表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

協力バトル

レンガと空き瓶があれば最強に見える。

「本当にそれでなんとかなるの?」

山根さんは心配そうに俺に問い詰めた。

「それしか方法はないと思います」

俺ははっきりと告げた。

「分かった...」

そう言って山根さんは準備に取り掛かる。


俺は大きく息を吐いた。

緊張している。

今まで散々ゾンビと戦ってきたが、今回は今までより数が多い。

だがここを乗り切れば小春公園にたどり着く。


俺は気合いをいれ、家の庭から崩れたレンガを持ち運ぶ。

「準備はいいですか?」

俺は山根さんにレンガを渡し聞く

「大丈夫...」

「では行きましょう」


そして俺はゾンビ達の目の前に来た。

一体の俺が仕留めた死体に、三体のゾンビが群がっており、ガリガリと骨ごと死体を食べていた。

奥にはもう一体のゾンビが、ほとんど原型を留めて居ない肉片を集め食べている。

俺は持っている槍をそっと持ち上げる。

(大丈夫だ、まだ気づかれていない)

そっと三体のゾンビに近づく。

忍び足で一歩づつ気づかれないよう。

1歩進むたび緊張で冷や汗が出る。

ここで気づかれたら終わりだ。

そして気付かれずに、槍の届く範囲まで近づけた。

そして、ちょうど背中を向けている一体のゾンビの首を刺した。

「ぐるぁ!!」

刺されたゾンビは首元から鮮血を流した。


これでまず一体。

俺は槍を引き後ろに下がる。

ゾンビ達は俺に気付き立ち上がる。

そして俺の元へとジリジリ近づいてくる。

俺は警戒しながらさらに後ろへ下がる。

そして、しっかりとゾンビ達の位置を確認した。


細いアスファルトの道に、ほぼ並ぶようにこちらに近づいてくるゾンビが二体。

そして、その後ろにもう一体。

2体並んだゾンビとの距離は目測3メートル。


さらに下がる、あと少しで隠れていた家まで着く。

「桜くん!」

家のフェンスから覗き込んでいた、山根さんが合図をだした。

俺はすぐに辺りを見回し、道に落としておいたレンガを拾った。

そして構える。

しっかりと左のゾンビに狙いを定めた。

狙いはゾンビの頭。

そして勢いよく投げた。


「ぐう!」

見事に頭にあたりゾンビは怯んだ。

ぶつけたレンガが砕け落ちる。

「桜くん!」

山根さんが近づき持っているレンガを渡した。

「はい!」

俺は返事を返し、右側のゾンビを睨んだ。

そして、すかさずレンガを投げた。


が、狙いがずれレンガはゾンビの頭の上を通り越し、アスファルトの地面に落ち割れた。

「あああ...」

ゾンビがどんどん近づいてくる。

「ひっ...!」

間近でゾンビを見て山根さんが声をあげた。

「落ち着いて!はやくレンガを!」

俺はゾンビに注意を払いながら、山根さんに手を差し出す。

「う、うん!」

そして山根さんはレンガを渡す。

「下がって!」

俺は受け取り指示を出す。

山根さんは一目散に走る。


次は外さない。

俺は限界の距離までゾンビを待ち構える。

ゾンビが俺に噛み付こうと口を大きく開けた。

「今だ!」

俺はすかさず開いた口目掛けレンガを投げる。

「ふが!?」

ゾンビの口にレンガが入った。

それと同時に後ろへ下がる。

槍を構え、レンガを吐き出すゾンビの腹を刺す。

だがこれでは、死なない。


ゾンビに痛覚はない。

今までの戦いではっきりと分かった。

仕留めるなら、首を狙うべきだ。

だが俺はあえて腹を刺した。


なぜなら

「ふっ!!」

俺は刺した槍を勢いよく押す。

ぐらりと、槍で押されたゾンビが揺れる。

さらに強く槍を握り、力強く押すことでゾンビが倒れた。

さらにレンガを当てられ怯んでいた、ゾンビも一緒に巻き込まれ倒れる。

「上手くいった!」

俺はすかさずゾンビにトドメを刺そうとした。


瞬間


「桜くん!前!」

「!」

山根さんの呼び声で前を見ると、三体目のゾンビが間近に迫っていた。

俺は急いで距離をとった。

「油断した...」

もっと距離が空いていたと思っていたのに...

本来ならレンガをぶつけ、怯ませ鉄槍で転がす。

そしてすかさずトドメを刺す。

三体目のゾンビが来る前に二体を仕留める。

そういう作戦だった。


「くそ...!」

レンガを外したせいで、三体目が間近に近づいてしまった。

どうする?

二体は立ち上がろうとしている。

そして後ろから追いかけていたゾンビは、倒れている二人ゾンビを横切りこちらに近づく。

「山根さんレンガを!」

俺は山根さんへ手を出す。

「分かった!」

急いで駆け寄ってくる山根さんから、引ったくるようにレンガをとった。

そしてすかさずゾンビに投げる。


ゴスッ

と鈍い音がしたが、ゾンビは気にせず近づく。

レンガが頭ではなく、お腹に当たってしまったからだ。

「くそ!」

焦りすぎた!

「山根さん!もう一個!...え?」

振り返ると山根さんは遠くへ走っていった。


逃げた?

俺をここに置いて

嘘だろ!?

俺は山根さんを追いかけようと走り出すもすぐやめた。

そうか...

ここに来て...

ここまで来て結局彼女は、俺のことなんか信じれなかったんだ。

だから逃げた。


「...ははっ」

俺は危機的状況なのに気づけば笑っていた。

それでも、いいや...

ここまで彼女を守れたんだし、だったらここで死んでもいいか。

ここからなら一人でもたどり着くだろう。

「せめて、少しは足掻くか...」

俺は振り返り、ゾンビへ対峙した。


「桜くん!避けて!」

すると後ろから声が聞こえてきた。

俺は振り返り、急いでその場から身を引く。

瞬間、風が吹いた。

と、同時にバギっと鈍い音がした。

音の正体はレンガだ。

そして前を見ると山根さんがいた。


つまるところ彼女は後ろからこちらに走り、その勢いを利用して至近距離からレンガをぶつけたのだ。

ゾンビは顔から血を流し倒れた。


「やった...?」

山根さんは息を呼吸を整えながら俺の元へきた。

見るとリュックサックを背負っていない。

道に置いてきたようだ。

なるほど、あれだけ早く走れたのもう頷ける。

そういえば、ここまで数時間移動したが、休憩は取らなかった。

それなのに、今まで一度も息も切らさず、重たいリュックサックを背負って、彼女は俺に付いてきていた。


「山根さんって運動神経いいんだ...」

俺は呟いた。

「これでも弓道部だったからね」

山根さん自慢げに返した。

弓道部の人ってこんなに体力あるんだ。


「ううう...」

「あああ...」

と気がつくと、最初に転ばした二体のゾンビがこちらに近づいて来る。

俺と山根さんは急いで下がる。

もう一体は上手く立ち上がれないようだ。

俺は山根さんに振り返った。

「もう一度さっきのやつお願いしてもいいですか?」

「うん、分かった」

そう言って山根さんはさらに後ろへ下がった。


山根さんの力ではレンガを当てても怯ませられない。

俺は当初そう考えていた。

それに、彼女を危険な目に合わせる訳にもいかない。

だから一緒に戦おうと言った時も、レンガを俺に渡すだけの係にした。

だが、彼女は俺が思いより、ずっと強い人間であるようだ。


「桜くん行くよ!」

遠くから山根さんが声をあげる。

「右の方お願いします!」

俺も返事を返し、道に落としておいたレンガを拾った。

これが最後のレンガだ。

絶対に外さない。

俺はしっかり握り、左のゾンビに全力で投げた。


「ぐぅ!」

左のゾンビが声をあげ、顔を抑えまたも怯んだ。

そして

バギっ!

遅れて横にいたゾンビにも、レンガが叩きつけられる。

そして、山根さんのレンガを食らったゾンビはまたも倒れた。

山根さんは即座に下がり、俺は怯んでいる左のゾンビに槍を突く。

一撃目右肩に

二撃目首元に

三撃目もう一度首元に

そして、三回目で刺されたゾンビはようやく事切れた。

これで二体目のゾンビも倒した。


「あと二体!」

俺は叫び倒れているゾンビに近づいた。

ゾンビは立ち上がり、辺りをウロウロと徘徊し始めた。

注意して観察すると目から血を流していた。

そのおかげで、相手はこちらの位置が分からないようだ。

思ったより山根さんの投げたレンガは、威力があるよらしい。

見るとゾンビの足元には、粉々になったレンガの破片が散らばっていた。

俺は、ゆっくりと立ち上がろうとしているゾンビに、鉄の槍で一突きでトドメを刺した。


「ラスト...!」

俺は最後に残ったゾンビへ顔を向けた。

見るとこのゾンビも顔から血を流し、ヨタヨタと歩くも壁にぶつかっていた。

どうやら、こちらも周りが見えていないようだ。

俺はそっと近づき、ゾンビの背後に回り込んだ。

そして槍を構え首を突き刺した。

ゾンビは何も言わず、そのまま崩れ落ちた。


「終わった...」

「やった...!」

俺が構えていた槍を下ろすと、山根さんが俺の元へ駆けつけてきた。

「上手くいきました」

「うん、やったね!」

そう言って山根さんは手を上げた。

「?」

「ハイタッチ!」

「あ、ああ...!」

俺も手を挙げ山根さんとハイタッチを交わした。


細いアスファルトの小道に、割れたり砕けたレンガ、そしてゾンビの死体が並んでいる。

改めて眺めるとようやく実感が湧いてきた。

本当に全員自分たちで倒したのだということに。

「これで、助かる...」

あとはこの先の丁字路を曲がれば小春公園だ。

「長かったね...」

山根さんが感慨深そうに返事を返した。

「そうですね、山根さんのおかげです。」

「いやいや、桜くんが頑張ってくれたおかげだよ」

そう言って彼女は微笑んだ。

「ありがとうございます」

俺はそっと、ポケットのドックタグを握り返事を返した。

そして、リュックサックを背負った山根さんと、共に俺は小春公園まで歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ