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生きる為にはなんでも利用するしかない

書いてて思った

自分のサブタイトルセンスが絶望的にないことに

家中から清潔なタオル、懐中電灯、ミネラルウォーター、缶詰め類は無かったので代わりにスナック菓子をリュックサックに詰めた。

ちなみにリュックサックは、この家の子供の学校指定の物だ。

「非常時だとはいえ、悪いことしてるみたいで気が咎めるなぁ」

リュックサックから教科書を抜き取り、代わりにペットボトルに入ったミネラルウォーターを入れながら呟く。

「しょうがないでしょ、生きるためなんだから」

そう言って山根さんは、俺が詰め終わったリュックサックを背負った。

山根さんと話し合い、俺は極力荷物を持たない事になった。

というのも重たい荷物を持ちながら、ゾンビと相手をすると、体力のない俺はすぐにバテてしまうからだ。

というわけで、俺の装備は竹の槍、サバイバルナイフ、キッチンにあった二本の包丁だ。


「本当にそれでなんとかなるの?」

山根さんは、鉄パイプを持たない俺に心配そうだ。

「大丈夫です」

俺は自信満々に返事を返した。

今回から武器だった鉄パイプは持たない事にした。

かなり重宝した武器ではあったが、一度の戦闘でかなりの体力が持っていかれるので、不要であると判断したからだ。

これで準備は万端だ、今日中には避難場所である小春公園にはたどり着きたい。


「行きましょう」

そう言って俺は、太陽が登る前のまだ薄暗い中家から出た。

「ちょっと待って」

すると山根さんは、少し遅れて家の外に出た。その手には鉄パイプが握られてる。

「やっぱり、持っといたほうがいいと思うから」

「...まあ、いいですよ」

俺はそう答え、懐中電灯をつけた。


「そういえば、どうしてこんな朝早くに移動するの?」

移動しながら山根さんが聞いてきた。

「暗い中で、懐中電灯の明かりをゾンビに浴びせると怯むんです」

「本当に?」

「はい」

ただし情報のソースはインターネットだ。

すると早速すぐ先の曲がり角から、ゾンビが歩いてきた。

すかさず俺は懐中電灯を浴びせる。

すると、ゾンビは光を嫌がるように手を顔に覆った。

「行きましょう!」

俺はそう言って、足早にその場から離れる。


しばらく走り、電柱の傍で隠れる。

見るとゾンビはその場に立ち尽くしている。

俺たちを見失ったようだ。

「上手くいった」

俺は小さくガッツポーズをした。

「すごい、これなら私でもいけるかも」

見ると山根さんも目を輝かせている。

「じゃ、次はお願いしますね」

俺は懐中電灯を渡した。


その後1度もゾンビと戦闘にならず、順調に移動を続けた。

だが夜が明けてしまった。

「桜くん!」

山根さんが俺の名前を叫ぶ。

「分かってます!」

俺は返事を返し竹の槍を構えた。


不覚だった、調子に乗りどんどん進んではいたが、ここに来てゾンビに挟み撃ちに合うとは。

目の前には車から這い出てくるゾンビに、家の窓を割って2体のゾンビが押し寄せてくる。

合計三体。

そして背後には、2体のゾンビが並んで追いかけて来る。

もうあと少しで、小春公園に着くと言うのにここに来て油断した。


俺は息を大きく吸い込み、背後のゾンビに突撃した。

そして投げるように竹の槍を、左のゾンビの頭目掛けてに刺す。

槍は口を開けたゾンビに、吸い込まれるように刺さった。

すかさず右のゾンビの腕が近づく。

距離わずか数センチ。

俺は右手でガードした。

ゾンビは俺の腕を掴み噛み付いた。

だが腕から血は出ない。

「残念だったな」

俺はゾンビに告げ首元にナイフを刺した。

血が吹きでる中それでも、噛み続けるゾンビ。

だが俺の右腕には、家から拝借したタオルが巻いてある。

それも1枚ではなく何枚も巻いてある。

そのためゾンビの歯が届くことは無い。

そしてゾンビは事切れずるりと倒れた。


「上手くいった...」

昨日のうちに考案しておいた武器と戦法。

竹槍そして腕に布を巻きつけ噛ませ、その隙にナイフで仕留める。

これなら同時に二体を処理できる。

「あああ...」

と後ろを振り返れば、ゾンビが三体束になって向かってきた。

俺は竹の槍を引き抜き、ゾンビの群れと対峙した。

俺はゾンビ達を睨み考える。

三体はさすがに無理か...?


「桜くん!槍が!」

とゾンビを倒すための策を練っていると、山根さんが声を上げた。

「へ?」

俺が声を上げたと同時に、竹につけていた包丁がポロリと落ちた。

「え!?」

俺は慌てて包丁を拾う。

包丁は持ち手まで血で汚れていた。

「逃げましょう!」

俺は山根さんと来た道を走って戻った。


しばらく走り家のフェンスの影に隠れる。

「だから言ったのに!」

山根さんは怒り心頭だ。

「す、すみません...」

俺は縮こまって謝罪する。

よく見ると竹槍の先端、包丁をつけていたガムテープが血に濡れていた。

おそらく突き刺した時、ゾンビの血が隙間に入ってしまったのだろう。

そして粘着力が無くなり包丁が外れてしまった。

そのことをちゃんと考えておくべきだった。


「あと少しで、たどり着くはずだったのに...」

「本当にすみません」

彼女の落胆はすごく顔を手に当て俯いてしまった。

もう少しで助かったはずなのに、俺がヘマしたせいで小春公園へ遠ざかってしまった。


それに...

俺は顔をゆっくりと外に出し、前の道を覗き込んだ。

「あああ...」

「ううう...」

見れば最初三体だったゾンビが、四体に増えその場にいた。

ゾンビ達は、俺が仕留めたゾンビの死体に群がり捕食していた。


さて考えなければ

この道を進めば小春公園へたどり着ける。

だが、目の前には四体のゾンビ。

本来ならこの場から一度引き返し、別の道から移動した方が安全だろう。

だが、本当にあと少しの所まで来ている。

もう少しで助かる。

それなのにここに来て、遠まりするのは正直嫌だ。

ならばここは強行突破しかない。


方法を考えろ。

武器はサバイバルナイフと包丁、そして山根さんが持っている鉄パイプ。

竹はもう使えないだろう。

他に武器となりそうなもの...

俺は辺りを調べた。

家の前には1台の車が停まっている。

残念ながら車には鍵がかかっており、開けること出来なかった。

家の中を調べようとしたが、ここも玄関に鍵がかかっていた。

さらに家の周りをぐるりと歩き回り庭にたどり着いた。

緑色の芝生と、縁側に置かれている踏み台。

遠くには崩れたレンガの壁が見える。

だがこれといって、武器になりそうなものは無い。


諦めて山根さんの元へ戻る。

すると山根さんの背負っているリュックサック、その横のポケットが膨らんでいることに気がついた。

「山根さんリュック貸してください」

俺がそういうと、山根さんは黙ってリュックサックを渡した。

調べると、スマホのモバイルバッテリーとイヤホン、それに筆箱が入っていた。

イヤホンはワイヤレスではなく有線のものだった。

筆箱を調べると、シャープペンやボールペン、他にはカッターナイフやマスキングテープテープなども入っていた。

「取りだし忘れちゃったんだ」

山根さんはぽつりと話しかけた。


「これだ...!」

俺は山根さんの言葉を無視し、マスキングテープを取り作業に取り掛かった。

「ちょっと、急にどうしたの?」

「思いついたんです、新しい武器を」

そう言ってイヤホンと、モバイルバッテリーの充電コードに、マスキングテープを巻き付ける。

「昔のドラマで、鉄パイプにナイフを針金で巻き付けて槍にしてたんです」

「それ、さっき失敗したやつ」

「はい、同じようにガムテープで出来ると思ってたんですけど...完全に失敗でした」

できた紐で、サバイバルナイフを鉄パイプに縛り付ける。

「でもマスキングテープで補強したこの紐なら、同じように出来るはず」

充電コードや、イヤホンのコードの中には針金が入っている。

だがそれだけでは強度が足りない、そのためマスキングテープを巻き付けることで、強度を高めた。

「できた...!」

そう言って、鉄パイプの槍を掲げた。

サバイバルナイフの鍔には丸い穴が空いている。そこに紐を通し鉄パイプに縛り付けた。

頑丈に縛られた槍は、血に濡れても外れることは無いだろう。


俺は立ち上がり槍を構えた。

だが、これだけでは足りない。

ゾンビを四体同時に相手に槍一本では無理だ。

「山根さん、一緒に戦ってくれませんか?」

「え?」

「この先のゾンビを倒すには、僕一人の力では多分無理です。」

俺ははっきりと告げた。

「でも、私...」

「お願いします」

俺は頭を下げた。

「...」

山根さんは俯いて何も言わない。


無理か。

俺は諦めゾンビ達の所へ向かう。

こうなったら一人でもやってやるしかない。


「待って」

振り返ると山根さんが立っていた。

「山根さん...」

「私も戦う」

「いいんですか?」

すると山根さんは少し顔を歪めた。

「本当は嫌だけど、すごく...」

「だったら...」

「でも、それしかないんでしょ?」

そう言って俺を見た。


「桜くん、私正直諦めてたの」

「え?」

「どうせ助からない、君みたいな人と一緒じゃ無理だって」

「え、酷い...」

軽く傷ついた。

正論だけど。

「でも、ここまで来れた。桜くんが頑張ってくれて、あと少しで助かる」

「山根さん...」

「だから、諦めたくない」

そう言って山根さんは俺の横に来た。

「何をすればいい?」

その目は最初絶望にくれた時と違い、決意に満ちた表情だった。


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