莉子、病院へ行く
整形外科病院
「そう言えば、保険証とかは?」
「家にあるけど、この際10割負担でもいいわ」そう莉子は言い切った。
「問診表に書くところあるね。打ち身だね。俺が打った…」
「それはもういいから」
「鏡月莉子さん」
「呼ばれるの意外と早かったな。朝一で来てよかった」
「打ち身だそうですが、どこを?」
莉子が包帯を解く。
――やっぱりまだ腫れてるなぁ
「どうしたんですか?」
「空手の組手でちょっとやりました」
「後ろの彼は?」
「そのケガをつくった張本人です。俺が彼女の足を傷つけました。責任をもって見守ります」
「とりあえず、レントゲン撮ろうか?」
レントゲン室
「ここは一人でいってらっしゃい。ただし変態がいたら大声で知らせて」
左足の外側の写真を何枚か取った。
再び診察室
「いつまで彼はついて回るの?」
「ケガが治るまででしょう?当然です!」
レントゲン写真を見た。
「あー、骨にヒビが見られるね?」
「どこですか?」俺が聞く。俺にはどこにもヒビが見当たらない。
「前の患者のと勘違いかな?骨には異常ナシ。と」
「筋肉には?筋とか。あと、神経」
「これから触診するよ」
膝より上を触ろうとした時、
「先生、彼女のケガの部位と膝から上の筋肉の関係ってどうなってるんですか?俺は膝までしか筋肉つながってないと思うんですけど」
「私も今腫れている部位が治ればいいので、それ以上は求めません」
「それじゃあ、塗り薬出すよ。あとは安静にして」
「塗り薬は腫れているところだけに塗ればいいんですか?」
「ああ」
「「失礼しました」」
「全くこれじゃ、うちの塗り薬で十分じゃないか!まぁ、骨に異常がないってわかって一安心だけど」
「本当に心配性なんだから、司は。でも今日はありがとう。いっぱい助かった。これからもたびたび道場に顔出すけどいい」だから、上目遣いで莉子に頼まれるとなぁ。身長差もあるけど。
「足、ちゃんと治すこと!道場にきても治ってなかったら何もできないぞ」莉子が凹む。
「んー。凹むな。足の治療はできるからな!」
――責任が重くのしかかる。足は俺のせいなんだよな…
メールにて「なんか本当に足、ゴメンな」
返信「まだ言うの?」
返信「治るまで、かなぁ?」
返信「あの…お姫様抱っこ。初めてだったんだよ」
返信「そうなんだ」
返信「男性でも軽々と女性を持ち上げる人少ないからいないの」
返信「へぇ、莉子は軽いじゃん」
返信「司が力持ちなの!毎日トレーニングでしょ?」
返信「そうだけどさぁ」
返信「今日はありがとうね。おかげでセクハラされなかった」
返信「あの医者、2・3回セクハラしかけてるからな」
返信「なんかちょっと怒ってる?」
返信「当然」
返信「明日、また二人だけで話したいことあるんだけどいいかな?」
返信「いいよ、もちろん。スマホを鳴らすなりして連絡して」




