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国盗り狂騒曲~下剋上☆戦国浪漫譚~  作者: 由木 ひろ
風林火山編
45/54

第四十五死合い 招かれざる客ー2

城の屋根裏を静かに移動する覆面姿の男は、目的の場所まで来るとそっと天井の板をずらして中を伺う。

部屋の中は暗くて良く見えないが布団の中で丸まっている人らしき姿が微かに見えた。


(スー)



天井の板をずらした男は静かに部屋の中に降りた。


(タッ!)



慣れた様子で、着地の際も物音一つさせる事は無かった。

布団の中で丸まってる人物に意識を集中しつつ部屋を物色し始める男。

机の上に積まれている巻物を開いては何かを探していた。

目的の物を見つけたのか男は一本の巻物を懐にしまい込もうとしたその時、


「なにものじゃ!!」



突然の声に驚いて男は巻物を落としてしまった。

声に振り返ると木製の窓から微かに照らされた一人の男の横顔が浮かび上がっていた。

声の主はこの城の主、武田信玄であった。

信玄は窓のそばで椅子に座り、腕を組んで侵入者を睨み付けていた。

暗闇に光る信玄の眼光は鋭く、大きな二つの目玉が侵入者をとらえていた。


信玄の声にたじろいだ侵入者は懐からクナイを取り出し戦闘態勢を取る。

その姿を見た信玄は、


「いけ! タマ!!」


「ガオー」



信玄の足元に寝そべっていた信玄の使役獣の虎のタマは信玄の言葉と同時に咆哮して侵入者に襲い掛かった。

男は不意を突かれタマに腕を噛みつかれた。

2メートルを超える虎の攻撃に男は必死に抵抗した。

腕に刺さった虎の牙はなかなか抜けずにもがく男。


男が手にしたクナイを虎の喉元に突き立てる。


「ガオッ!」



少し効いたのかタマの牙は男の腕から離れた。

男はタマに噛まれた腕を押さえながら後ろに飛びのき距離を取る。

そして懐から何か取り出して床に投げつけた。


「ボーーーーーン!」



部屋は爆音と同時に白い煙に包まれた。

その音に気付いた寝ずの見張りが部屋に飛び込んで来た。


「オホッ、オホッ!! 殿!!

ご無事ですか? 殿ーーーーーー!!」



白い煙が充満した部屋でむせびながら信玄を呼ぶ見張りの二人。

暫くして煙が落ち着いて来ると、


「殿、一体何事ですか? お怪我は?」



信玄は先ほどと変わりなく窓際で腕組みをしたまま、


「侵入者じゃ!!」


「侵入者? 一体どこへ?」


「上じゃ!!」



二人は天井を見上げた。

天井の1枚の板が開けられていた。


「あそこから逃げたか!!」



見張りの一人はすぐに部屋を出て行き大きな声で、


「出会え! 出会え!! 侵入者じゃーーーーーー!!!

生きて侵入者を返すなーーーーーーーー!!!」



その声に反応して城の中は一気に殺気立つ。


(ピーーーーーーーー!)



異変を知らせる笛の音が城内に響き渡る。

城の中では武器を手にした侍達が侵入者をとらえるべく探し回る。




その頃侵入者の二人組は城から脱出する為に逃げ道を探していた。

タマによる攻撃により負傷した男。男を気遣いながら逃げ道を探すもう一人の侵入者。

城の廊下を歩いていると3人の侍に見つかってしまった。

侍達は手にした刀を振り上げて二人に襲い掛かった。


負傷している男の侵入者はもう一人を庇いながら懐から柄の付いた金属の棒を取り出した。

いわゆるトンファーという武器である。

切りかかってくる侍の刀をトンファーで受け止めると素早く侍の腹部にトンファーを叩きこむ。


「うっ!!」



侍は腹を押さえてもだえ苦しんでいた。

残りの二人の侍もトンファーを使ってねじ伏せた男。

しかしその間に仲間の侍が奥から走ってくるのが見えた。


「ちっ!!」



男達は部屋の中に逃げ込んだ。

部屋に入ると窓の木枠を外して外の様子を探る。

そして懐から縄を取り出し部屋の柱にくくり付けた。

窓から城の外に逃げようとしていたのだ。


(ダッ!!)



侵入者を捕まえようと侍達が部屋の戸を勢いよく開ける。


「いたぞ!! 侵入者だー!!!」



部屋に踏み込んで来た侍たちは刀を手に侵入者を追い詰める。

男は懐から取り出した煙玉を床に向けて投げつけた。


(ボーーーーーーーン!!!)



部屋は大きな爆音と閃光と共に白い煙に包まれた。





その頃、レンジ達はと言うと。

城の異変に気付いたレンジと幸村は飛び起きて部屋の外に出ていた。

二人は目を合わせると、


「なんだ? 何事だ!!」


「わからん! だが城で何か起きている様だ」


「行くぞレンジ!!」


「おう!!」



二人は武器を手に取り騒ぎが起きている城へと向かった。

城の入り口に着いた二人。幸村は見張りの侍に、


「何事ですか?」


「ああ! 何でも賊が侵入したらしい。城内はそいつらを捕まえようと大騒ぎだ!!

俺は賊がここを通るかもしれないから待ち伏せしているんだ!!」


「そうでしたか・・・・・・」



見張りの侍は手に槍を構えて賊が来るのを待ち構えていた。

他にも続々と城の外に詰めている侍達が刀を抜いて城の入り口に押し寄せて来た。

その侍達は口々に、


「上杉の忍びが侵入したらしい!」


「殿の命を狙った暗殺者だ!!」


「殿はご無事なのか?」


「賊を生かして返すなーーーー!!」



状況を把握できていない侍達はいきり立っていた。

それを見ていたレンジは幸村に、


「なあ、幸村? 賊ってなんだ?」


「殿は何時もいろんな勢力から命を狙われている。

殿に限って暗殺者などにおくれを取るとは思えんが・・・・・・」


「なあ! その侵入者を捕えたらすんげー褒美とかもらえるのかなー?」


「バカ言うな、ふざけてる場合か!!

俺達も侵入者を探すぞ!!」


「ん、ああ!!」



二人が会話している最中にもぞくぞくと城の中に入って行く侍達。

その時城の上の方から誰かの声がした。


「おーーーーーい! 賊はここから逃げたぞーーーーー!!

賊は城の外だーーーーーーーーー!」



レンジと幸村は声のする城の上に目線をあげた。


「聞いたかレンジ? 賊は城から抜け出した様だ、まだそんなに遠くに行っていないだろう。

俺達で捕らえるぞ!!」


「おっ、おう!!」



レンジと幸村は城の入り口の篝火から松明に火を灯して賊を追った。

声のした所の下に来た二人。


「レンジ、賊はたぶんあの建物に逃げ込んだに違いない! 二人で捕らえるぞ!!」


「おっ、おう!! でもどうやって?」


「賊を逃がさない様にお前は建物の裏手に回り込め!

俺は正面から奴らを追い詰める。

前と後ろから挟み撃ちだ!!」


「わかった!!」



さっそくレンジは幸村が言う様に建物の裏に回り込んだ。

幸村は槍を構えて建物の入り口を一つ一つ開けて中を確認して回った。


(カッカッカッ)



レンジは奇妙な物音に気が付いた。

物音のする方を見ると、それは建物の屋根からだった。

松明をかざして建物の屋根を見上げるレンジ。

そこには微かにだが誰かが屋根の瓦の上を移動する人影らしき気配がした。


(賊ってやつか!! やべーこのままだと逃げられちまう。

幸村を呼んでくる時間はなさそうだな・・・・・・)



レンジは仕方なく屋根の上から微かに聞こえて来る移動の音を頼りに賊を追いかけ始めた。

手にした松明は見つかるといけないのでその場に捨てていった。

音を頼りに賊を追跡するレンジ。

賊は建物の端から地上に飛び降り城の敷地内の隅にある蔵の中に入って行った。

レンジはその様子を確認してから蔵に入る。

蔵の中は小さな隙間から入ってくる月明かりだけでほとんど何も見えなかった。

入り口付近で中の様子を伺うレンジ。

徐々に暗さに目が慣れて来たので中に入って行った。その時、


(トトト)



レンジの足元にクナイが突き刺さる。

レンジは驚いて後ろに飛びのいて、


「おい! 出てこい!! もう逃げられねーぞ!

このレンジ様に素直に捕まりやがれ!

褒美が待ってんだ! 早く諦めて出て来いよー」



刀を抜いたレンジはじりじりと奥に入って行く。

その時、奥からクナイを手にした賊がレンジに襲い掛かって来た。


(カキーン!!)



レンジの刀は賊の攻撃を受け止めた、


「あぶねーだろうが!! ケガしないうちに大人しく降参しろって」



賊は一旦後ろに飛びのいて今度はレンジの後ろを取ろうとレンジの上を飛び越えようとした刹那。

レンジの刀は賊の足を切り裂いた。


「つっ!!」



足を切りつけられた賊は倒れ込んだ。

レンジは刀を振り上げ賊に迫る。その時もう一人の賊が両手を広げてレンジの前に立ちふさがった。


「やめてーーーーーーー!!

ベル兄を切らないでーーーーーーー!!」



暗闇の中で木霊する少女の声にレンジは、


「カ、カレン・・・なのか?・・・・・・

な、なんでお前が・・・・・・」



レンジは驚きで刀を落としてその場に固まった。

遅れて幸村と侍達が蔵の中に入って来た。


「大丈夫か、レンジ?」



返事を返さないで突っ立ったままのレンジ。


侍達はそのまま抵抗を辞めた賊を捕まえて蔵の外に引き出した。

覆面を外されると、ベニマルとカレンの姿がそこにはあった。

幸村も余りの出来事に、


「何でお前たちが・・・・・・」



レンジと幸村をよそに侍達はベニマルとカレンに縄を打ちどこかに連れ去ってしまった。

幸村はレンジに、


「どういう事なんだ?」


「わからない・・・・・・

俺にもわかんねーよーーーーー!!」



一体何が起きているのか? ベニマルとカレンの運命やいかに・・・・・・













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