キスマークは突然に
「司!師匠‼司を借りますね」
俺は親父からちょっと離されたところに連れていかれた。
「結論から言うと、体のあっちこっちについてた…」
「マジで?ゴメン」
「うなじとかにもついてるのかなぁ?ちょっと見てくれる?」
色っぽいんですけど…
「なかったよ」
「うーん、パーティードレスでも背中空いてるのはNGだなぁ。あと、髪型も気をつけないとなぁ」
「すいません。ってパーティー?俺も参加!だってフィアンセだぜ?エスコートしてなんぼだろ?」
「そこの若人二人。莉子さんのキスマークの話かい?」
――正解
「メイク道具でなんとかなるんじゃないのかな?マナー!」
「呼んだ?莉子さんについてるキスマークなんだけど」
「もう、司君ってば独占欲強すぎ!で?」
「メイクでどうにかできないもんかとマナに相談」
「うーん、コンシーラーで誤魔化すって手でいけるんじゃないかなぁ?あ、コンシーラーってシミを隠したりするやつね」
おふくろが試した。
「莉子さん、肌きれー。羨ましいわ」
「マナさんも若々しくって年齢わかりませんよ」
と、莉子の背中をおふくろが見た。
「あー、司君。無意識にこんなにつけちゃって…。若いわねー」と言いながら、コンシーラーで消していく。
「出来た‼見てー‼」莉子の背中はごく普通のというか、きれいな背中になっていた。
「司君、ひどいのよ!背中いっぱいにキスマーク。コンシーラーよりファンデーションの方が速くないって感じだった」
――そこまで言う?
「莉子さんの家には莉子さんのキスマークを容認する人いる?」
「フィアンセがつけたんだからOKじゃないですか?」と、莉子。
「マナみたいに化粧できる人は?」
「マナさんの方が正直上手ですけど、専属で一応います」
「女性だよな?」俺が突っ込む。
「男にそうそう触らせません」
「司、お前のその独占欲がキスマークの山を作ったんだ」
「親父はおふくろに独占欲ないのかよ?」
「マナは独占しなくても俺のところに来るもん」大した自信だな。
そうか、俺は自分に自信がないんだな。空手、頑張ろう。
「マナさんを‘専属’って連れて行ってもいいんですけど、剛君が…」
「俺はこないだ卒論の時に着たスーツ姿でパーティーに出ればいいんだな?」
「剛の面倒は俺が看ておくよ。そのパーティーはいつだ?」
「今夜です」




