表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国盗り狂騒曲~下剋上☆戦国浪漫譚~  作者: 由木 ひろ
風林火山編
13/54

第十三死合い 豪雨

 家に戻った二人は日課の鍛錬を済まし食事を終え、風呂に入って寝床についた。

 夜半から降り出した雨は、その強さを増し、風と共に屋敷の戸を打ち付ける。


(ビュー。ガタガタガタ。ザザザザー)


 強烈な雨音に目を覚ましたレンジは外の様子を窺うが、その時。


(ピカッ、ドーーーーーン)


 近くに雷が落ちたのか、足元から地響きが伝わってくる。

 少し驚いたレンジは柱に手を付いた時、


(ヒヒーン、ガシャン!)


 馬のいななきと共に大きな物音がした。

 外の異変に意を決して戸を開けると、一頭の馬が庭を走り回っていた。

 さっきの雷に驚いて、馬小屋の柵をぶち破って出て来たのであろう。

 レンジは馬を落ち着かせようと馬に近寄るが、暴れ狂う馬に近づく事さえできないでいた。

 異変に気付いた幸村も起き出して来た。

 幸村に気付いたレンジは、


「幸村!! 手を貸せ! こいつを何とかしないとまずいぜ!」


「おう!!」


 二人は何とか馬の手綱を掴もうと何度も試みた。その時。


(ドーーーーーン)


 二回目の雷が鳴った。

 馬は更に興奮して、生垣を飛び越え外に出て行った。


 二人は急いでその後を追う。


 高台にある幸村の屋敷から、下に向かい全速力で馬を追ったがとうとう見失った。

 二人はあても無く辺りを見渡すが、馬の姿はどこにも見えない。

 レンジは耳を澄ましてみる。


(ヒーン)


 微かに馬の声が聞こえた。


「あっちだ」


 幸村と共に、声の聞こえる方にかけて行くと、はたして・・・・・・



 馬は増水した川の真ん中辺りで立ち往生していた。


「ヤバイ、このままだと流されてしまう!」


 レンジは川の中にじゃぶじゃぶと入って行き馬に近づく。

 水は肩まで迫り、どうにかこうにか馬にたどり着いたレンジは手綱を握って川の流れに耐えていた。


「お~い! 幸村~~!! お前も手伝えよ~」


 川に入る事をためらっていた幸村は、


「俺は泳げない・・・」


「はっ? 良く聞こえない!! なんだって!!」


「俺は泳げないんだーーーーーーーー!!」


「嘘だろーーーーーー!!」


「待ってろ! 今、何か手を考える!」


 そう言って幸村はその場から立ち去った。


「ちょ、まてよ!! おい! 幸村どこいくんだよ! 幸村ーーーーーー!!!」


 川の中で馬と耐えるレンジ。水嵩みずかさはどんどん増していく。

 既にレンジの首元まで川の水は迫っていた。


(俺、こんな所で馬と一緒に人生を終えるのか?

 なんか戦国まで来て、情けないな・・・)


 そんな事を考えていると、


「レンジー、掴まれーーー!!」


 声のする方を見ると、幸村がロープを持って戻って来ていた。


「幸村----!もう限界だ!! いままでありがとう。

 いけ好かない奴と思っていたけど、別れるとなると寂しいもんだな」


「バカヤロー! あきらめるなー、早くこれにつかまれー」


 幸村が投げたロープは上流から見事レンジの手に掴まれた。

 幸村はロープの端を近くの木に括り付け、レンジの掴んだロープを全力で引き寄せる。


 レンジはロープに引き寄せられ、少しづつ岸に近づく。

 馬もレンジが握っている手綱に促されて自ら岸に向けて動き出した。


「もう少しだ! がんばれ~!!」


「手がちぎれそうだ! クソー、もうダメだー!!」



 間一髪の所で岸にたどり着いたレンジと馬。

 レンジは地面にダイノジになり息を整えていた。

 馬は、疲れ果てたのか、その場で座り込んでいた。


「助かったー!!」


「レンジ、大丈夫か?」


「大丈夫か? じゃねーよ!

 もう少しでドザエモンだったっつーの!!

 なんだよ! 泳げないって!!

 何でも万能の幸村様じゃなかったんかい!!」


「俺にも出来ない事位有る!!」


「あ~~~腹へった。なんか奢れよ。一つ貸しだからな!!」


「そうぼやくな! 助かったんだから、いいだろ!!」


(ぶひひーーーーん)


「「・・・・・・」」


「あははははははは」


 馬の変ないななきに、怒る気力も無くなる二人であった・・・・・・












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ