしこ縺セ繧ました。」

「レヴィ?」

「どう繧ら繧ウ繝「ンセンスの状態縺梧悽格的に悪化し縺ヲ縺たようです。早急にメン繝?リンスに向か縺?∪しょう。」


 一朗は立ち止まって聞いた。


「レヴィ、声が。」

「コモ繝ウ繧サンスのエラ繝シ縺ァ救急医を呼縺ケ縺セせん。」

「アンビュランスは使えないんだな。」

「繝。トロのE03駅が目的蝨ーの最寄り駅です。あ繧九>はタ繧ッシーを使う縺ィ縺う手もあり縺セ縺。」

「わかった。タクシーを使うよ。」

「か縺励%まりました。コモン繧サ繝ウ繧ケが使縺な縺?◆め駅で自分で拾っ縺ヲ縺ださい。」

「わかったから、レヴィ。」

「……一朗讒、今のあなたの蜿悶k手のコモ繝ウ(※50)ヲェルスへの寄与度は、測定不能です。」


 リヴァイアサンはそう言うと固く口を閉ざした。



脚注:

※1 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96

※2 https://www.ecosia.org/search?q=Common+Sense+Thomas+Paine

※3 https://www.ecosia.org/search?q=Shibuya+station

※4 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96

※5 https://www.ecosia.org/search?q=Jimbocho+station

※6 https://www.ecosia.org/search?q=Ueno+Station

※7 https://www.ecosia.org/search?q=Akihabara+station

※8 https://www.ecosia.org/search?q=%E5%92%8C%E6%B3%89%E6%A9%8B%E3%80%80%E5%9B%BD%E6%97%97%E6%8E%B2%E6%8F%9A%E5%8F%B0%E8%B7%A1

※9 https://www.ecosia.org/search?q=Ouroboros

※10 https://www.ecosia.org/search?q=Panda+Ueno+Zoo

※11 https://www.ecosia.org/search?q=Ueno+Park

※12 https://www.ecosia.org/search?q=The+Ueno+Royal+Museum

※13 https://www.ecosia.org/search?q=Shinobazu+Pond

※14 https://www.ecosia.org/search?q=Kokoro+Soseki+Natsume

※15 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96 

※16 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96

※17 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96

※18 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96

※19 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96

※20 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96

※21 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96

※22 https://www.ecosia.org/search?q=Drone

※23 https://www.ecosia.org/search?q=Avatar+Robot

※24 https://www.ecosia.org/search?q=出版書誌データベース

※25 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%B2%BB%E5%AE%89%E7%B6%AD%E6%8C%81%E6%B3%95

※26 https://www.ecosia.org/search?q=Tokyo+Station

※27 https://www.ecosia.org/search?q=Toranomon

※28 https://www.ecosia.org/search?q=The+National+Diet+of+Japan

※29 https://www.ecosia.org/search?q=Discourse+on+Decadence+Ango+Sakaguchi

※30 https://www.ecosia.org/search?q=Matthew+5%3A28

※31 https://www.ecosia.org/search?q=Hachiko

※32 https://www.ecosia.org/search?q=%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E8%AA%AC

※33 https://www.ecosia.org/search?q=Ghost+in+the+shell

※34 https://www.ecosia.org/search?q=Kyusaku+Yumeno

※35 https://www.ecosia.org/search?q=Oishii+Seikatsu

※36 https://www.ecosia.org/search?q=Rucola

※37 https://www.ecosia.org/search?q=Apple

※38 https://www.ecosia.org/search?q=Donaldson+trout

※39 https://www.ecosia.org/search?q=1984

※40 https://www.ecosia.org/search?q=Soviet+Union

※41 www.ecosia.org/search?q=Nausicaae+of+the+Valley+of+the+Wind+%281984%29+%28%E7%AC%91%29

※42 https://www.ecosia.org/search?q=Asparagus

※43 https://www.ecosia.org/search?q=Pangasius

※44 https://www.ecosia.org/search?q=Theory+of+Economic+Development+Schumpeter

※45 https://www.ecosia.org/search?q=%E3%83%8F%E3%82%AC%E3%83%AC%E3%83%B3%E7%AC%91

※46 https://www.ecosia.org/search?q=Idiot

※47 https://www.ecosia.org/search?q=Notes+from+Underground

※48 https://www.ecosia.org/search?q=Alan+Mathison+Turing

※49 https://www.ecosia.org/search?q=Serotonin+Michel+Houellebecq

※50 https://www.ecosia.org/search?q=文字化けテスター

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。加えて、このなかで語られた言葉はいかなる真実をもふくみません。

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