第二十死合い 修行ー1
(ドンドンドン!!)
部屋の壁を激しく叩く音にレンジは目を覚ます。
「なんだ、なんだ!? 火事か!!」
寝ぼけているレンジに老人は、
「いつまで寝ているつもりじゃ? お前、ここに何しに来たんじゃ!!」
「あっ! おはようございます!!」
「挨拶などどうでも良い! わしについてこい!!」
「はい!!」
そう言って老人はスタスタと歩いて行く。レンジは頭の整理がつかないまま老人の後を追う。
少し歩くと、どこかの広い部屋に出る。
老人は部屋の戸を片っ端から開けて回る。
月明かりで部屋の中が照らし出された。どうやら来た時に外から見た道場の中にいる様である。
月明かりに照らされた木々の間からは、
「ジーーーーーーー
ホウ・ホウ・・・・・・」
キリギリスやフクロウの声が聞こえて来る。
(まだ朝じゃないじゃん!!)
老人はレンジの前に立つと、
「ほれっ!」
レンジに木刀を手渡した。
「構えて見ろ!」
老人の言う通り木刀を握り、構えるレンジ。
構えを取っているレンジの体を老人は触りまくる。
足首・ふくらはぎ・太もも・腰・肩・腕、等々。
「あはっ! うひゃ! あひゃひゃひゃひゃ!!」
たまらず声が漏れるレンジに老人は、
「ふむ!!」
そう言って老人は道場の隅に飾ってある竹の筒から、一切れの小枝を引き抜いてレンジの前に掲げた。
「小僧、打ち込んで来てみろ! ここじゃ!!」
老人が片手に掲げる小枝は、レンジに対して水平に、その距離二メートル。
レンジは小枝に木刀を打ち込むべくすり足で近づいて行くと、
「ばかもん! その場から打ち込むのじゃ!!
誰が近づいて来いと言った!!」
老人の怒鳴り声が道場に響き渡る。
レンジは気を取り直して、
「だりゃーーーー!」
小枝に木刀を打ち込むべく激しく床を蹴り、前に飛ぶ。
振り下ろされた木刀は小枝にまるで届かずに空しく空を切った。
老人はその姿に首を何度も振りながら、
「まあ、そんなもんだろうのう・・・・・・」
そう言い残してスタスタと、どこかに行ってしまった。
(なんだったんだ?)
一人残されたレンジは道場の床に座り込み、外から聞こえて来る虫や鳥達の声を聴いて時間を過ごした。
程なくして老人は戻って来た。手には何か書かれた紙を持っていた。
「小僧! これにはお前がやるべき事が書いてある」
そう言って紙をレンジに手渡すと立ち去ろうとした。
レンジは慌てて、
「あのー! 俺、赤城蓮二と言います。
よろしくお願いします!」
「無限斎じゃ! わしは忙しい」
そう言い残して道場から消えて行った。
(うわー! 変な爺さんだな・・・・・・
うちの爺ちゃん超えるぞ、マジで!!
これだから老人は苦手だ! 人の話は聞かないわ、気が短いわ。
先が思いやられるな・・・・・・)
気が重いレンジは無限斎の元で修行を始めるのであった・・・・・・