第12話 『夢子、世にも奇妙な世界の扉を開く』
少しでも書けるように頑張ります
結果として、その企みは失敗に終わった。
そして、夢子はちょっとした恐怖を味わうこととなった。
ものは試しだとばかりに、夢子はすぐさまスグルの名前を『モロヘイヤ・カンザキ』に変える。
特に理由はない。
頭に浮かんだからだ。
「ほら、夢子! 早く試してみてよ!」
「ふっふっふっ、すでに完了しているよ」
「えっ…。てっきり僕の名前を変えるんだと思ってたんだけど…」
「すでに変わっておるのだよ!」
「えっ…僕の名前、モロヘイヤ・カンザキのままだけど…」
「えっ…」
変な間が流れる。
「き、君はスグル・カンザキ君だよ…。もう変わってるんだよ…。えっ…」
「何言ってるの。僕はモロヘイヤだよ。からかっているの?」
ふざけているのかと思いきや、目はマジである。
急に怖くなってきた夢子は、慌てて『スグル・カンザキ』に戻す。
「まったく…。夢子、ふざけてないで早く実験してみてよ」
「ダメこれ!ダメなやつ!だめだめ!!」
怯えて首を左右に振る夢子を見て、頭にはてなを浮かべるスグルであった。
◇◇◇
「つまり、名前の改変は夢子以外は認識できないのか…」
「そうみたい…」
「でも、レベルやお金は変えられた方も認識できたよね? この違いはなんだ…」
「スグルくん…。私、怖いよ…」
夢子はすっかり塞ぎ込んでしまった。
当たり前だと思っていたことが突然崩れる恐怖をスグルも知っている。
だからこそ、夢子の気持ちを理解できた。
「とりあえず、名前の変更は使わないことにしよう。どんな不都合があるかもわからないしね…」
「そうする…」
「当分、街へ行く必要も無いしさ。ここで好きなように暮らせば、その力を使う必要もないよ」
「スキルで増やしたものだけど、お金はちゃんと出すからね…」
「切羽詰まったら頼るかもしれないけど、今は蓄えも十分あるし、大丈夫だよ!」
「ありがとう、スグルくん…」
夢子は目を潤ませながら、スグルに感謝するのであった。
◇◇◇
「ほう、ついにスグル・カンザキの尻尾を掴んだか」
水晶越しに会話を聞き、呟く。
水晶に映されているのはスグルの正体がバレた国の国王だった。
「此奴はスグルの頭脳にご執心だったからな。網を張っておいて良かった」
「早速カムナギ国へ向かいましょうか?」
腰に剣を差した男が尋ねた。
「私も行くとするよ。痕跡探しは、あんたじゃ出来ないだろ?」
「得意ではないですね」
男は特になんの感情もなく、それを認める。
「スグル・カンザキ…。お前に平穏な暮らしなど、ありはしないんだよ…!!」
穏やかに続きそうであった二人の生活は、分かりやすく音を立てて崩れ去ろうとしているとかしないとか…。
本当にすみません