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国盗り狂騒曲~下剋上☆戦国浪漫譚~  作者: 由木 ひろ
風林火山編
21/54

第二十一死合い 修行ー2

 レンジは無限斎むげんさいが書き残した紙を頼りに修行を開始した。


「取り合えず、素振り二千回か! まー、何時もの倍だけど、どうって事無いぜ!」


 レンジは、月夜の明かりが差し込む道場で一人黙々と剣を振る。


「1999、2000っと!!」


 レンジが素振り二千回を終えた頃、辺りはすっかり明るくなっており、外には小鳥たちがせわしなく飛び回っていた。


「お次はっと。えーっと薪割りか! これも問題無いな!」


 額の汗を拭って庭に出て、薪割りを開始する。

 手慣れたもので、積んである薪をテンポ良く割って行く。


「はい、お~わりっと!!

 次は、朝飯の支度ね!

 はいはい! 修行の身だから爺さんの飯も俺が作れって言うんだろ!」


 レンジはさっそく台所に入り料理を開始する。

 幸村の家でやってきたので問題無く進める。

 野菜などは庭の隅にある家庭菜園から手ごろなのを掘り出して使った。

 出来た料理を持って無限斎の元に向かうと、無限斎は机に向かって、生け花をしていた。


「あのー! 食事を持って来たんですけど」


「うむ」


 机に朝食を並べて、二人は朝食を共にする。

 レンジは、


「無限斎さんって、一人で住んでるんすか?」


「小僧! 今何をしている時じゃ?」


「レンジですけど・・・

 今は食事中です・・・」


「分かっておるなら、黙って食事せい!」


「はい・・・・・・」


 気難しい無限斎にレンジは、


(なんだよー! このじじい。俺が作った飯だぞー!

 ホント年寄り嫌い、マジムカつく!)


 などと思いながら、食事を済ませる。


「次は水汲みなんで、俺行ってきます!」


「小僧・・・・・・

 うまかったぞ!!」


「・・・・・・はい!

 レンジですけど!」


 レンジは無限斎に料理を褒められたのが少し嬉しかった。

 食事を下げて台所で水汲みの準備をしていると無限斎がやってきた。


「小僧、そこに水瓶みずがめがあるじゃろう!

 それを一杯に満たしておけ!」


「はい!

 レンジですけど・・・」


 レンジは手桶を二つ持って出かけようとすると無限斎は、


「待て! どこに行くか分かっておるのか?」


「どこって! この山の下の小川へ」


「違う!!

 お前が行くのは上じゃ」


「上?」


「この山を登ると、岩に囲まれた開けた場所がある。

 その岩の間から染み出る水を汲んでくるのじゃ!」


「はあ? 場所が良く分からないんですけど・・・・・・」


「心配はいらん、嫌でも目に付く巨大な一本杉を目指して行けば、その木の下が目的地じゃ!

 それと、これを使え」


 そう言って無限斎は一本の長い木の棒をレンジに手渡す。


「杖っすか! ありがとうございます!!」


「違うわ!! それは天秤棒てんびんぼうじゃ。

 その棒に桶を吊るして使うんじゃ!

 くれぐれも道中、その棒を肩から降ろしてはならんぞ!

 分かったな!」


「はい!」


 レンジはさっそく天秤棒の両端から伸びてる紐に桶をくくり付け水汲みに出かけた。


(なんだ爺さん、いいとこあるじゃん。

 これなら手が使えるから山登りも楽勝だ!!)


 山道を登って行くと、目印の一本杉が見えて来た。


「あれだな~!

 あれ? 道が無いぞ!!

 ここからは、草木をかき分けて行けって事か・・・」


 レンジは草木をかき分けて、道なき道を進んで行く。その際、天秤棒が邪魔をしてなかなか進む事が出来なかった。

 木々の隙間を通る際、長い天秤棒が引っ掛かり、棒を右へ左へ操ってどうにかこうにか目的地へたどり着いた。

 そこには誰かか組んだのだろうか、城の石垣みたいな物がレンジの背の高さ位に横十メートル位あった。

 その石組みの隙間からちょろちょろと水が流れ出ていた。

 その水で顔を洗い喉を潤すと、さっそく桶に水を汲んで山を下りる。


 水を汲んだ桶は重く、天秤棒が肩にめり込む。


(クソー、肩いてー!)


 下り斜面を慎重に歩くが、木々を通り抜ける際、桶がぶつかり水がどんどん零れる。


(うっ、うわーーーーー!)


 足を滑らせ斜面を転がり落ちるレンジ、


(なんだよ! せっかく汲んだのに水が全部零れたじゃねーか! またやり直しかよ!!)


 とぼとぼと又水を汲みに行くレンジ、


(なんだよー、この天秤棒。便利かと思ったら、思いっきり邪魔じゃん!

 外した方が、仕事がはかどるな・・・・・・

 でも、爺さんが外すなって言ってたからなー

 仕方ない、言われた通りやるか・・・)


 そんな事を何度か繰り返しようやく台所に戻ってきたレンジは水瓶に水を注ぐ。

 一回目の桶には半分も水は残っていなかった。


(これ、水瓶を一杯にするまで、どんだけ時間がかかるんだよ!)


 既に太陽は、空高く上っていた。


(取り合えず昼飯食って、午後から頑張るか・・・・・・)


 結局、水瓶を満たした頃には、夕日が空を赤く染めていた。



 疲れて水瓶の前に座り込んでいると無限斎がやって来た、


「終わったのか?」


「はい! 何とか・・・」


「では、ついてこい」


「剣の修行ですか?」


 無限斎の書いたメニューを全て終わらせたレンジは、剣の修行をしてもらえると思い疲れを忘れて無限斎について行く。

 道場に着いたレンジは刀を手に取り構えると無限斎は、


「何をしておる?」


「何って? 剣の修行を・・・」


「ここに座れ!!」


「はあ? はい!」


 レンジは言われるがまま従った。


「いいか小僧、心を無にしろ!! 集中じゃ!」


「はあ・・・・・・」


 レンジは目を閉じ、背筋を伸ばして瞑想を始める。


(バシッ!)


 レンジの集中力が切れた頃、無限斎が持った木の棒がレンジの肩に叩き込まれる。

 レンジはその都度気を引き締め直し瞑想を続ける。

 座禅を始めて、一時間が過ぎた頃無限斎は、


「よし! 今日はこれまでじゃ!!

 食事の後、素振り二千回!

 最後に道場の雑巾がけじゃ!」


「はい!!」



 レンジの修行は始まったばかり、この先もやって行けるのだろうか?


 幸村はどうしているのだろうか・・・・・・






























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