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【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
本編

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第134話 あの人はもう忘れていますよ

「これは処分、こっちは……困りましたね」


 メフィストは牢内のゴミを分類する手を止めた。眼鏡の縁を指先で弄りながら、手元の書類と牢内の捕虜を見比べる。


 魔族にとって最大の祝事は魔王の交代だ。それに並ぶ慶び事は、魔王妃を娶る婚姻だった。世襲制ではない魔王は、子供が生まれることより番を重視する。次の魔王は勝手に生まれ、強者が台頭するのが慣しだった。そのため我が子に重責を負わせる教育は不要であり、番に対するほど興味も持たない。


 イヴリースも同様だろう。部下達も次の魔王に仕える気がなければ、退任する権利が認められていた。あくまでも一代限りの魔王なのだ。そんな魔王が妻を娶る日は、罪人に恩赦が与えられるのが恒例だった。


 先日もある程度掃除したが、まだ大量に残った罪人をどう処分したものか。魔王が留守にしたのを幸いと、宰相メフィストは己の決めた基準で処分していた。叱られるのではないかと心配する周囲に、彼はけろりと言い放った。


「あの人が直接手を下さない罪人は、もう忘れられているんですよ」


 飽きっぽく激しやすい主君の性格を思い浮かべ、城の守りに残ったゴエティアや魔王軍の面々も納得する。絶対に譲れない罪人なら、とっくにその手で引き裂いて終わらせていた。他人の手で嬲り殺すことを容認した時点で、もう興味が失せた玩具なのだ。ならば牢内の不要物に恩赦を与えることもあるまい。


 わかりやすいメフィストの結論に、ダンダリオンを含めた数人が手伝いを申し出た。魔王の影武者を引き受けたダンダリオンは、外で行われる戦に出向くことが出来ない。滅多にないチャンスを逃してたまるかと、真っ先に立候補した。


「この辺は全部処分対象ですが……この牢の人間は、困りましたね」


 アゼリア姫絡みの獲物だ。ユーグレース国の王太子とその取り巻きは、勝手に処分するには難しい玩具だった。処分した後で、あれはどこにあった? と思い出される危険性がある。勝手に処分したとなれば、さすがに機嫌を損ねるか。


 メフィストの懸念を察したバルバドスが、さらりと言い切った。


「人間はこの際、捨てたら? 恩赦の対象に相応しくないし、戦う陛下の前に置いてくればいいじゃん」


 陛下自身が処分すれば問題ない、軽い口調でそう提案された。なるほどと思う。牢内に仕舞い込むから忘れるのだ。だったら目の前へ並べて処分の内容を問えばいい。忘れていて瞬殺したとしても、自分自身の行動なら八つ当たりも少ないだろう。


「では運ぶのは私が……ここからここまで処分していいですよ」


 ばさっと罪人リストを渡して、バルバドスやダンダリオンに処分を依頼する。残される罪人はほんの僅かで、たいした罪ではなかった。恩赦の対象をゼロにするのは、外聞が悪い。そのため多少は残して解き放つのが正解だ。残酷な命の計算をさらりと終えた宰相に、バルバドスは目を輝かせた。


「ありがとう! 久しぶりに遊べる!!」


「俺にも分けろ」


 ごそごそと書類を確認し始めた彼らに、残った連中で分けて仲良く遊ぶよう言い聞かせ、メフィストは牢の端に身を寄せた人間に目を向ける。山羊の角をもつ魔族に暗赤の瞳で睥睨され、元王太子ヨーゼフはがたがたと震えた。

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