第4話 『感動!!君も泣け!!』
すんません
とりあえず沈黙に耐えきれなくなった夢子が口を開いた。
「あの、どちら様ですか…え? スグル・カンザキ?」
突然表示された文字を見て名前を知る。
「え!? なんで僕の名前を!?」
突然現れた男は突然名前を当てられて驚いていた。
「君、鑑定が使えるの…? 見かけによらずすごいね…」
「すごい? これみんな使えるんじゃないの?」
「えぇ!? ひ、ひょっとして君は異世界から来た勇者…? え、でもこの国に勇者召喚する技術なんてないよね?」
お互い頭の上に?マークを浮かべる。
「私は金石夢子。勇者?ではないよ」
「君は…何処から来たの…?」
鑑定を使えることがどういうことか知らない。
それは、この世界に住む人間には有り得ないことだった。
鑑定が使えれば、仕事は選び放題だし、自ら商人になることだって視野に入る。
文明が遅れた地域でも鑑定は認知されていて、この国でも昔は『生き字引』何て呼ばれていたそうだ。
それを知らないということは、『この世界の人間ではない』ということになる。
そうなるとまず思い当たるのが『勇者召喚された異世界人』である。
異世界の勇者は簡易的な鑑定を全員が持っている。
しかし、勇者ではないと言うし、そもそも勇者がこんなところにいるのがおかしいのだ。
魔王軍に対抗する為に来たとしても、まだ召喚されて日も浅いはずだ。
殺されに来たようなものだ。
そもそもこんな地方の山奥に来る理由がない。
「私もなんでこの山にいるかわからないんだけど、元々は山梨に住んでたんだ。ここ山梨であってる?」
「君は…。異世界の人なんだね…」
「イセカイ? 山梨だよ?」
「君がどんな状況でここにいるのかわからないけど、ここはね…」
スグルはこの世界のことを夢子に教えてやった。
「た、確かにおかしいと思ったんだ…。普通、突然文字が浮かんだりしないもんね…。もぐもぐ」
スグルに分けてもらったパンを齧りながら夢子は答えた。
ここ数日酸っぱい実しか食べていなかった夢子は泣きながら食べていた。
普段なら嫌がるような硬いパンでも、今は泣くほど美味かった。
「この世界でも突然浮かんだりしないけどね…。普通は何かしらのアクションを起こさないと発動しないんだ。ひょっとして君の特殊スキルなのかもしれない…」
「ほほう。確かに便利なんだよね。勝手に出てくるしね! ふむふむ、君は研究者でレベルは48か!」
「勝手に見えちゃうのは仕方がないけど、人のレベルやスキルを口外しちゃうのはマナー違反だから気をつけてね…? オート鑑定なんてスキル、聞いたことないな…。これは未確認の新スキルかもね」
「そ、そうなんだ…。気をつけるね…。あ、スグルくん、年上なんだね」
「言ったそばから…。え? 今、なんて…」
「スグルくん、19でしょ? 私17歳! スグルパイセンって呼ぶ?」
「ちょ、ちょっと待って!? 君、鑑定で年齢が見えてるの!?」
「見えてるよ? 」
「人物鑑定は普通『名前』『レベル』『スキル』が表示されれば最上級なんだ。『年齢』なんて聞いたことないぞ…?」
「そうなの? あと『状態』ってのもあるよ。スグルくん、寝不足と肩凝りついてるよ。あ、今混乱もついた」
「な、なんだそれ!?」
「うお、これ画面動くぞ? 下にまだある。『所持金』に『所持アイテム』に『装備』に…?」
「な、な、な、なんじゃそりゃ!?」
しかし、スグルが本当に驚くのはこれからだったのである…。
ほんとマジすんません