第十四死合い 乗馬
強烈な雨はその日一日降り続いた。
レンジは部屋で寝転んで過ごしていた。
(あれ?ズボンの後ろポケット破れてるな・・・)
レンジは剣道具の中から裁縫道具を取り出し、器用に破れたズボンのポケットを縫い合わせていた。
その後、剣道具の中から雑誌を取り出し、ゴロゴロしてその日を過ごした。
夜が明けた。雨はすっかり上がって、朝日が顔を覗かせている。
レンジは布団から起き出して、刀を手に庭に出た。
既に鍛錬を始めていた幸村に向かい。
「おはよう!」
「ああ!」
二人は並んで日課の鍛錬に汗を流す。
「レンジ。これが済んだらすぐに出るぞ!!」
「?・・・どこに?」
「忘れたのか? 殿から城に来るようにおおせつかった事を!」
「そう言えば、そんな事言ってたな! 俺たちに何の用だ?」
「分からん! でも、日時をたがえるわけにもいかん。
昨日の雨で出遅れてるから、馬でいくぞ!」
「歩きじゃダメなのか?」
「歩きでは間に合わない!」
「俺、馬なんか乗った事ないぜ!」
「お前、馬も乗れないのか?」
「泳げない奴に、言われたくないね!!」
二人は鍛錬の後、素早く朝食を済ませ、旅支度を整え馬小屋の前にいた。
幸村は素早く馬にまたがりレンジにも馬に乗る様に促した。
「ブルルルルルル!!」
馬はレンジの乗馬を拒絶した。
「なんだよ! この馬。昨日危ない所を助けてやったろ!!
この薄情者! 大人しく俺を乗せろっつーの!」
「レンジ、何やってる? 早くいくぞ!」
「俺に言うなよ。文句があるならこの馬に言ってくれ!」
「おかしいな! いつもは大人しい馬なんだが・・・
レンジ! なにか馬の機嫌を損ねる事でもしたのか?」
「するかボケ!!」
レンジは馬を宥めるために、横でたてがみを撫でたりして馬の機嫌が直る様に努めた。
馬は頻りに前足をばたつかせていた。
(ん? なんだ!!)
レンジは馬の前足の付け根から血が出ているのを見つけた。
(はは~ん、これが原因か!!)
昨日、馬が柵を破壊して脱走した時の、柵の破片が馬の体に刺さったまま残っていたのだ。
「今取ってやるから、大人しくしてろよ~」
レンジは優しく傷口に刺さる小さな木片をつまみ、引き抜いた。
「ヒヒーン!」
痛かったのか、馬はいななき、一瞬棹立ちになった。
「どおどおどお」
レンジは馬を落ち着かせた。
馬は程なく大人しくなり、さっきと打って変わって、大人しくレンジの乗馬を許した。
「で? これからどうすんの?」
馬の扱い方が分からないレンジは幸村に尋ねた、
「俺の馬にお前の馬の手綱を結ぶ!
お前はただ、振り落とされない様にしっかり馬に掴まっていればいい!!」
「おっ、おお!!」
「行くぞ!! はっ!」
「うわああ、ちょっと。おい! もう少しゆっくり頼む!!」
幸村はレンジにお構いなしに馬を走らせる。
レンジは馬にしがみついたまま、
「幸村! 初心者なんだから、もっと優しくしろよなー」
「無駄口叩いていると、舌をかみ切るぞ!!」
「・・・・・・」
二人は一路信玄の居城に向かい馬を走らせた・・・・・・
いつもの散歩コースでたまに馬を散歩させてる人とすれ違います。
近くで見るとかなり可愛いですね!