第十六死合い 武田信玄ー1
二人は部屋の前を守るサムライに三度説明をして、信玄のいる部屋に通された。
部屋の中に進むと、そこは巨大な大広間だった。
広間を奥に進むと、そこには一段高い所に信玄と思われる男。その右側には、家臣と思われる男がいた。
レンジは奥に進む途中、
「クックック!! プププ!」
笑いをこらえているレンジに幸村は、
「なんだレンジ! どうした? 失礼だろ!!」
「あー、わり~・・・ つい!」
レンジが笑いをこらえている理由はこうだ。
レンジは元の世界で学校の歴史の授業において、教科書の武田信玄の肖像画に勝手にマジックで落書きをして、目にはサングラス、頬にはヤクザちっくな切り傷を書き込み、吹き出しを付けて(借りた金、キッチリ返さんかいわれ! いてまうど~)と、書き込んでいた。
つまり、レンジにとって武田信玄とはガラの悪い借金取りだったのだ!!
因みにレンジの中学校卒業時の成績表は以下の通りである。
国語----2
社会---ー1
数学ーーーー2
理科ーーーー5
音楽ーーーー2
美術ーーーー4
保険・体育ー5
技術・家庭ー5
英語ーーーー1
*先生から一言・・・・・・場をわきまえましょう!!
幸村は足音をたてずに信玄の前に進み出る、レンジもそれに続く。
幸村は信玄の前で胡坐をかいて座り、頭を下げて信玄の言葉を待った。
レンジもそれに倣った。
いつまでたっても声が掛からないので、堪り兼ねてレンジは顔を上げる。
そこには達磨大師よろしく、胡坐をかいて腕組みをした虎ひげの大男が瞳を閉じて座っていた。
顔や腕には無数の傷跡があり、多くの戦場を経験した事を物語っていた。
レンジは目の前の偉人を見て、
(やっぱすげー迫力! 流石に教科書に載るだけあるわ!!
でも寝てるのか? いや、何か深い戦略などをねっているに違いない!)
そんな事を考え信玄をまじまじ見ていると。
(カクン!!)
信玄は小さく首を動かしよだれを拭く仕草をして目を開け、
「いかん。寝ておったわ!!」
レンジは、
(やっぱ、寝てたんかーーーーーーい!!)
突っ込みたい衝動に駆られたが、耐えた。
目を覚ました信玄は目の前にいる二人に気付き、
「誰じゃ!!」
その言葉に幸村は顔を上げ、
「昌幸が子、幸村にございます!」
「おお!! 幸村か。よー来た。待っておったぞ!!」
「はっ!!」
「所で、幸村の隣におるのは誰じゃ? 新しい家来か?」
信玄の言葉にレンジは、
「家来じゃねーっす。この前会ったじゃないですか!!
その時、幸村と一緒にここにこいって言われたんで来たんですけど・・・」
その言葉に信玄は、
「そーじゃったな!! 名前は確か・・・・・・はちべい!」
(一文字もあってねーじゃねーか!! なんだこのおっさん! ボケてんのか?)
そんな事を思いながらレンジは、
「レンジです! 赤城蓮二と言います!」
その答えに信玄は頭を手でペシペシしながら、
「そーじゃった、そーじゃった!! レンジだったわい!!
ワッハッハ!!」
豪快に笑った。
その後信玄は真面目な顔で、
「幸村! そなたも、もう元服じゃ。
これからは武田軍団の一員として立派に働いてもらわねばならぬ!
そこでじゃ!!
これから一人でも戦場で生き残れる様に、槍か刀の修業を、師に付いて学んでこい!」
「はっ! 仰せのままに」
「して、どちらを選ぶ?」
「私は槍を習いとう御座います!!」
「やはり真田の者よ!! 励めよ!」
「レンジ! お前も幸村に付きしたがって励むが良い!!」
「あの・・・俺、槍とか扱った事ないんで・・・・・・
子供の頃から剣道やっているので刀の方が・・・・・・」
「そうか!! ならばそうせよ!!
勘助、直ぐに手筈を整えよ!!」
信玄は顔を傍に控えていた家来に向け言い放ったのだった・・・・・・