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【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
本編

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第101話 すれ違う思惑と焦燥

「少し休みなさい、顔色が悪い」


 妻を心配して声をかけたアウグストに、カサンドラはきゅっと唇を噛んだ。最後に目にしたのは数日前、あんなに衰弱した娘の姿なのに。心配しないのは無理だった。


 魔王イヴリースが動き連れ去ったのだから、何か勝算があるはず。そうでなければ、隣でずっと手を握っていただろう。だから平気、生きているし元気になったわ。自分に言い聞かせてカサンドラは、夫に頷いた。


「そうね、でも何か知らせがあれば」


「ああ。もちろん真っ先に知らせる」


 目を見て約束した夫を信じ、カサンドラは立ち上がる。くらりと眩暈に襲われ、アウグストの腕に倒れ込んだ。膝の下と腰に手が回る感触に、慌ててカサンドラはアウグストの首に腕を絡めた。ふわりと抱き上げられる。


「やだわ。重いでしょう?」


「いや。美しい妻を抱き上げた感激で、羽のように軽い」


 母を心配する気持ちはあって手を伸ばしたが、父に譲りもした。妹の容体が不明の状態で、一緒の部屋にいたのに……口説き合う両親の何を見せられているのか。気恥ずかしさに目を逸らす。


 執務の合間を縫って駆け付けたベルンハルトは、複雑な思いで息を吐いた。溜め息にしないよう、細心の注意を払って細く長く。それから顔を上げて、ベッドに寝かされた母カサンドラに歩み寄った。


「母上、もう3日目です。そろそろ吉報が届くでしょう。ご安心ください」


 泣きそうな笑顔を作ったカサンドラだが、横たえた彼女の目元をアウグストは手で覆い隠した。涙を見せたくないのか、そう考えて数歩下がったベルンハルトだが、すぐに違うと気づいた。父は母を眠らせようとしているのだ。温もりと慣れた匂いに安心したカサンドラの肩から力が抜け、すぐに寝息が溢れた。


 気持ちは張り詰めていても、身体は限界だった。もう無理だ、これ以上は待てない。魔国が離れていようと、そこまで厳しい道のりであろうと構わなかった。魔王イヴリースに直談判に行く――その決意に、アルブレヒト辺境伯やヘルマン男爵が名乗り出た。


 他の貴族に比べて遅参したヘルマン男爵だが、手土産と称してユーグレース国の領地を大きく削り取った。おかげで、クリスタ国建国時の領地は森を含めれば、ユーグレース国と比肩する大きさである。


 建国は、妹アゼリアの不調があり宣言のみ行った。だが……他国との外交を始めるにあたり、何らかの形で国をあげた大祭を開催すべきだろう。すでに準備はさせていた。自分が出向きたいベルンハルトだが、外交がある。国王となる以上、役目を放り出せなかった。


 アルブレヒト辺境伯とヘルマン男爵には、祭りの騒ぎの中、妹のために動いてもらう予定だ。多少腕に覚えのある者を派遣しても、途中で殺されてしまう。武人として名高い彼らなら、十分に森を抜ける実力があった。しかし不在を知られると、他国に弱みを見せることになる。


 祭りの浮かれた雰囲気の中なら、気づかれずに彼らを動かせるはずだ。決意を秘めたベルンハルトの作戦を聞き、アウグストは後ろで眠る妻を振り返った。


 自分が動きたい、今の妻を置いては動けない。葛藤の末、アウグストも残る決断をした。娘は何物にも替えがたい大切な存在だ。しかし……妻は己の半身だった。断腸の思いで許可を出す。


 ――建国祭まで、あと2日。

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