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国盗り狂騒曲~下剋上☆戦国浪漫譚~  作者: 由木 ひろ
風林火山編
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第三十六死合い コンビニー1

 数日が過ぎ、レンジは幸村の屋敷の居候としての仕事をしていた。

 それは、夕食の買い出しであった。


 買う物をメモに書いてもらい、各村々を回っていた。


(えっと、次は酒かー。喜助さん、酒好きだからなー)



 村々に所々存在する店を回って買い物を進めるレンジ、


(あー、ったく! 何で店が纏まってないんだよ!!

 買い物するだけでどんだけ歩かされるんだよ!!

 くそー、喉乾いた! 自販機でもあればなー・・・

 こんな不便な生活、みんなよく我慢できるな!

 あーコンビニ行きてー)


 ぶつくさ文句を言いながら買い物ををしていると、


(あれ! コンビニないなら作ればよくね?)



 ふとそんな考えがレンジの頭によぎった。

 レンジはその場に座り込んで腕組みをして考え込んだ。

 通り過ぎる村の人達はそんなレンジを怪訝な顔で見ながら通り過ぎて行った。


(よし!!)



 考えが纏まったのかレンジは立ち上がり、急に走り出した。

 行先は村の金持ちの与平よへいの家だった。

 与平の家に着いたレンジは、


「こんにちはー、与平さん? いますかー?」



 他の家とは一回りも二回りも大きな敷地に立つ家の中からレンジに呼ばれて、一人の初老の男性が出て来た。


「あー! これはこれは! 真田様の所のレンジ様ではありませんか!

 先日は、村の危機を救っていただいたとか・・・・・・」


「うん、俺はただ夢中で動いただけだから・・・

 ほとんどは幸村の手柄なんだけど・・・」


「そんな事は有りますまい、盗賊の頭を打ち取ったのは紛れも無いレンジ様と言う事はみんな知っておりますとも」


「この家は無事だったんすか?」


「おかげさまで何とか・・・

 蔵の物はごっそり持ち出されましたが、お二人の活躍で何とか取り戻す事が出来ました。

 それに・・・

 うちは誰も命を落としたものがおりません。これに尽きる幸運はありません」


「それはよかったっすね!」


「所で今日は何の御用で?」


「実は・・・

 コンビニを始めようと思って、どこか空いてる建物を貸してもらえないかと思って・・・」


「コンビニ?・・・・・・」


「どこでも良いんでお願いします!

 小さいくてもぼろくてもかまいません!

 どこか貸してもらえませんか?」


「何か商売をしようと思っておいでですか。

 わかりました、村の英雄の頼み、この与平が一肌脱ぎましょう!!」


「マジっすか!! ありがとうございます!!」



 交渉がうまくいって村はずれの道に面した物置小屋に使っていた建物を借りる事に成功したレンジはさっそく店開きの為に建物の整備に取り掛かった。

 中にしまい込まれていた農機具を運び出して、与平の家の蔵の中に運び入れた。

 何度も往復して何とか全ての物を運び出した頃には日が沈もうとしていた。


(やべ!! 買い物の途中だった・・・)



 建物の戸締りをして足早に幸村の屋敷に帰った。



 食後、何時もの様に二人揃って鍛錬に励んでいる時、レンジは幸村に向かい、


「なあ幸村! 頼みが有るんだけど・・・・・・」


「なんだ? 改まって。気色悪い!」


「気色悪いって言うな!!

 実はお金を貸してほしいんだ・・・・・・」


「なんだ? いつも団子買える位の金は渡しているだろ!

 そんなに団子が食べたいのか?」


「いやいや! 俺、そんな食いしん坊キャラじゃねーし!!

 俺、いつも居候で食わして貰ってばかりで、なんか自分でできねーかなーって思って・・・・・・」


「お前! 少しは気を使っているんだな・・・」


「ま、まあな!!」


「金の事なら富子に頼んでみろ!!」


「マジで! ありがと!! さすが幸村ちゃん、頼りになる~」


「俺は何もしていない!!」



 さっそくレンジは真田家の使用人の富子の元を訪れた。

 富子は忙しそうに台所で食事のかたずけを行っていた。傍らには富子の旦那の喜助が酒を飲みながら横になって寛いでいた。


「あのー、富子さん! お願いがあるんすけど」



 忙しなく動き回りながら富子は手を止めずに、


「なんだい、レンジ。改まってどうしたんだい?」


「実は、お金を貸してもらえないかと・・・・・・」


「お金? 団子でも買うのかい?」


「団子って・・・そうじゃ無くて、商売を始めようと思って」


「レンジが商売?」



 富子は手を止めてレンジをまじまじと見つめ、


「で、一体幾ら必要なんだい?」


「分からないけど、店に品物揃える為に、そこそこ必要になると思います・・・・・・」


「そこそこって! 私は真田家の台所を預かる身として、そんなお金出せる余裕はないよ!

 そんな大金が必要なら幸村様にお願いして見てごらん!」


「その幸村が富子さんに聞いてみろって・・・」


「私の一存では出せないねー!

 幸村様の母上の菊様にお願いしてごらん

 あっ、菊様は今信之様の城に行っているから、4日後にはお帰りになるんじゃないかしら・・・」



 そう言いながら富子は洗い物を桶に入れて外の井戸で水を汲むために出て行った。

 レンジは肩を落として富子を見送った。


 酒瓶を抱いて横になっていた喜助が声をかけてきた、


「レンジ、お前商売を始めるんか?」


「ええ、まあ! 何時までも居候じゃダメだなって思って・・・・・・」


「えらい!! 男はそうじゃなきゃな!」



 そう言って喜助は懐から財布を取り出しレンジに渡した。


「あの、これって?」


「いいからもってけ! わしの全財産じゃ! それじゃ足りんか?」


「でも、それじゃあ喜助さんがこまるんじゃあ・・・・・・」


「俺の事は気にするな! 酒が暫く飲めないが、体の為に禁酒したと思えばどうという事は無い!」

 それより、頑張れよ!!」


「はい!!」



 こうして場所と資金を手に入れたレンジのコンビニ経営が始まるのだが果たして・・・・・・




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