第6話 『スグルのさいなん』
すんません
「ちょっ、ちょっと待って夢子! 付けたってどういう事?」
「なんかね、表示された文字を書き換えることができるんだよ。やっぱりこれってズルいやつ?」
「な、なに言ってるの…?」
「あ!! ちょっと待ってね! ひょっとしてこれって…。ああ! やっぱり間違いない!! スグルくんも体験すればわかるよ! えいやえいや、と。ふふ、パンのお礼も兼ねちゃおう!」
「な、なにを…。えっ!?」
突然溢れんばかりのパワーがスグルの身体の内から湧き上がってくる。
「ふっふっふ。これで最強だよ、チミィ」
スグルは慌てて自分自身を鑑定する。
「れ、レベル999!?」
「いやー、4桁にすると身体が耐えられなくて破裂しちゃうんだよね。だから多分これが最強」
「ちょちょちょ!!! も、戻して!!戻して!!!」
「はえ? 戻すの? いいけど…」
スグルの中で暴れていたパワーが一瞬で消えた。
夢子の言う『書き換える』が途轍もなく恐ろしいものであることを理解する。
「夢子…。この力は危険だ…」
「おお、やっぱり…。ワンチャンよくあることかも知れないって思ったんだけど…」
「そんな訳ないよ! 僕のレベル48だって、国によっては最強の戦士になれるくらいなんだから! レベルが3桁になるなんて、認識すらされてないよ!! 召喚勇者もレベル83が最高で、99が限界であると予想されてるくらいなんだから!」
「じゃあ、こっちにしようか。ほい!」
ジャラジャラジャラ!!!
スグルの背後で金属音が鳴り続ける。
恐る恐る振り向くと、金貨が山積みにされていた。
それは、スグルが生まれた国のものであっだ。
自分の出身国など目の前の女の子は知りようもない。
「ふっふっふ。これで好きに生きたまえよ、チミィ」
「は、は、は、早く戻してっ!!!」
「えー! 欲のない人だね…。ほいっ」
目の前の金貨が一瞬で消える。
「夢子が出したってことでいいんだよね…?」
「そうだよー。スグルくんの所持金の欄を9で埋め尽くしてやったぜ」
スグルは目の前の存在に対し、どんな感情を持っていいのかわからなかった。
映像で見た時は『可愛い子だなぁ』なんて思っていたが、あまりの規格外にそんな気持ちはどこかへ飛んでしまった。
「夢子、いいかい? その力は無闇矢鱈に使ってはいけない。夢子がその気になれば世界を簡単に狂わせてしまえるんだよ?」
「そんなことわかってらい!」
「そんなことって…。僕のレベルを999にしたり、所持金を9で埋め尽くしたり、やりたい放題じゃないか…」
「それはスグルくんだからしたんだよ!」
「僕だから…?」
「スグルくんなら絶対に悪いことしないから」
ドクン、とスグルの胸が弾む。
「そ、そんなのわからないじゃないか! 会って1時間も経ってないんだよ!?」
「わかるよ」
夢子はまっすぐな目でスグルを見つめる。
「どうしてそんなに…」
「だってここに書いてあるもん」
可愛い女の子からの信頼は、スキル情報によるものだった。
「えええええええええ!? そんなことまで書いてあるの!? 本当にどうなってるの…」
「ずっとそうなんじゃないかと思ってたんだけど、これってチートなんだね、やっぱり」
「ズルってこと…? ま、まあ、お金も経験値も頑張って稼ぐものだしね…」
「他にもたくさんあるんだ…」
そう言うと、夢子はポツリポツリと自分の事を話し始めるのであった。
本当すんません