第8話 『意外な奴が家事スキル高いのはあらゆるジャンルのお約束』
すんません
2人で暮らすことになって数日が経った。
スグルが『なぜここで暮らそうと思ったの?』と聞くと、夢子は『極力人に会わなくて済むし、町へもゲートを使えばすぐに行けるから』と答えた。
なるほど、とスグルは納得した。
納得はしたが『本当にこれでいいのか?』という気持ちは拭えないのであった。
そんな悶々とした気持ちを持って夢子と過ごしていたが、夢子は思いの外しっかりとしていた。
料理や共同スペースの掃除など、頼みもしないが率先して行ってくれた。
研究を行ってる部屋には、スグルに用がある時以外立ち入らない。
スグルにとって、非常に心地よい形で関わってくれた。
だから何となくこのままでいいかなー、と感じ始めていた。
方や夢子はというと、これもまたしっくり来ていた。
スグルの為に料理や掃除をすると、彼は感謝と労いの言葉を夢子にくれるのだ。
最初は、自分を助けてくれたことに対する感謝と、孤独を抱える彼に対する同情であったが、今はこの生活が楽しいと感じていた。
つまり、二人は上手くやっていけたのである。
◇◇◇
「スグルくん! 食料が残りすくないんだよ!」
「そっか! 二人分になるし、夢子がきちんと作ってくれるしで、消費が増えるもんね…。失念していたよ」
「す、すまねぇ…。オイラはとんでもねえ穀潰しだぁ…」
「そんなことないって! 夢子がいてくれてすごく助かってるんだから!」
「うぅ…。ありがてぇです…」
泣きながらも食事を摂り続ける夢子を見て、きちんと日頃の感謝が届いていることを実感するスグルであった。
「それはそうと、食料を買い出しに行かないとね…」
「ということは…?」
「はい。ついに行きます。町に」
「いやっふー!!!!」
椅子から立ち上がり、ぴょんぴょんと跳ねる夢子。
「ごめんね、夢子は町に行きたかったよね。早く機会を作ろうと思ってたんだけど、研究を優先してしまって…」
「謝ることなんてないよ。こちとら居候の身だしね。私も機会があったら行きたいと思っていた程度だし」
夢子はおねだりしなかったし、スグルも敢えて聞くことはなかった。
スグルにとって、町は出来る限り近づきたくない場所であったからだ。
変装をして、スグル・カンザキであることはバレないようにしている。
しかし、いつどんな方法で明るみになるかわからない。
そして、それ以上に目にしたくないものもある。
「さあ、準備して出かけよう。夢子の生活に関わるものも買おうね」
「何から何まですまねえなぁ…」
と言いながらも、心の中はウキウキしている夢子であった。
本当にすんません