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定期報告

あらすじ

ヒラノ達研修パーティーはスライムの管轄である森で

魔王へ定期報告をいれる事にする 僅かな危険に魔王は

ヒラノに戻って来るように勧めるのだが...

 あれから時間にして30分後の事

ズウとは治療のため一度別れ、ヒラノ達三人は魔王軍に提示連絡を入れることにした

異世界における通話方法は驚く事に電話に近い物が開発済みであり

番号入力でなく、名刺を差し込む事で通話相手に直接繋がる仕組みらしい

勿論魔術で遠く離れた相手と話すこともできるらしいが

魔力燃費も良い現在の形が魔王軍内で普及、各支配地域との連絡手段として用いられている。


「なるほど人間達の狩人ねぇ......確かなのかい?」


 連絡用の隠し小屋にてオッグ・レフゥは細かく数時間の間に起きた事を報告

通信相手である魔王の半透明な映像が玉座と共に写し出される


「リザードマンの話も信頼するなら人間の狩人は随分前から

大胆な狩猟行為を森の近くで行っているようです スライムの旦那が確認してる所ですが」


 ふぅむ、と首を傾げる魔王 二人の報告を聞いた上にヒラノの無茶をした事実も合わせて

撤退すべきか、それとも続行させるかを考えているのだろう

二人の後ろで土下座の体制のまま動かないヒラノに魔王が眼を向ける


「今回の独断先行は誉められた行為じゃない、というのは既に言われただろうし

怪我もしていない点から君を特に責めたりはしないよ ただねぇ......」


 魔王が手をかざすと、森全体の見取り図が小屋の壁に表示された

ヒラノも一度顔をあげて森の見取り図に視線を向ける かなり大きいが主要な森の区分は4つ

 今ヒラノ達が魔王軍に連絡を入れている中央森林、比較的安全地帯と言える休憩スペース

そこから南に進むと際奥森林、魔王城周辺への行く手を阻むために魔物達が巡回している場所だ

中央から東にはッズウ達リザードマン達のような部族の住む東部森林があり

西には魔王軍が管理している植林場と木材加工場のある西部森林が存在する。

 魔王の提案としてはヒラノ達三人に一度魔王城への帰投の後、スライム率いる部隊で

各森林地帯を捜索、ならびにリザードマンやラミアー達と相談し防備の強化を済ませた後

再び研修を再開する、というものだ 無論強制ではなく本人の意思を尊重はする


「狩人の中にいた初老の男は手練れと見ていい、レベルも今の君よりずっと強いだろう

森を担当しているスライム君のlvは99、並の狩人じゃやられるなんて事はないけど どうする?」


「僕は......正直さっき矢を射られた怖さが抜けきってないです」


 静かに全て言い終わるまで待つ魔王、口を挟まないようにとレフゥとオッグに眼で指示を送る

ヒラノは思い出していた イヤ思い出さざるを得なかった 誰だって殺されそうになれば

その瞬間がフラッシュバックするものである 加えてヒラノは英雄の素質もなければ勇者でもない

この異世界における、一般人程度の存在でしかまだないのだ 決して彼が臆病なわけじゃあない


「今も思い出しても怖いですし、正直もうイヤだって思ってます......!!

でも僕はッ()()()()()()()()()()()()から!この研修を完了させてから帰りたいです!!」


「それでこそ男の子!!」


「うぅ、ヒラノ君偉い...!!研修終わったらご馳走だね」


 後ろでオッグが拍手し、その隣でレフッゥが腕組をして頷く

ヒラノの回答を聞いて少し間を置き小さくため息を吐き玉座から立ち上がる


「ではヒラノ君には一度リザードマンとラミアーの共同集落に出向き

教育係兼護衛役二人と共に集落の防備強化に関して策を立ててもらいます

森の中で狩人と遭遇時は己の身の安全を最優先に考え行動すること」


「は、はい!!」


「ただし一つだけ条件を、今度は一人でどうにかしようなんて思わないこと

これだけは何においても厳守すると約束してもらいます できるね?」


「ご安心を魔王様!オイラ達も全力でヒラノ君を守りますからぁ!」


「次に人間見つけたら見敵必殺しますんでご安心を!」


 すぐ隣にいるのが正に人間だという事を忘れ意気込む二人

まだ少し心配ではあるのか 魔王は苦笑しながら頷く

次の報告はリザードマンの集落到着後とし、通話終了とした。


 その頃魔王城では......


「アアアアアアアアアアアアッ!!心配だぁッ!!」


() ()() ()() ()() ()() ()() ()() ()() ()() ()() ()() ()() ()() ()()


「だから言わんこっちゃない...同じ人間だからって向こうからすれば

魔物と一緒にいる怪しい奴判定なんですから 攻撃されるの分かるじゃあないですか」


「だぁって普通思わないじゃないかぁ 今は秋頃だから蓄えの為狩人が活発化すると言えど

草原地帯の先にある街道周囲くらいしか安全な狩り場はないんだしさぁ」


「その件に関しましては既に斥候が偵察に......どうにも王国側の増税が原因と思われ

それに伴い狩猟ノルマがまた増えてしまった事から、だとか」


 玉座で頭を抱えながらも魔王は深く長くため息を吐く

この魔王城と直線距離で9700km先、四つの山と七つの集落を束ねた国がある

傭兵から護衛に始まり、狩猟討伐も金額次第で請け負う者達

所謂冒険者達が集うギルドの本拠地でもあり......魔王とは切っても切れない存在

勇者パーティーが【いた】そんな魔王としては厄介と面倒と迷惑なのが

通称王国 正式名称【勇樹王国】 狩人達はそこから少し離れた平原から300m先の村

そこで静かに暮らしているだけの ただの狩人だったらしい

しかし国からの増税は常に彼らの生活と暮らしを苦しめていき

ただの平凡な狩人達を危険に踏みこまざる得なくしていた。


「聞けば、内一人が残る狩人を制止して撤退したんだっけ?」


「実力のあるご老人ですね、恐らくレベルもあります

ですが今から森へ部隊を送るにしてもスライム様への申告には数分のズレが」


「ヒラノ君は人間だ、極力平和的解決を望みたがるだろうけど

向こうは本気で仕留めに来るかもしれない...今は少しでも彼らの身の安全の為

無事に集落にたどりつけれる事を祈りつつ、森全体の警戒強化を優先しよう......秘書くん?」


「森に配備されたゴーレムは既に起動準備に入っております

スケルトンとゴブリンも既に擬態装備で向かい明日には森への哨戒が開始されるかと

中央森林から哨戒を開始し、各方面へ1000人体制で捜索致します」


「先住民への警戒勧告も急いでくれ、必要なら魔王城下へ避難誘導も」


「ガーゴイルを既に向かわせております ご安心下さい魔王様

侵入者はヒラノ様に見られぬよう 始末するようにと再三説明致しましたので」


 静かにお辞儀をする秘書、その報告に一先ず珈琲を口に含み

森全域を記した地図を広げては次に来るだろう報告にすぐ対応できるように神経を研ぎ澄ます


 場面は戻ってヒラノ達のいる群魔の森中央森林ではヒラノ達がズウと話していた

一先ずの治療が終わったズウに自分達の次の行き先と魔王からの指示を伝え

その上でリザードマンの集落への案内と紹介を頼む事にしたのだ


「そういう 事であれば ズウ 了解した

ズウの集落 東部森林 湿地 そこにある ズウ 案内 しよう」


「傷の具合はもう良いのかい?リザードマンは自然治癒薄いんだから

無理そうならアタシが担いでやっけど?それか適当な枝で杖にでもするかい?」


「ズウ 強い身体 このくらい 問題ない

ズウ 竜剣士 ヒラノへの借り お前達 案内する その前

世話になった スライムへ お礼 言いたい リザードマン 礼節 重んじる」


「出発は明日の早朝 ズウさんが案内するルートで...」


「一度そのルートでズウが襲撃受けてるなら、別ルートの方がいいだろ」


 ヒラノの言葉を遮ったのは管理者スライム

その後ろには武装したスケルトン達が30人森の捜索と警戒を行う為

スライムが召集した方々らしい、全員が森の中での戦いを想定して

装備は緑で統一、マントは落ち葉などを張り付けて迷彩効果も付与してある

武器はダガーと呼ばれるショートソードよりも短い剣と弓と軽装ながら

彼らの実力は戦闘ド素人のわかる こうして集まっている時も周囲警戒を怠る様子もない


「スケルトン小隊を道中20m感覚で配備しておく

件の湿地までは直線140mだが、狩人連中が森の中に潜んでるとも分からん

新人は研修中だし、そっちのリザードマンはまだ万全とは言えない

分かるか?研修パーティ、戦えない奴と戦力低下した奴抱えて長距離移動だ

敵との接触は避けなくちゃあならない 夢物語じゃあねぇしな」


「そりゃあ分かってるさ でも湿地まで遠回りかぁ...途中で夜営しないとか?

なぁおやっさん、湿地に続く道中って夜営できそうな場所あったかい?」


「巡回スケルトン用の駐屯地ならある、まずそこで一度夜営と定時連絡

そんでテントで休ませてもらって早朝出発すりゃあ着く筈だ駐屯地には隊長スケルトンが必ずいるから

事情を話せば食事も寝床も提供してくれるぜ?とにかく無理するんじゃあない

根性論で成果は出ないしお前らの研修が終わるわけもねぇ 作戦は常にいのちだいじに

気を付けていけよ 新人+α お前らが怪我するだけでも魔王様は悲しむんだからな」


そう言うとスライムさんはスケルトンを連れて森の奥へ スケルトン達は

ヒラノ達に手を振りながら、彼についていき ヒラノ達は中央森林からの移動を開始する


「そういえばスライムさんの、指鉄砲?みたいなアレは何かのスキルなんですか」


「あぁ、おやっさんは体当たりしか使えないよ?」


「え、体当たり?いやでも指でこう......]


見よう見真似でスライムさんがしていた指鉄砲を作って見せる え?あれが体当たり?

全身で勢いをつけてドンッとぶつかる体当たり え、指鉄砲作って体当たりするの?

そんな疑問を解消するようにオッグさんが続けて説明してくれた


「おやっさんは体当たり極めすぎてね 自身の身体を小さく分裂させて

それを矢のように飛び出させて攻撃する創作スキル 体当たり【遠】を習得してさ」


「遠距離に飛ばせるんですか!!?体当たりなのに!?」


「おやっさんの体当たり、対空技から対群技まで全部体当たりでこなすからねぇ」


「ズウも それは 引く」


「良かった!おかしいと思うの僕だけじゃなかった!!」


「しかも全身どこからでも分裂体を飛ばせるから死角もないわけだねぇ

魔王軍で体当たり最強のスライム、それがおやっさん 体当たりを教えてくれたりもするし

この研修が終わったら教わってみたらどうだい ヒラノ君まだ攻撃スキルないでしょ」


 ギョッ、とズウがヒラノの顔を見つめ信じられないとヒラノを見つめる

適正と魔王軍に入ったばかりというのは聞いていたが 戦闘スキル皆無は初耳だった

装備は確かに魔王軍でも人間の冒険者でも適正問わず装備できる物だ

武器もショートソード 他と違うのは背中に背負ったバックパックだけか


「ヒラノ 戦い 苦手か ズウ 戦う 得意 もしもの時 守ってやる」


「え、でもズウさん怪我がまだ」


「いいんじゃない?ヒラノくんはlv1だし人間を殺す事も出来ないだろうし

緑狼相手を解体してる時も吐いてたからねぇ この研修中はお言葉に甘えておこうよ」


「まもるーーーーーーーーッ!!」


ズウが自身の獲物でもある骨鋸(ボーンソー)を振り上げて気合いを入れると

オッグとレフゥからは笑いが溢れる 守られる本人は申し訳なさそうに頭を何度も下げながら

森の奥を進んでいく、先頭はレフゥが生い茂る草を切りながら進み 体重のあるオッグが道を踏み鳴らす

その後をヒラノとズウが進みながら時おり遭遇するスケルトンから情報を得つつ

一同はスライムから聞いていたスケルトン達の駐屯基地を目指す事にした


【スケルトン駐屯地】

派遣されるスケルトン全ては、派遣場所に必ず拠点となる駐屯地を持つ

連絡から装備変更、魔王からの指示を他の魔物に告知したり緊急時の避難誘導も行う

魔物達の会合が開かれたり 魔王の視察時の拠点にも使われたりと同じ軍門の者には

オープンに利用されている そんな場所で隊長を勤めているスケルトンは......


「よぉこそおいでなさいましたァ...!!自分は駐屯地の責任者である隊長スケルトンのぉ

アバスケ、とぉいいまスケェ ここまでの道程ぃ ご苦労様でスケェ!!

どうぞぉ研修生のぉヒラノさんにィ 新たな魔王軍への加入者ァリザードマンのお客人

魔王様からァお話は聞いておりますゥ 同時に管理者であらせられるゥ

スライムのおやっさんからァ丁重にもてなしてサポートするようにともォ」


「お世話になりますアバスケ隊長!」


「世話 ナル」


 アバスケ隊長にヒラノがお辞儀をし、それを見たズウも真似て頭を下げる

今日はこのまま駐屯地に宿泊し明日の早朝再度リザードマン達の集落がある湿地へ向かう事になる

その為にもまずは腹ごしらえ 食堂で何か食べていくようにと一同は食堂に通された

食堂の中は正に百鬼夜行、スケルトンを中心に鬼のような顔をした種族からゴブリンに

生首だけしか存在しない半透明の幽霊までが各々食事を楽しんでいる


 元いた世界と変わらない見慣れた食堂の光景、四人は適当な席に着くと

注文を取りに別のスケルトンがやってくる メニューを各々開いて

各々が注文していく ヒラノにはまだ馴染みのない文字なので注文にはオッグが手伝い

ヒラノはハンバーグと目玉焼きにトーストにコーンポタージュにサラダを注文した


「今日はこのまま宿泊するけど、その前に定期連絡はすませまわないとねぇ?

隊長さんよ 通信部屋を後で使わせてもらうからね 今回はズウも一緒にね」


「道案内をお願いしてる以上は魔王様に紹介しないといけないから まぁ気楽にね」


「ムグムグ わかった 魔王様 挨拶 する」


「一先ず食べてからにしましょう」


まずは馴染みのあるトースト、焼きたてなのか手に持つとじんわり温かく

表面はカリッと、しかし割いて見れば中はふんわり、湯気と共にあがる香りが食欲をそそる

味は元の世界より小麦の香ばしい香りが強い 外見はバターロールのようだが

バター特有の塩気は薄い コーヒーと良く合いそうだ


 次はコーンポタージュ、粒が大きいが見た目に差異はない

口に含むと分かるが塩気よりも甘味を強く感じた 一粒一粒大きいので噛むと

シャクシャクと小気味のいい音はポタージュと思えない満足感を感じさせる

あらかじめ器を暖めてある上に トロリと飲み込んだ後も体の奥で熱を感じ取れる

長距離を移動してきただけに、その暖かさはため息がでる程の安心感がたまらない


 ハンバーグ、こいつが問題だ 存在感が質量と同じでスゴく大きい

ズウさんの拳くらいの大きさがある ナイフで切り分けようとすれば弾力にまず驚く

程よくナイフに逆らいつつ、しかしナイフが通ればスッと下まで切れる柔らかさ

しっかりとした焼き加減、柔らかいだけのハンバーグは邪道 そう言わんばかりに

肉の弾力=溢れる肉汁の量 フォークを刺すだけで肉汁がジュワッと溢れる

付け合わせのニンジンとポテトで口を休めながら食べ進めば気づけば皿は空に

......だが!それだけでは終わらない!皿に残っている肉汁をトーストに付けてパクリ!

行儀が悪いとは思うがパンの甘味に肉汁の塩気が合わさって病み付きになってしまう


「た、たった一皿でこの満足感......!!もうグルメ物じゃないかってくらいの美味しさ!!」


「オムレツ ふんわり 持ち帰り だめ? そうか だめか......」


「我が基地の食堂は一般解放でスケェ 今度はご友人も連れてお越しくだせぇ」


 果実のように甘いトマトと瑞々しい葉物野菜、レタスに近い食感のそれに

さっぱりと酸味のあるドレッシングが絶妙のサラダで口の中をさっぱりさせた後

少し一息がてら ヒラノは道中で聞いた様々な単語を覚えている限りでメモに記録していく


魔王軍 魔王 様々な魔物 緑狼 スキルについて そして【狂毒】

そういえばスキルが発動した時 なんと表記された?

周辺にはないと表記されていた筈だが それなら彼らはどうやって手に入れたのだろう

そもそも狂毒に侵されるとどうなってしまうのか具体的にはまだ説明されていない


良い機会だ この後の定期報告で質問してみるのも面白いかもしれない

本当にお待たせしました第七話!!

よければ感想頂ければ最高です!!!

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