まさかの政略結婚
「師範!失礼します‼」と威勢よく莉子さんが道場に入ってきた。
――マジかよ…
「お嬢さんはこれでも黒帯だ」と親父から聞いた。
確かに無駄な脂肪がなく、空手に向いている体型をしている。
「えーと…。俺は莉子さんの道着姿初めて見るんだけど?」
「私も早坂君の道着姿は初めて見たわ」
と返された。
これはいったい?
組手をしながら莉子さんに聞く
「何で、君みたいな人が空手を?」
「うちの一族の人みーんな空手が好きなのよ。あと…」
彼女は少し口ごもったように言う。
「この辺で空手道場ってうちの財閥、所有してないのよ。生涯スポーツみたいな感じで空手を普及したいの。だからね?」
彼女は俺を上目で見つめた。
「スキあり!」彼女に負けた。彼女の言葉の真意がわからないまま…。
「親父~‼なんか知ってんだろ?教えろよ!」親父は不敵に笑ってる。
「あのねぇ」莉子さんが口を開いた。
「つまり、私があなたと結婚してこの道場を継ぐってことよ!そうすれば、うちの一族に道場が手に入るし、早坂君のうちは金銭面で苦労はないわね」
「政略結婚ってことか?」
「そうねぇ」こともなげに莉子さんは言う。
――莉子さんと結婚はいいけど、政略結婚っていうのはなぁ
「莉子さんはそれでもいいのか?」
「財閥に生まれた以上、どうせそうなるんだもん」
――達観してるなぁ
「俺は莉子さんが好きだから、有難い話だけど。莉子さんが俺のこと想ってくれてないんじゃなんとも…」
「そうねぇ、私の気を惹けるかなぁ。早坂君?」
「わかんないよ。政略結婚でも俺は浮気は許さない。認めない」
「今はまだ大学卒業してないし、卒業するまでは婚約者ね。よろしくね、婚約者さん」
と莉子さんは俺の頬にキスをした。
「はぁ~、政略結婚…。親父~‼なんて難しいことを」
「お前なら何とかするだろうとさ。俺にはほら、マナがいるし~」
――おふくろのことは聞いてない。俺はどうすればいいのか…。とにかく寝よう