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国盗り狂騒曲~下剋上☆戦国浪漫譚~  作者: 由木 ひろ
風林火山編
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第五死合い 薪割り

 戸を開け、部屋一杯に朝日を取り入れる。

 先程槍の鍛錬をしていた幸村の姿は既に無かった。


 レンジは部屋を出て庭に立ち、回りを見渡した。

 かなり大きな屋敷のようで、生垣で囲まれた敷地には、蔵や馬小屋が並んでいた。

 好奇心で、馬の姿が見え隠れしていた馬小屋に入る。

 馬小屋には二頭の馬が繋がれており、干し草をむしゃむしゃ食べていた。


「るーるるるるるる!!」


 レンジは恐る恐る馬に手を伸ばし顔を触ろうとしたその時、


「ブシュン!」


 食事を邪魔されて怒ったのか馬はレンジを威嚇した。レンジの差し出した手は、馬が飛ばしたよだれでべとべとになった。


(なんてこった!)


 べとべとになった手を恐る恐る嗅いでみた。


(う~わ! くっさ!! マジくっさ!!)


 レンジは片手をゾンビの様に前に突き出し水道を探した。


 屋敷の周囲を探していると、使われているであろう井戸を見つけた。


(あ~、この時代に水道なんてないよな~)


 井戸を覗き込み綱を手繰り寄せ、底から水の入った桶を引っ張り上げた。

 桶の水で手を洗っていると、


(パコ~ン!!)


 屋敷の脇から何やら聞こえて来た。

 音のする方に歩いて行くと、昨日幸村と一緒にいた男が薪割りをしていた。

 男は大きなペットボトル位の太さの薪を、切り株の上に置いて、振りかぶった斧を薪の中心目掛けて振り下ろした。


(パコーン)


 気持ち良い音と共に薪は綺麗に真っ二つになって左右に弾けた。


「おはようございます・・・」


 レンジの声に男は手を休め振り返る。

 レンジに向かい男は、


「よう眠れたかのう?」


「あ~、ぐっすりと!」


「それはよかった! それより、昨日はすまんかったの、わしらの早とちりじゃ。

 この通りじゃ、許してくれ」


 深々と頭をさげる男にレンジは、


「いや、こちらこそ! 俺もちゃんと説明しなかったし・・・・・・」


「そう言ってもらえると助かるわい!」


「俺、赤城蓮二あかぎれんじって言います。

 お母さんに甘えてこちらで暫く御厄介になる事になったんで、よろしくです!」


「そうか、お菊様きくさまに気に入られたんじゃな。

 わしは真田家さなだけの奉公人で喜助きすけじゃ。

 よろしくな!!」


「はい!! 所で薪割り俺もやっていいですか?

 何もしないで部屋にいるの、性に合わなくて・・・」


「ほー、それは助かるわい」


 喜助と言う白髪混じりの男の手から斧を受け取り、見よう見まねで薪に向かい斧を振り下ろす。


(ドスッ)


 鈍い音と共に斧は薪に少し食い込んで止まった。


「だめじゃ、だめじゃ。腰が入っとらん! 貸してみろ!!」


 喜助はそう言ってレンジから斧を奪い、手本を見せる。

 喜助の振り下ろした斧は、薪の中心に吸い込まれる様にめり込み、


(パコ~ン)


 気持ち良い音と共に薪は左右に割れた。


「な!」


「はあっ?・・・」


 自分と喜助の動きの差がいまいち理解できないレンジ。

 喜助から斧を受け取ると、全力で斧を振り下ろした。


(ドスッ)


 レンジの振り下ろした斧はさっきより深く薪にめり込んだが割る事は出来なかった。


(クッソ~、なんで割れね~の? 喜助さんはあんな力も入れないで割ってたのに・・・)


 むきになったレンジは斧がめり込んだ薪ごと振りかぶり、何度も斧を振り下ろした。

 四度目でようやく割る事に成功したレンジは喜助に向かいドヤ顔をした。

 喜助は片手で頭を押さえて首を振っていた。


 喜助はレンジの後ろに立つと、薪割りの手解きを開始した。


「いいか、レンジ。お前は力に頼りすぎる。力じゃない、呼吸が大事なんじゃ!

 斧を振り上げる際息を吸い込み、頂点で息を止め、振り下ろす際に息を吐きながら斧に力が乗ったと同時に膝を曲げ腰を落として薪の中心目掛けて打ち込むのじゃ!」


 喜助の言葉に従い、肩の力を抜いて薪の中心目掛けて斧を振り下ろすと、はたして、


(パコ~ン)


 気持ち良い音と共に薪は見事に真っ二つに割れた。


「ありがとう喜助さん! コツが掴めたよ!」


 コツが掴めた事で薪割りが楽しくなったレンジは、一心不乱に薪を割った。

 その様子を見届けた喜助は他の用事をする為に、レンジに一声かけてその場を離れた。


「無理せんでええからのう!」





 日は高く上り、昼飯を告げに喜助が戻ってくると、


「こりゃあ、おったまげた。まだやっとったんか!」


 喜助の言葉に気付き手を休めるレンジ。全身汗だくで、朝方にうず高く積まれていた薪は、悉くレンジの手によって真っ二つにされていた。


「喜助さん! もうお昼ですか?」


 額の汗を拭うレンジの掌はマメが潰れて血が滲んでいた。


「レンジ、飯にしようや!」


「はいっす!」


 二人は仲良く並んで屋敷での昼食に向かった。




























始めての人が薪割りをすると五分でへとへとになってしまいます。

私も慣れるまで時間がかかりました^^

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