第九死合い 刀
今朝も早くから鍛錬に励む二人の姿があった。
「なあ幸村! 村の見回りに、ついて行ってもいいか?」
「なぜ?」
「帰る方法を探したいんだ!」
「そうか! いいだろう。ずっと居候されたままではたまらんからな!!」
「邪魔者扱いかよ~」
「それよりレンジ! まさかその棒切れ持って行く気じゃないよな?」
「他にもってねーけどな!」
「遊びじゃないんだ! 時には命のやり取りにもなる。足手まといはごめんだ!」
「だったら、どうしろってんだ?」
「せめて自分の身は自分で守れる様に、刀位もってけ!」
「刀なんか持ってねーし!」
「ほら、あそこに蔵があるだろ! あの中から好きな刀選んで来い! 貸しといてやる!!」
「マジか!!」
レンジは幸村に言われて嬉しそうに蔵へ向かい扉を開ける。
(ギィーギギギギ)
蔵の中はかび臭く、隙間から漏れる光にレンジが入ったことで巻き上げられた埃が光の筋の中に写し出されていた。
(うわ、すげ~。かっけー!!)
蔵の中には槍や刀、鎧兜が所せましと並べられていた。
博物館に来た感じで武具を見て回っていた。
(あっ、やべ~。幸村を待たせているんだった・・・)
刀が立てかけてある一角に立ち自分に合った刀を探す。
刀と言っても色々な種類があり、レンジには到底扱えないような巨大なものまであった。
(どれにしようかな~?)
色々手に取った、
(これだ!!)
レンジが手にした刀は、並んでいた刀の中では、一番短く小柄のレンジには丁度良かった。
レンジは選んだ刀を手にして幸村の元に戻った。
槍の鍛錬を続けていた幸村は手を止めレンジが選んできた刀を見て、
「それにしたのか?
その刀は俺が昔使っていた物だ!
叔父上が伊勢参りの帰りに、お土産で買ってきてくれた物だ。
大切に使えよ!!」
「お土産って? えらく物騒なお土産だな・・・
修学旅行のお土産で木刀を買って帰るあれか~?」
手にした刀を鞘から引き抜く。
刀は朝日を反射してその光がレンジの目に飛び込んでくる。
(かっけー)
抜き身の刀に見とれているレンジに幸村は、
「お前、それ振れるのか?」
「バカにするな!! 小さい頃から剣道で鍛えてるっつーの」
レンジは刀を握り素振りを始める。
刀なんて扱った事が無いレンジは戸惑った。竹刀とまるで違い、重量によって振った刀に振り回される感じだ。
振り下ろした刀を止める腕にずっしりと負荷がかかる。
気を抜くと、振った刀で自分の足を切ってしまいそうな感じに気が引き締まる。
いつもは素振り1000回でもさほど苦にならないレンジも、そんなに振っていないのに額から汗がしたたり落ちる。
「レンジ! 朝飯済ませたら出かけるぞ!!
それに、その変な恰好どうにかしろ。
俺の子供の頃着ていたのが残ってるはずだから、富子から受け取れ!!」
「おっ。おう!!」
村の見回りに出かける為、朝食をかけこむレンジと幸村であった・・・・・・
昔うちにあった模造刀を、ポーズを決めて振り回していた記憶がありますが、かなり重かったです。^^