莉子、本気の司を見る
1カ月後道場にて
「莉子、足の具合はどうだ?」
「こんな感じで、もう腫れてないよー」
「どれ?」腫れてた部位を軽く押した。壊さないように。無反応。
「親父!莉子の足の具合どう見る?」
「お前、触診したんだろ?自信ないのか?」
「ない。俺は力加減がわからないから握力で骨を砕いてしまうかもしれないし…」
「ありうるところが嫌だな」
「俺が触診してもいいか?司?莉子さん?」
「お願いします」
「師匠なら信頼できます」
――親父は信用ならんが
「まぁ、完治だね。ただし、同じ攻撃は食らわない方がいいな今は。と言うことを踏まえ、組手。司と莉子さん」
――どうしよう?
「莉子、Tシャツだよな?」
「うん?」
「胸に俺の手当たるけどいいのか?」また莉子は赤面した。
「俺、目隠しするか?」
「感触はあるでしょ?それにハンデってなんか余裕ですーって感じ」
――余裕なんだもん
「始め」
開始直後、莉子の目の前を上段回し蹴りでかすめた。
「一本、そこまで」
「ふぅ、莉子を傷つけないで勝ちにいくの難し~‼」
「よし。司、俺と組手だ。莉子さん見てて。こいつが本気で空手やるとこ」
「俺審判な」
――親父、セルフ審判ズルい
「じゃ、始め」
道場の空気が変わった。攻撃と防御のくり返しで勝負がつかない。どっちにも莉子にはスキが見えなかった。
「あ、莉子さん」と親父呟く。その一瞬司にスキが生まれて、勝負はついた。
「師匠、卑怯です」莉子が言う。
「あれは作戦だよ」物は言いようってやつだな。
「莉子、どうだった?」
「なんか、すごかった。司、やっぱり強いんだね。私、司の弱点なのかなぁ?」
「ほれ見ろ!親父があんな手を使うから莉子がネガティブになったじゃねーか!」
「お前が守るんだろ?」
――返す言葉もありません




