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【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
本編

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第114話 人前ではダメよ!

「仲良くなれそう」


 アゼリアがそういうなら、文句はない。そもそも義兄の妻など、普段は接点がない相手だった。アゼリアかそれ以外、大雑把な括りで態度を分けるイヴリースにとって、彼女の実家が居心地の悪い場所にならなければ問題はなかった。


「獣人、人間、魔族……うちは他種族国家になりそうね」


 準備したお茶を差し出しながら、カサンドラが微笑む。アゼリアが焼いた素朴なスコーンが並び、歓待に目を輝かせるヴィルヘルミーナが遠慮なく口に運んだ。そんな彼女達を見守る、それぞれの婚約者や夫の目は優しい。


「この国を攻める愚か者はいまい」


 魔王イヴリースが言い切ったことで、ほぼ確定となった。この土地を欲しがる国がいるとしたら、魔国サフィロスくらいなのだ。


 南側を支配する人間の国と、北側に位置する魔族や獣人族の間に位置するクリスタ国の価値は、右肩上がりだった。通常は国の価値や評価が上がると、周辺国から攻め込まれたりするのだが……クリスタ国に関してはその心配がない。


 公爵領の頃から開拓した豊かな農地、森の丘にある鉱脈、森林資源、そして交通の要所という立地条件は羨ましがられる要素ばかりだ。しかし魔国サフィロスや獣国ルベウスの軍事力の脅威に晒されるという意味で、人間にとって旨味は相殺された。


 命あっての物種なのだ。だが、魔王イヴリースにクリスタの王妹であるアゼリアが嫁ぎ、クリスタ国王ベルンハルトとルベウスの公爵令嬢ヴィルヘルミーナが婚姻を結べば話は別だ。各国は血縁関係を持つこととなり、互いの利益を図りながらバランスを取るだろう。


 難しい政治の話を理解するヴィルヘルミーナは、覚悟していた。いくら王姉のカサンドラが住む国であろうと、自分は人質だ。きっと同等の扱いは受けられず、お飾りの妻になることを。


「ヴィルヘルミーナ嬢、こちらもいかがですか。木苺のジャムです。甘さを控えてありますから」


 獣人の敏感な味覚を理解し、気遣ってジャムを差し出すベルンハルトに好感を持った。話の合間に、この木苺はベルンハルトとアゼリアが摘みに行ったと聞く。庭を抜けた先に広がる森は豊かな果実の宝庫で、そこを駆け回った話は頬が緩んだ。


「私は獣人でしょう? だから屋敷は暮らしやすいと思うわ」


 カサンドラが言う通り、屋敷内の者は耳や尻尾をじろじろ見たりしない。他国へ出たことはなかったが、自国へ来た使者は礼儀作法を叩き込まれていても耳や翼などの特徴に目を丸くした。珍しそうに見られた気分の悪さは、今も覚えている。この屋敷に来て、一度もそんな思いをしていないことに安堵した。


 この屋敷なら、安心して暮らせるでしょう。ぴんと立てていた耳がゆるりと傾く。気が緩んだ彼女の様子に、アゼリアの尻尾が大きく揺れた。愛おしそうにその毛皮を撫でるイヴリースが、耳の先に口付ける。


「きゃっ、イヴリース! 人前ではダメよ!」


「人前じゃなくてもダメだ!!」


「うるさいわ、あなた。婚約者なのだから構わないでしょう。もう諦めなさい」


 首を竦めた娘アゼリアを見て反射的に文句を言ったアウグストに、妻カサンドラが釘を刺す。日常の風景が広がるお茶会のテーブルで、ヴィルヘルミーナはくすくすと笑った。


 この幸せな家庭に嫁ぐなら、私、幸せになれそうだわ。婚約者となるベルンハルトの視線に気づき顔を向けると、蕩けるような甘い眼差しと微笑みに鉢合わせする。頬を染めたヴィルヘルミーナへ伸ばしかけた指をぎゅっと握り込んで我慢する兄に、アゼリアは心の中で「真面目すぎるんだから」と呟いた。

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