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第3話 『夢子ビックリする』

すんません

困っている男がいた。

この国へは他人と関わらない為にやってきた。

自分が研究成果を発表する度に、人が揉める。

それは次第に大きくなり、行き着く先は…。

ただ、自らが知りたいが為に研究をしているだけなのだ。

世界を混乱させたい訳ではないのだ。

それ故に、誰にも知られることなく研究を続けたい。

そんな思いを叶える為に、文明的な発展が遅れたこの島国へとやってきたのだ。

その島国が魔王軍に占領されてしまった。

それはどうでもいい。

人気のない森の奥に地下施設を作り、そこで研究をしている。

魔王軍に見つかる心配は今のところない。


では、何に困っているのか…。

森に数カ所作った出入り口の一つである山小屋に、女が住み着いてしまったのだ。

こんな山奥の山小屋だ。

今までも一晩過ごす為に立ち寄る者はいたが、さすがに住み着いてしまう事はなかった。


使い魔を使って監視をしてはいるが、入口が見つけられてしまうのではと心配になる。

まあ、見つかってしまったところで特に問題はないのだが…。


では何に困っているのか。

男は望んでここに来たが、望んでこの状況になった訳ではないのだ。

つまり、『会いたくないけど、会いたい』のだ!!

もっとシンプルに言うのであれば『人恋しかった』のだ!!

しかし、自分の所在が知られてしまえば、自分の研究成果を欲する者がやってくる…。

相反する気持ちに揺れ、困っていたのだった。


「お話したい…。いやしかし、ここを知られるわけには…」


今日も女は日が沈む頃に帰ってきて、微妙な顔をしながら果物を齧る。

男も知っているが、あれは酸っぱい。


「あの実を食べ続けるのは辛いよな…。俺の持ってる食べ物をわけてやれば…。いやいやしかし…」


男が悩んでいると、使い魔からの映像で女が泣き出してしまった。


「酸っぱい…。酸っぱいんだよ…。もう無理だよ…。何か別のものが食べたいよ…。うおおおん!うおおおん!」


男はその姿を見て覚悟を決めた。

『そうだ、正体を知られなければいい!』と…。


◇◇◇


夢子はもう限界だった。

突然やってきたこの世界でもう三日過ごした。

この森から出られず、暗くなる前にこの小屋に帰ってくることを繰り返していた。

夜の森は恐ろしい。

夢子はそれを知っていた為、ここを拠点として、時間ギリギリまで直進した。

人が住んでいる場所を求めて。

しかし、ここまで成果無いのであった。


食べるものも酸っぱい実しか確保できず、今日もそれを齧る。

もはや精神的に限界で、泣き出してしまった。


「うおおおおん!うおおおおん!」


泣き続けていると、部屋の隅からスタン!と大きな音がする。

夢子はビックリしながらそちらを見る。

棚が勝手に動き、置いてあった場所がパカっと開かれた。


「ここ、こんばんは…」


突然挨拶された夢子は、


「こ、こんばんは…」


と返すのであった。

マジですんません

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