九
正月明けて三日、羽生邸では去年に引き続き、留緒の姉たちが会食の手伝いに来ていた。
「今年……じゃなくて去年はね、留宇ちゃんも留恵ちゃんもかたづいたんだよ」
「こら、人を物みたいに」
「でもかたづく、っていい言葉なのよ。留緒がかたづいたときも、かたづいたって言ってあげるわよ」
忙しく立ち働きながらも姉妹はすれ違いながら会話を弾ませていた。井戸さらいに大掃除と、年末は大いに働いた色吉は、広間でごろごろしつつ姉妹の会話に合いの手をいれたり相槌を打ったりしている。
「それで、留緒はいつかたづくんですか」
留亜が色吉に言った。
「さあ、いつなんでしょう。あっしに訊かれましても――」
留緒が通り過ぎざま、色吉の背中を蹴とばしていく。
「そんなことより、太助親分はどうしたんでい」
根吉と卒太が先にきて、なにか手伝うと言ったが、かえって邪魔だからなにもしないでくれと言われて、色吉といっしょにごろごろしていたところだったのだ。
「へい、なんでも寄っていくところがあるとかなんとか」
そこに留恵がやってきて、「太助親分さんがいらっしゃいました」と案内してきた。
見ると太助はうしろに女と女の子を従えていた。
「お」
「まあ」
「ほほ、よくいらっしゃいましたな。さあ、こちらにお座り」
色吉と留緒は驚いたが、歩兵衛は知っていたらしく、みずから接待してやる。
「お常と、その息子の玉吉でやす」
女の子が息子と聞いて、色吉は好奇の目を向けそうになったが、歩兵衛はにこにことうなずくだけだった。
「近いうちに、所帯を」
さすがに太助も神妙に頭をさげる。いっしょにお常と玉吉もだ。それから玉吉が、
「ほんとはあたしが太助親分のお嫁さんになってあげようと思ってたんだけど、おっ母さんじゃしかたない、譲ってあげたのさ」
と言ったから、みな笑った
「太助親分もかたづいた、ってことかい。まあとにかく正月早々めでてえこと、一杯やんねえ」
色吉が言うと、留緒が、
「それで、色吉さんはいつかたづくんですか」
「さあ、いつなんだろうな」
留緒は色吉の背中を蹴とばす。
そこに留宇がやってきて、「そろそろです」と言った。
色吉、太助とその子分たちが立ちあがる。今年も田尻荘内殿が手ずから沈世双六を運んできてくれるのを、これから出迎えるのだ。
双六遊びには、理縫と留緒たち姉妹のほかに、今年は玉吉も加わることになりそうだ。
〈了〉




