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生きていて欲しいから

 彩奈の通夜に行きたいという純也に、母親の亜紀子も同行したいと言い出したため、二人を送っていこうと思った島田は二人が準備を整えるのを待っていた。

 純也は学生服に着替えただけだったが、髪をとき、メイクを整えた亜紀子が、黒の礼服に着替えて島田の前に現れると、彼はただ茫然と彼女に魅入った。


( 守ってあげたい、いつまでもそばに居たい、俺だけのものにしたい)そんな思いが島田の頭の中を駆け巡った。


 通夜はわずかな親族と、純也親子の他に同じクラスの女生徒が三人来ていただけだった。

中野は学校へは知らせなかったのだが、それでもどこで聞きつけたのか、彩奈が登校した五日間の間に、彼女を知った三人の女生徒が列席してくれた。


 棺の中で静かに眠る彩奈を目にした時

( くっそー、後ひと月、あと少しだったんだっ、もう少しだったのに…… くそーっ、もう少し頑張って欲しかった、頑張ってくれていたら…… くそっー、そんなこと思うのは贅沢なのか、たったの後ひと月じゃないか、俺のわがままなのか…… くそっー  )

 悔しさに涙があふれ、純也は無念に押しつぶされそうになっていた。


 翌日の葬儀には、担任の教師も加わり、わずかなもの達で愛奈を見送ったが、それでも本当に彼女の死を悼むものばかりで、純也はその様子を見ながら、とてもうれしかった。

 しかし、それでも亡くなる前の彩奈の言葉が耳に残って彼は悩んでいた。


 火葬場で愛奈を見送った後、庭に出て池のほとりで煙草に火をつけた中野は、大きく息を吸い込むと、目を閉じて静かにそれを吐き出していった。その脳裏を彩奈の笑顔がよぎると、彼はあふれ出る涙をどうすることもできなかった。

 離れたところから、その様子を見ていた純也の隣で、

「中野さんの悲しみは想像がつかないわね、たった一人きりになってしまって、もう生きていく力は残っていないかもしれないね。誰かがそばにいてあげないと…… 」

 母が囁くように思いを寄せた。

「彩奈さんが、亡くなる前に、父さんをお願い、死ぬかもしれないって…… 」

 母親に目を向けた純也が独り言をつぶやくように口にした。

「そう……? 何とかしてあげたい…… 四十九日までに何とか……」亜紀子は中野の寂しそうな背中を見つめながら呟いた。


 その二日後のことであった。

 純也は、島田から母親に交際を申し込んでもいいか、という電話をもらって驚いた。

『 そ、そんなうれしいことはないですけど…… 』

このままだと、母親がいつまた、変な男に騙されるかもしれないと心配していた純也はとてもうれしかった。

『 年甲斐もなく恥ずかしいことだが、こんなのは初めてなんだ。初めて会ったあの日、守ってあげたいって思ったんだ』

『いや、夢のようです。島田さんのような人がそばにいてくれたら、安心です。親父だって喜ぶと思います』

『そ、そう思ってくれるのか…… じゃあ、反対はしないんだね』

『反対どころか、大賛成です。俺だって応援します』


 こんな話の二日後、島田から食事に誘われた亜紀子は純也の勧めもあって、久しぶりに着飾り、嬉しそうに出かけて行ったのだが、二時間後、島田から電話をもらった純也は驚いた。

『純也君、今、お母さんをタクシーに乗せたところだ。二十分くらいで着くと思うんだが、振られてしまったよ』

それでも島田の声は明るい。

『ええっ! 母さんが断ったんですか!』

『ああ、気持ちよく断られたよ』

『し、信じられない……』純也は愕然とした。

『心に住み着いた人がいるらしい』

『ええっー、そ、そんな……』

『中野の親父さんだ』

『ええっー、し、信じられない……』

『おれも滅多なことで引くつもりはなかったんだけど、『中野さんに寄り添ってあげたい』って言われちゃね、どうしようもないよ』

『そ、そんなことを……』

『あの日さー、なんか親父さんを見る目が違うなーって、いやな予感はしてたんだ』

『そ、そうですか……』

『でもね、俺だって親父さんのことは心配なんだよ。見舞いに行くたびに彩奈ちゃんから『お父さんをお願いします』って言われてさ、それに俺に取っては命の恩人なんだ。もし、君のお母さんが親父さんを支えてくれるんだったら、俺は気持ちよく諦めるよ。いや、むしろ、君のお母さんを応援したい』

『僕も、愛奈さんが亡くなる前に、『お父さんをお願い、死ぬかもしれない』って……』

『そうか…… 何か、何か支えになるものがあればって思っていたんだ。君のお母さんにかけるよ。俺も協力するよ。だから頼むよ。二人が付き合うことになっても大丈夫か?』

『そ、それは、うれしいです。僕が今信じられる大人は、島田さんと中野さんだけですから…… それに母さんが頑張ることで、中野さんが生きようって思ってくれるんだったら、彩奈さんとの約束だって守れるから……』

『そうか、ありがとう、何とか二人をくっつけようじゃないか』

『はい、よろしくお願いします』


 そして電話を切ると間もなく亜紀子が帰って来た。

「ただいまー」声がとても明るい。

「お帰り、嬉しそうだね」

「純也、母さん、モテキが来たかも……」

「はあー、断ったんだろ」

「えっ、電話があったの?」

「うん、でも中野さんをどうにかするのは大変そうだね」

「大丈夫よ、島田さんがね、何か作戦を考えてくれるって、とりあえずね、母さん明日から、おばあちゃんに肉じゃがの作り方、教えてもらうことにしたの」

「あっ、そういえば中野さん、肉じゃがが大好きだって…… 彩奈さんが言ってたような……」


 そして、初七日の法要が済んだその夜、島田が中野を訪ねた。

「親父さん、見舞いに行くたびに彩奈さんに、『お父さんをお願いします』って頼まれて……」

「そうか、あの子が……」

「変なこと、考えていないですよね」

「何だそれ…… 」どきっとした彼はとぼけたが

「純也君も、亡くなる間際に、『お父さんをお願い、死ぬかもしれない』って……」

「……」

「親父さん……」

「島ちゃん、人生っていうのは皮肉なもんだなー…… 悪いことして罪を逃れている奴だって、奥さんがいて、子供がいて、孫だっている奴がいる。家族がいるのに、俺にはもう何もない。俺は知らないうちに何か悪いことをしたのかもしれないな……」

 彼が遠く一点を見つめて語ると、嫌と言うほどその悲哀が押し寄せてくる。

「親父さん、何を言うんですか、親父さんみたいに人間を大事にする人は見たことないっすよ、だから、罪を犯しても償った人間は、親父さんの所にあいさつに来るじゃないですか、あいつらは皆、親父さんに感謝して再出発しているんすよ。そんなこと、言わないでくださいよ」

 島田が唇をかみしめる。


「でもな、早くに陽子が亡くなってしまって、彩奈まで逝ってしまった。なんのために生きていくんだよ。教てくれよ……」ふっと顔を上げた中野の目に涙があふれる。

「親父さん、お願いだ、そんなこと言わないでくださいよっ、きっといいことだってありますよ、もし親父さんに死なれたりしたら、俺は冷静じゃいられないっすよ」島田は涙にぬれた目を上げて懸命に中野に訴えた。

「ありがとうよ。お前には本当に感謝しているよ。もう俺が願うのは島ちゃんの幸せだけだよ」

「親父さん、死んだら駄目だ。誰が愛奈さんや奥さんのお墓に参ってあげるんですか、生きないと駄目だ、お願いだ、俺は生きていて欲しい、お願いだから変なこと考えないでください。お願いだ」

 子どものように涙を流しながら懸命に訴える島田の思いが痛いほど突き刺してくるが、中野はもうこの世に未練はないと思っていた。


 しばらく沈黙があったが、

「おい島ちゃん、ところで純也君の母親とはうまくやれそうか、気に入ったのなら、所帯を持て、お前にかけているのは守るものだ、お前に守らなきゃならないものができたら、最強だ」

 中野が突然思い出したように話題を変えた。


「何言ってんすか、振られましたよ」島田が顔をしかめると

「ええっー、島ちゃんが振られたのかっ!」中野の驚きは尋常ではなかった。

「信じられないっすよ。でもね、話を聞いて納得しましたよ」

「ほっー、男と女のことはよくわかんねーな」

「あの人はね、親父さんに寄り添ってあげたいらしいですよ」

「ぷっー」水を飲もうとペットボトルを口にくわえた中野は吹き出してしまった。

「親父さん……」

「おい、年寄りをからかうんじゃねーよ」中野が苦笑いをすると

「親父さん、例えばね、三十代の女を十人並べてね、俺と親父さんのどっちがいいって尋ねたら、十人がみんな俺だって言いますよ。絶対に自信がありますよ」彼が話し始めた。

「そりゃそうだろうよ、若いし、イケメンだし、金も持っている」

「でもね、あの人は親父さんがいいって言ったんですよ」

「島ちゃん、同情しているだけだよ」

「あの人も大切な人を亡くしてますからね、そりゃ同情もいくらかはあるかもしれません。でもね、あの人は外見じゃなくて、人間を見たんですよ。人間を見られたら親父さんにゃ勝てないっすよ」島田が首を傾げると

「おいおい、よしてくれ、俺は四十八だよ、もう女がどうのこうのと言う歳じゃねーし、あんな若い女、相手に出きねーよ」中野も眉をひそめた。

「お親父さん、歳じゃないですよ、魂に魅かれてんだからどうしようもないですよ。俺だって、相手が親父さんじゃなければ諦めませんよ。でもね、あの人だって生きていく希望が欲しいんですよ」

「希望って言ったって、島ちゃんが希望になってやればいいじゃねーか」

「この前、一緒に食事していろいろ話を聞いたんですよ」

「あの小山とのことか?」


「ええ…… ご主人が亡くなった後、半年ほどした時に、跨線橋から飛び降りようとしていた男性に声をかけたらしいです。その男性は妻を亡くしたばかりで、医療費のために五百万くらい借金があって、話しているうちに気の毒になって貸してあげたらしいです。お互いに寂しい者同士、一緒に食事をしたり…… でもある日、実家で暮らす母親が倒れて、秋田に帰ったらしいです。最初は、お金は返すからって言っていたんですけど、母親が亡くなると彼も命を絶ったそうで、最後の手紙は涙でぬれていたそうです」

「そうか……」

「そんな時、行きつけのカフェで、小山と知り合って、最初は紳士的来な男で、時々、コーヒーを飲みながら話したらしいです。でもある日、食事に誘われて、どうも薬を飲まされたみたいで、気が付いたらホテルの一室で強引にやられてしまったらしいです。その後、家に来るようになって…… でもね、あの小山は驚くほど悪知恵が働きますよ。彼女がある日、駅でチンピラに絡まれて、バックを取られて、免許書をみたそのチンピラが、桜町の佐久間って、もしかしたら小山さんを知っているかって聞いてくるもんで、よく家に来るって言ったら、そのチンピラに『お願いだから黙っていてくれ、殺される』って泣くような顔して頼まれて、彼女はその時、あんな男でも役に立つことがあるんだって一瞬はうれしかったらしいです。 仕組まれたんでしょうね」

「ふーん」

「そのあとも、彼女の前でよく電話をしていたそうです。誰かを殺ったのかとか、重しをつけて海にしずめろとか、山に埋めたとか、高校生の息子もぼこぼこにしろとか…… おそらく空電話だったのでしょうが、彼女は恐ろしくなって逆らえなかったらしいです。とにかく素人が恐れるような話をよくしたらしいです。彼女も純也君のことがあったから言いなりになるしかなかったんですけど、もう警察に行くしかないって思っていたころ、純也君が株でもうけさせるようになって、小山の様子が少し良くなってきたので、とりあえずは安心して様子を見ていたらしいです」

「そうか…… 頭の悪い女には見えなかったもんな、そうか…… そんな事情があったのか……」

「親父さん、相当な苦悩があったと思いますよ。もう男が信じられないだろうし、だけど親父さんには寄り添いたいって思ったんですよ」

「ふーん…… お前から上手に断っておいてくれ、仮にそれが真実だとしても、とてもそんな気分にはなれない」

「だめですよ、それは親父さんの口からはっきり言ってあげないと…… 思われた男の責任ですよ」

「ふーむ、めんどくせーな、だから男と女の話は嫌なんだよ」

「まっ、近いうちに食事に招待したいって言ってましたから、その時に、親父さんの口からお願いしますよ」


 そして、その週の土曜日、純也が中野の家を訪ねた。

「なんか、株のことなんて忘れてましたけど、結局、三日目の朝もストップ安で始まって、その日の引け間際に処分しました」

「もういいよ、全部、君にあげるよ」

「ちょっ、ちょっと待ってください。そんなわけにはいかないですよ」

「……」

「結局、八百九十円で買い戻して、三千四百八十八万五千円の利益です。二十%は税金で持っていかれますから、約二千七百六十万くらいですか」

「おっそろしいなー、まじめに仕事すんのが馬鹿みてーだな」珍しく中野が苦笑いした。

「私も、約四千万くらいの利益が出ました」

「信じられないけど、こんな世界なんだなー」


( もう少し早く君に会えていたら、彩奈は助かっていたのかもしれない…… )

 中野はそう思ったが、この思いは口には出さなかった。


 その後、純也から翌日の日曜日の食事に招待された中野は、不承不承ではあったが、島田から言われていたこともあってそれを了解した。


 その翌日、午後六時、島田に連れられ中野がやって来た。

 中野が酒を飲まないため、すぐにテーブルに食事が並べられた。

 彼の大好物の肉じゃがに、ほうれん草の胡麻和え、ネギがたっぷりの甘い卵焼き、みそ汁は赤だしに玉ねぎが入っているだけのものだった。

 最近はほとんど食欲がなく、食事らしい食事はとっていなかった中野だが、これだけの好物を並べられると、さすがに食が進んだ。

 

 とりとめのない話に花が咲き、中野は一瞬の安らぎに涙が出そうになったが、懸命にこらえ

「佐久間さん、お話しておきたいことがあります」

 食後のコーヒーを飲みながら中野が姿勢を正した。

「はい」亜紀子が目を輝かせる。

「島田君から気持ちを聞かせていただきました」

「はい」

「とてもうれしかったです。たとえ、同情であったとしてもとてもうれしかったです。でも、私にはそれに応えてあげるだけの、若さも精神的な余力もないです」

中野が目を伏せると

「いいですよ。応えてくれなくてもいいですよ」

「えっ」島田と純也は驚いて亜紀子を見つめた。

「応えてくれなくてもいいですから、一週間に一日だけ、ここに食事に来てください。お願いです。結婚して欲しいとか、一緒に生活したいとか、そんな無理は言いません。一週間に一度だけでいいんです。もし中野さんが来て下さるのだったら、私は一週間、下を向かずに希望をもって生きていくことができます」

「佐久間さん、あなたはまだ若い、もっといい人がいますよ」

「いいえ、もうこりごりです。これからは信頼できる方と関わりたいです」

「だったら、この島ちゃんの方がよっぽどお似合ですよ」

「島田さんがとても素敵な方だということはよくわかっています。でも私の心は中野さんに寄り添いたいんです」

「それは同情ですよ、何もなくなってしまった私への同情ですよ」

「私は、そうは思いませんが、もしも同情だとしたら駄目なんですか? 私も大事な人を失いました。だから中野さんの気持ちがよくわかります。気持ちが分かり合える中野さんに寄り添いたい。私はそう思っているだけです」

「佐久間さん…… 」中野は一瞬亜紀子を見つめたが、すぐに目を伏せてしまった。


 傍らで、初めて女性としての母親を見た純也は、頭の中が真っ白になってしまい、ただ成り行きを見守っていた。


「あんな小山みたいな男に関わってしまって、誰かを信じるとか、愛するとか、そんな気持ちは忘れてしまっていました。私の中には、ただ、恐怖と憎しみだけしかありませんでした。でも、あの日、中野さんが来てくれて、娘さんが亡くなってしまって、どん底にあったはずのあなたが来てくれて、この人のそばに居たいって思ったんです。夫が亡くなって以来、こんなことを思ったのは初めてなんです。だから、だから、お願いです。一週間に一度だけでいいんです。お願いです」亜紀子がすがるような眼差しで中野を見つめたが

「……」彼は俯いたまま顔を上げなかった。


「親父さん、亜紀子さんはね、親父さんが来てくれるんだったら、その日を心待ちにして、一日一日を大切に生きていくことができるって思っているんですよ。わかってあげてください」

「島ちゃん」中野が顔を上げて島田に目を向けた瞬間

「中野さんは、もう死んでもいいって思っているんですか?」亜紀子が中野の思いを突き刺した。

「えっ、そ、そんなことは……」驚いた彼は目を見開いて、彼女を見つめたが、あまりにも透き通った眼差しに固まってしまった。

「うそ、考えていますよね。でも中野さん、死ぬのはいつだってできるんですよ」

彼女の渾身の思いが伝わってくる。

「す、すごいこと言いますね」思わず島田が口を挟んだ。

「私だって一瞬、考えましたから…… ただ、この子がいたから思いとどまりましたけど、その時、思ったんです。死んだら終わり、でも生きていればいつだって死を選択できるって…… 」

中野は俯いたまま、目を閉じて聞き入っていた。

「……」

「親父さん」

 島田は

( そんな思い、俺にはわからない、生きていれば死を選択することができるなんて、俺にはわからない、でも、この二人にはわかるのか、だから俺じゃなくて親父さんがいいのか…… )

 そんなことを思っていた。


 しばらく沈黙があったが

「佐久間さん、ありがとう。同じような思いを持ったあなたには見透かされているんでしょうね。正直言って、もう生きることの意味が分からなくなっているんです。でも、四十九日迄は、と思ってただ生きながらえていただけなんです。だけど、あなたの言うとおりだ、生きていれば選択ができる。寿命が尽きるまで頑張れるかどうかわかんないですけど、でも、生きてみます。明日のことはわかんないけど生きてみますよ」

 中野の瞼には涙があふれていた。


 その後、三ヶ月、中野は週に一度、佐久間家に足を運んだ。

 純也は、彼の訪問を心待ちにして、何を作ろうかと微笑む母親を見続けて、

( 中野さん、結婚してくれればいいのに )と思っていたが、二人の関係が進展することはなかった。

 しかし、三ヶ月が過ぎた頃、島田から中野が盲腸で入院したことを知らされた亜紀子は病院に駆け付け、入院に必要な手続きをすべて行い、その書類には、妻、亜紀子と記した。

 中野の妻が若くて美人だという噂があっという間に広がり、それを耳にした彼は、

「あの人は俺の人生をわかってくれているのかもしれないなー」そんな独り言を言いながら目を閉じると、亡くなった妻と娘が微笑む姿が瞼に浮かんだ。

                              

   完


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