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国盗り狂騒曲~下剋上☆戦国浪漫譚~  作者: 由木 ひろ
風林火山編
2/54

第二死合い 襲撃

 光に包まれ気を失ったレンジは程なくして意識を取り戻した。

 先程まで真っ暗で雨が降っていたはずなのに、空は赤く夕日がレンジを照らしていた。


 何が何だか理解できないレンジは周囲を見回してみると、雷に打たれて裂けたはずの楠の木は何事も無くレンジの前で青々とその姿を晒していた。しかし記憶よりかなり小さい感じがした。

 首を傾げつつ足元の剣道具を担いで寺を出る為歩き出す。

 寺の本堂の横を歩いていると違和感を覚える。


(あれ? この寺、こんなにボロボロだったっけ?)


 当時、暗くて記憶が定かでは無いので不思議に思いながら、雨宿りしていた寺の門まで来てみると、


(なんじゃこりゃ~!!)


 寺の門は朽ち果てており、来た時にはあったはずの道路や住宅が見当たらずに、代わりに竹林が広がっていた。


(あ~これ、きっと夢の中だな。間違いない!)


 そう思って頬をつねってみる。


(いててて!)


 確かに夢の中でも痛い事もあるよな! 

 レンジはよく空を飛ぶ夢を見る事があったので試してみた。


 寺の門の前の道で、レンジは静かに目を閉じ空を飛ぶイメージを高める。いつも夢の中では空気を一杯に吸い込み、止めた後に手をばたつかせるとゆっくり飛び立てる事が多かったからだ。


 集中、集中。静かに目を開け手を羽ばたかせてみる。

 他人が見たら、かなり危険な奴に写るであろう動作を真顔で続ける。

 何度も試してみたが、うまく行かない。


(今日は、飛べない日なんだな!)


 勝手に納得して寺を離れる事にした。

 レンジが寺を離れる際に、レンジを監視する何者かの気配は音も無く本堂から消えてなくなった。レンジはその事に気付くはずも無かった・・・


 寺の前にある一本道は竹林へと続いていた。レンジはその道をあても無く歩いた。

 竹林の中はうす暗く、時折夕日が風を受けて揺れる竹の隙間から差し込みレンジの足元を照らした。


(しかし、いつも思うが夢って、見た事も行った事もない場所を無意味に歩いてる事多いよな~。

 見知らぬ人物が出て来たり・・・・・・

 んで、何かに躓いた瞬間、ビクッとして夢から覚める。

 楽しい夢の場合、特に途中で覚めやがる、続きが見れる機能は無いものだろうか?)


 そんな事を考えながら竹林の中を歩いていると、目の前に赤い光が広がっていた。竹林の終わりである。

 竹林を抜けると、目の前にはのどかな田畑が広がっていた。その景色をしばらく立ち尽くして眺めていると。


「貴様、何者だ? どこから来た?」


 レンジは声のする方へ振り向くと、そこには二人の男の姿があった。

 一人の男の手には、槍が握られ槍先はレンジに向けられていた。


「なんだよ? 一体!?」


 突然の出来事に身の危険を感じたレンジは、咄嗟に担いでいた剣道具から竹刀を取り出し身構えた。


「歯向かう気か?」


 男の問いにレンジは、


「歯向かうも何も・・・・・・」


 レンジの答えを待たずに男は槍を突いて来た。

 レンジはその槍先を、すんでの所で交わして再度竹刀を構えた。


「小癪な奴!」


 そう言って男は槍を横にはらって来た。

 レンジは竹刀で槍を受けるが所詮竹刀。竹刀の先っぽは槍の刃を受け飛んで行った。


「マジか~!!」


 レンジは竹刀を投げ捨て、相手の槍が脆い竹刀のおかげで横に流れている隙を衝いて男にタックルを仕掛けた。

 男も懐に入られた愚を悟り、槍を投げ捨てレンジに対した。

 相撲の様な形になったが、レンジは体が小さく体重も軽いのですぐに押し戻された。


「クッソ~!!」


 徐々に押し込まれるレンジ。

 少し男の圧力が弱まったと思った瞬間。


「あう!」


 男の肘打ちがレンジの背中に突き刺さり思わず声が漏れるレンジ。

 痛みで膝を屈したレンジは目の前にある男の足をすくい取り男は尻餅をつく。

 そのまま男に馬乗りになり殴りかかるが初撃を避けられレンジの拳は地面に突き刺さる。


「痛って~!!」


 叫んでるレンジの隙を衝いて男はレンジの襟首を掴み頭突きを仕掛ける。

 頭突きを食らったレンジは意識が朦朧とする。

 男はその隙に立ち上がりレンジに殴りかかってくる。

 朦朧としてるレンジは殴りかかってくる男の拳にカウンターを合わせてアッパーを叩きこむが、拳は空を切る。

 レンジのがら空きのボディーに男は拳を叩きこむ。


「ぐはっ!!」


 レンジの腹部に突き刺さった男の拳。思わず声が出るレンジ。

 辛うじて保っていたレンジの意識は腹部の激痛と共に薄れて行く。


喜助きすけそいつを縛り上げろ!! 連れて帰るぞ!」

「へい!」


 それがレンジの聞いた最後の言葉であった・・・・・・



























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