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第9話 『やっぱり異世界の服は目立つ』

すんません

「というわけで、町にいる間はこの姿だから」


声も見事に変わっていて、最早スグルの面影はない。


「こいつはスゲーよ、スグルくん…。どっから見てもベテランの傭兵だよ!」


「はは、流れ者に見えるように変えてるからね」


スグルの発明の一つ、認識改変装置である。

自分の意図するように外見を変化させることができる。

装置が止まらない限り変化したままだが、実際に触れた時に違和感が出てしまうことが弱点ではある。


「この姿ならパパって呼べばいいかな?」


「うーん、そっちの方がいいかもね。変な感じだけど…」


町に入ってからのことを打ち合わせて、ゲートをくぐる。

ゲートの先は人気のない路地裏になっていて、そこにも認識改変装置が設置されている。

暗い道を抜け、大通りに出る。


「うおおおお! 町じゃあ!! 人々の欲望渦巻く町にやってきたんじゃあ!!!」


「はぐれないようにね! 勝手にどこか行かないようにね!」


「わかってらい! あ! あの串焼き美味しそうだよぉ…」


「本当に心配なんだけど!? 約束守ってね!?」


スグルは不安を感じ、夢子は浮かれ気分で必要なものを色々と買い込んで行く。

夢子の服などの生活用品に、当面の食料。

服は買ったうちの一着にすぐに着替えた。

街中で目立たないようにである。


買う度に荷物はスグルの発明である圧縮スペースに入れてある。

どんな荷物も、すいすい入れて持ち運べる便利な道具だ。

勿論、世間には公開していないので、店から離れたところで入れるようにしている。


所々で夢子がヘンテコなものを欲しがり、スグルがそれを止める。

そんな感じで粗方買い終わり、食事ができる酒場へとやってきた。


「ここの料理美味しいんだ。なんでも好きなものを注文してね。オススメはミノタウロスステーキだよ。」


「じゃあ、私はそいつにする!」


「じゃあ、ミノタウロスステーキ2人前に、エール二つ頼む!」


スグルがカウンターに声をかけると「あいよっ」と返ってきた。


「エールって何?」


夢子は自分の分も頼まれたであろうエールが気になっていた。


「飲み物だよ。庶民に親しまれているお酒だね」


「お、お、お、お酒ぇ!? だ、だだだめだよ!」


「あははは。異世界勇者の噂は本当だったんだね! 本当にお酒がダメって言うんだね! あははは」


この世界では15歳から飲酒してもいい事になっている。

しかし、勇者達の世界では『お酒は二十歳から』の認識があるため、驚く者が多いという噂があったのだ。

スグルはそれを確かめるためにエールを二つ注文したのだった。


「ぐぎぎ…。やってくれたね、パイセン…。その噂とやらを検証するためにやったんだね…」


「ごめんごめん。まさか本当だったとは。マスター! エール一つキャンセル! フルーツジュースにしてくれる?」


再びカウンターから「あいよっ」と聞こえてくるのだった。




「それにしても、外食なんてワクワクするね。ふふふ」


夢子はニコニコしながら料理を待つ。

外食の『特別な日』という感じが夢子は好きだった。


「そんなに喜んでくれるなら連れてきてよかったよ。でも、料理を食べたらさらに喜んでもらえると思うな」


「ほほー。そいつは楽しみだよー!」


そんな話をしていると、料理が運ばれてくる。


「いただきまーす!!」


夢子は間髪入れず肉にかぶりつく。


「うんめえええええ!!!」


ものすごい勢いで肉を喰らっていく。


「やっぱり、すごく気に入ってもらえたみたいだね」


スグルは嬉しそうに目を細めて笑う。

しかし、あまりに優しそうな笑顔をするものだから、今の外見とのギャップに、周りから注目されてしまうのだった。


この時、二人は大きなミスをしていた事に気がついていなかったのだった。

本当にごめんなさい

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