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頃那蓮宗心経

作者: 旭 与五郎

本書は、拙著『奥武信利教の福音書』のスピンオフ作品となっております。一部、そちらを読んでいないと通じない冗談がありますのでご了承ください。令和2年3月、コロナショック時に書いています。

頃那上人は、四箇条の格言を仰せられた、それは、四復無間、卯国賊、奥伝馬、及び信言亡国である。

頃那上人は、群れる者、掃除を怠る者、意味もなく長距離を移動する者、及び似非科学を標榜する者は、必ず地獄へ落ちるのだと説いた。例えば、ここ数日のうちにトイレットペーパーが不足するという事実無根の言論を、あたかも科学的に根拠のある事実であるかのように標榜した者は地獄へ落ちるのだ。

そして、世の中に悪人数あれど、その中で最も確実に地獄へ落ちるのは、狂信的な信徒によって尊師と称される奥武信利である。彼は悪魔の預言者である。彼だけは、たとえあなたが明日宝くじで十億円当てようとも、必ず地獄へ落ちるのだ。

悪魔の預言者、極悪人奥武信利は、似非科学を標榜し、多くの公立高校生を信者として従えた。その天罰として、現在、役所から汚れ仕事を押し付けられているのだ。奥武信利教信徒はこれが贖罪だと主張しているが、決してそんなことはない。これは奥武信利を地獄へ導くステップなのだ。役所から上意下達で、「休校すれば悪魔が退散する」という似非科学を標榜する汚れ仕事を任され、卒業式中止を自らの口で生徒に伝えねばならないのだ。これは大変な悪行である。なぜなら、卒業式とは、青春を生きる若者にとって大変重要な通過儀礼だからだ。生徒たちの青春を奪い、しかもその手段として似非科学を標榜した彼が、地獄へ落ちないはずがない。彼は無間地獄よりさらに下の頃那地獄へ落ちる運命なのだ。

それでは、奥武信利に従って狂信的な行いをした信徒たちの運命はいかなるものであろうか。それを説明したのが、四復無間と卯国賊である。

奥武信利教信徒は、エビングハウスの忘却曲線を神聖とするその教義に従い、四復を行動に移している。たとえば、富士山を四回見るために意味もなく東京大阪間を二往復したり、公共のピアノでショパンのノクターンを四曲弾いた後で鍵盤を消毒しなかったりする。そうした行いに対する死後の審判は、四匹の犬に四肢を引きずられて行く無間地獄である。これが四復無間の教えである。

さらに、彼らは、奥武のもとを卒業した後で卯通勤を行う。すなわち、個々人の生理的性質がいかなるものであろうと、子の刻に就寝し、卯の刻に起床し通勤するのが、彼らの言う神への帰依なのだ。卯の刻に一斉に起床して通勤することによって、国鉄車両は重量が過剰になる。そして彼らはその重量によって過大な遠心力を生じさせ、国鉄を脱線させるのだ。したがって彼らは国賊以外の何者でもない。これが卯国賊の教えである。

さて、地獄に落ちるのは奥武信利教信徒だけではない。その教えが奥伝馬と信言亡国である。

奥伝馬とは、これはまた言葉にしづらい教えである。家の奥にこもって悪魔の邪気をさけて「テレワーク」なる仕事の仕方をしていれば、伝馬のお告げを受けることができるというのだ。その伝馬のお告げとはいかなるものであろうか。地獄に落ちることと、どのように関係しているのだろうか。こればかりは、実際に試してみる以外に方法はない。男性が陣痛の感覚を一生経験できないのと同様で、言葉で表すことはできないのだ。そして、その伝馬は、家の奥で仕事の書類を作成していようと、武士を操作していようと現れるというのだから謎である。これが奥伝馬の教えである。

繰り返しになるが、似非科学はこの世の最も重い罪悪であると頃那上人はおっしゃった。世の中には、科学的にきちんと考察すれば誤りであることが一意に導かれる事実を、巧妙に論理の筋道を組み立て、あたかも科学的に正しいことであるかのように見せかけようとする動きがある。これを似非科学という。たとえば、国の重要な決定事項を公共の電波で発信して言うにあたり、「専門家会議を開いた上での決定だ」と、どこのだれだかわからない、どのような根拠に基づくのかわからないなにがしの専門家に聞いたとすることは似非科学の一例である。このような行いを行った者は、自らを利するにあたり、もはやミスター・ビーンと共に外国へと亡命する運命以外は存在しないのだ。これが信言亡国の教えである。

しかも、そのなにがしによれば、十日と十日を合わせると十日になるのだという。したがって、似非科学の教えに従えば、「これから十日間が正念場だ」と言ったその十日後に「これから十日間が正念場だ」と言うことは合理的なのだ。

さて、これらの行いをしないように十分注意していたとしても、誤って悪魔の邪気を取り込んでしまえば、地獄行き待ったなしである。それでは、こうした悪魔の邪気を追い払う方法はないのだろうか。頃那上人は、その解決策とは「舐めたら法華経」なのだとおっしゃった。インフルエンザと対比してみよう。インフルエンザの邪気は空気を介して伝わることができる。そして、空気を介してインフルエンザの邪気を取り込んだ場合、たしか、タミレンザ、だっただろうか。そのような薬を飲むことで邪気払いができる。すなわち、インフルエンザの邪気払いの鉄則は「吸ったらタミレンザ」である。「吸ったらタミレンザ」の教えを守らなかったことにより地獄へ落ちた人数は今は問題ではない。悪魔の邪気は空気に浮くことができるほど軽いものではない。したがって、最低でも舐める程度の過ちがなければ悪魔の邪気は侵入できない。そして、舐めてしまったら、邪気払いをする唯一の方法は、法華経を唱えることなのだ。法華経こそが仏様の教えを正しく伝える正典なのであって、それに反するものはすべて地獄への案内図だと認識すべきである。

さあ、毎朝毎晩、法華経を唱えようではないか。

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