第八死合い 鳥鍋
真田家の台所で喜助と富子の手伝いをしているレンジ。
レンジは穴の空いた竹の筒で、竈の火に一生懸命空気を送っていた。
(ケホッ・ケホッ)
レンジは竈から立ち上る煙と格闘していた。
富子が喜助に話しかける、
「あんた、今朝は卵一つだけかい?」
「この頃白の奴、全然生まんのじゃ」
「もうだめかもしれんね」
「そうじゃのう、仕方ないから潰すか?」
「じゃあ、今夜は鳥鍋でもしましょうかいの」
二人の会話で鳥鍋に反応したレンジは、
「いいっすね、鳥鍋。うちでもよくやってました。
俺、それくらいなら出来るんで、任せてください!」
その言葉に喜助は、
「ほう、ならまかせるぞ!」
「はい!」
レンジはさっそく調理に取り掛かる。
喜助はレンジが手伝ってくれると言うので、安心して村に酒を買いに出かけた。
手際よく野菜を刻むレンジを見て富子は、
「へー、なかなかじゃないの!」
「俺、うちでは全て自分でやってたんで・・・」
「これなら任せられるわね、私は洗濯でもしてこようかね」
「はい、ところで鶏肉の方は?」
「鶏肉は白い奴、潰しといて」
「白い奴?」
「外にいる白い方のニワトリだよ。
くれぐれも間違えないでね、白い方だよ!」
そう言って富子は台所から出て行った。
レンジはスーパーでパック詰めの鶏肉を想像していたが現実は違った。
外に出て、白いニワトリを捕まえるべく、格闘する。
「逃げるなよ~、ジロー。素直に捕まってくれよ~」
どうにかこうにか白いニワトリを捕まえる事に成功したレンジは、
「で?・・・・・・」
ニワトリをさばいた事のないレンジは、ニワトリを胸に抱いてうろうろしていた・・・・・・
洗濯物を干しに庭に出て来た富子は、
「なにやってんだ? まだ絞めてないんかね!」
そう言ってレンジの元にやってきた。
「あの~・・・絞めるって?」
「ニワトリの絞め方も知らんのかいね!」
「すんません、やった事ないんで」
「不思議な子だね、全く。包丁さばきはなかなかなのにね~」
そう言ってレンジの手からニワトリを受け取りさばき始めた。
レンジの目の前でニワトリは手際よくさばかれる。
(うっ、うえ~)
魚をさばく事は朝飯前のレンジだが、生きたニワトリをさばくのは初めて見るので気分が悪くなった。
「はいよ!」
さっきまで元気に走り回っていたニワトリが、肉の塊になってレンジの手に手渡される。
「ジ、ジロー・・・美味しく食べてやるからな!」
台所に戻ったレンジは鶏肉を綺麗に切り分け、鳥鍋を完成させた。
丁度酒の買い出しから戻った喜助が、
「なかなかじゃのう、綺麗に盛り付けも出来ておる!」
「いっ、いや~。富子さんのおかげです!」
そう言って頭をかくレンジ。
その日の夕方、真田家ではレンジが作った? 鳥鍋を囲んで盛り上がったのであった・・・・・・
昔、おばあちゃんの家には使われていない竈とお釜がありました。
子供心に興味深々でしたが、今では見る事も無くなりましたね・・・・・・