気付けば過去に
「あー、やっぱ足が伸ばせる銭湯っていいよなぁ。日本人で良かったぁ」
と、司がほっとしたのも束の間。お湯が光り出した。
――銭湯の演出か⁈
そう思いながら、司はつい癖で周りの気配を読んでいた。
――いかんいかん。これが嫌で実家を出ているというのに、俺としたことが…
気づくとそこは見慣れた景色。
――実家…にしては新しいな?新築感がする。匂いも。
「おい、お前。どこから湧いてきた?他人の家で素っ裸とは破廉恥な」
――このクソ生意気なガキ。どっかで見たことあるんだよなぁ
司は気づいてしまった。俺(小)だ。と。
タイムスリップだと過去の自分とあったりするのはNGというのがセオリーだが?
「あら、お客?まぁ、素っ裸。困ったわね。とりあえず、お父さんの服でも着てもらおうかしら。うふふ」
母はこう見えても空手で俺より強い。俺は敵わないのだ。
かくかくしかじか説明した。
「あらそうなの?大変ね。そう、司君。成長するとわりと男前になるのね」
――あぁ、話のコシが折れてる…
「それで、未来の私はどうなってるの?」
「それは…見事に中年太りをして、肌もスッピンでは外出できない有様です」
「それは大変!どうしたらいいのー?」
「そうですね。まずは、あなたが今まさに口にしているポテチ。今はカロリー表示してないかもしれませんが、1袋で茶碗2杯分のカロリーです」
「そうなの?」
「ポテチを禁じましょう。それでだいぶカロリーの摂取が変わるはずです。間食は控えた方がいいですよ。あと、食物繊維の摂取がいいですね」
「ショクモツセンイ?」
「えーと、白滝とかコンニャクとかそういうのです」
――ざっくばらん過ぎだよなー
「お肌はー?」
「それは…ご主人とって俺の親父ですけど、夜の夫婦生活を続ける方が美肌効果が得られると思います。あとはミカンとかのビタミンCですね」
「それってレモンも?」
「レモンは皮に有害物質が含まれている場合があるし、一度に多量は摂取不可能なので、ミカンとか伊予柑がいいですね」
「ありがとー。司君」
――親の相談に乗りに来たのか?
「このあたりに銭湯ありますか?」
「あるわよー」
――来た時のとこだ。
「とりあえず行ってみます。俺の兄弟、増やしまくらないでくださいね!」
「やだ!司君てば!」
――やなのはこっちだよ…
俺は銭湯に行った。
――足を伸ばして風呂に入りたかっただけなのに、まさかの母の相談…。なんか疲れた
戻って来れた。