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目指す目標は群魔の森

ヒラノ達が出発する少し前の事・・・

魔王軍領土 魔王城 謁見の間にて

名もない魔王の傍らに立つ秘書サキュバスは

二歩前に出て後に魔王に振り向かぬまま訪ねた


「魔王様、お二人が付いてると言えど

いきなりレベリング研修に行かせるのは些か早急では?」


「不安かい?戦う力がない人間を外に出すのは」


「ヒラノさんはレベル1、しかも荷物持ち

スキルもまだ戦える物が一つもない状態なのです

引率者が二人いたとしても、領土の外は危険すぎます」


ふむ、と玉座に背を預けながら頷く

頬杖をつきながら魔王は静かに面接時の履歴書を取り出す

これまでどう生きてきたか 職歴 家族構成

健康診断の結果に付け加えて趣味や子供の頃の夢も記されている

兜の下にある瞳をスゥーッと細め指でなぞる


横目でその様子を見ていた秘書はため息を一つ

腕を胸の前で組み 魔王の方を振り向く

彼女の言い分全てを分かっている上で反論せず全て聞いていく

遮る事は無粋な事なのだと丁寧に一言一句全て聞き終われば

ゆっくりと玉座から立ち上がり、履歴書を秘書に手渡す


「見知らぬ魔王の領土より、見知った緑の方が落ち着くだろう?

彼自身の不安はこの先の職務に大きく関わってしまう

このレベリング研修は彼の心のケアと

異世界の空気に少しでも慣れて欲しいのがあるんだ

正直レベリングの成果なんて求めてない

成果があるとすれば、彼が少しでも自身を持ってくれれば

それこそが一番の成果に繋がるんじゃあないかな」


「回りくどいですね、下積みをさせるだけではいけないのですか?」


「最初から教えなくてはならない仕事内容より

本人次第の自信が今は必要なんだよ この魔王軍ではね」


「彼、無事に戻ってこれますでしょうか」


「大丈夫さ、引率者に彼らを選んだのにも理由はちゃんとある」


再び秘書はため息の後、履歴書を脇に挟み

メモ帳を取り出して職務に戻る 何事もなく後は二人に任せる

多忙でなくても職務がある 故に助けに自分はいけないが

魔王様が選んだ相手であれば大丈夫だろうと期待も込めて


「それでは魔王様、本日のご予定ですが・・・」


「最初はゴルゴーン達主催の新作サングラス展示企画だったっけ?」


「注意看板の設置に広告の作成、会場の手配に主催者との会食も御座います」


基本、魔王様は一日のスケジュールを詰め込みすぎない

急ぎの用事でない限りは一つの予定を丸一日かけて丁寧にこなしていく

そんな仕事ぶりだからか、魔王様を嫌う配下はなく

最早無数と言う言葉がしっくり来る程の数を纏めあげているのだ。


「ヒラノ君も頑張っているんだ 僕もしっかりしないとね!」


そう言ってマントを翻し魔王は玉座の間を秘書と共に後にする

・・・さて、そろそろ物語の主人公達 巨人便を利用して

盛大に吹っ飛ばされたヒラノ一行に物語の視点を戻そう


「これが巨人便なんですかっ!?おっ落ち!落ちるぅうう!!」


「巨人便で使われる結界は特別頑丈だから心配しなさんな!」


「最初はビックリするよねぇコレ・・・

でも本当に結界は頑丈に出来ててさ、多重構造になってて

外側に衝撃吸収用の結界を何重にも重ねて

内側は外に落ちないように空気の流れを

緩和・・・えっと、緩やかにする結界が張られているんだ

だから巨人が全力で結界ごと僕らを投げても

結界の内側にいる僕らは安全ってわけだねぇ」


「いやっ!!それでも大分怖いですよコレェエエエエエ!?」


すさまじい速度で空中を真っ直ぐ飛ぶ球体状の結界

外に見える雲なんて瞬く間に通りすぎていくし

鳥なんて目で捉えられない程、でもそんな速度よりも気掛かりなのは


こ れ 、 着 地 は 大 丈 夫 な の か な ?


明らかに時速120km以上は出てる気がする

物理に詳しくないが子供の頃に見た

学校の交通ルールを教えるビデオかなんかで時速40kmで走る車が

壁に衝突しただけでも、かなり車体が潰れていたのを思い出した。

い、いやオッグさんの説明だと結界はスゴい頑丈らしいし

割とその辺の物理法則くらいどうにでも・・・


「そろそろ着くね、オッグ!ヒラノ!ズドンと来るから備えな!!」


衝撃が来るようです 遺書を書く暇は・・・あ、ないですね ハイ

視線を前に向ければ前方にもう一体巨人が見えた

こちらを確認したのか、ゆっくりと網のような物を取りだし


虫でも捕まえる要領で僕らをキャッチした

減速させる為にグルンっと縦に一回転してから、トスンと地面に降ろされた

おえっぷ、流石に今のは酔ってしまう・・・目も少し回ってしまった

結界が解除されるとオッグさんが背中をさすってくれた。


「大丈夫かい?ここらの空気は綺麗だから深呼吸してごらん」


「酔いが治るまではオッグ、ヒラノを頼んだよ?

私はキャンプ設営と、念のため近くに魔物がいないか見てくる」


「ず、ずびばぜん・・・おぇっぷ」


この世界に来たときも転移酔いしてたし

巨人便でもこんなに酔ってしまう

この世界の移動手段は僕にとって全部酔いやすいに違いない


背中をさすりながら説明してくれたオッグさんが言うには

この移動方法は魔王軍の者ではない【野良魔物】との遭遇を最大限回避する為

また、契約した巨人達への戦闘以外での仕事を与えるためでもある

身体が他の種族に比べドラゴンに次いで大きな彼らは その体躯とは裏腹に

非常に温厚にして平和を望む者が多い 魔王軍に()()()際も

戦いを拒み、争いへの参加を望まないと魔王に訴え


『ではこうしよう、諸君らには私達を遠くへ運ぶ手助けをしておくれ

その大きな腕に大きな網を持たせよう 嗜好品に大きな煙管を与えよう

君たちは 戦わずとも良い 僕らの移動を手助けしてくれれば それでいい』


その言葉通り 巨人全員に巨大な網と煙管を与え

現在の長距離移動手段である巨人便が確立されたのだとか

因みに週休5日の交代制 日曜は全便休業とのこと


「うぅ、だいぶ楽になってきた・・・」

「テントを張ったら今日は一休みして、明日移動を開始しようか

レフゥが魔物がいないか調べてくれてるだろうし、火の番は僕と彼女で交代するよ」


申し訳なさと有り難さで小さく頭を下げてから

レフゥが斧を担いだ状態で戻ってきた その傍らには狼だろうか?

体毛が濃い緑色をしていて身体は大型犬のそれより大きい

比例するのはライオンとかだろうか


「悪いねヒラノ、歩けるかい?

どうにも間が悪かったみたいで 緑狼(グリーンウルフ)のはぐれと出くわしちまった」


「狩りの時期には早いよね?その大きさ、まだ若いよ」


「グリーンウルフ?」


<スキル発動>

緑狼 森獣科 群狼目 Lv20


森林などに住まう狼の姿をした魔物である

複数の群同士で協力して生活をする習性がある

大規模な群では役割を持つ個体も確認されており

知性が極めて高く 狩りの時期になると森の外に現れ

高い跳躍力で低く飛ぶ虫や鳥を襲い巣へと持ち帰る

オスとメスで耳の色が違う

見分け方は、オスが白い耳をしており メスは耳まで緑色である


所持スキル<毒爪><跳躍><緑狼の遠吠え>

獲得可能素材 毛皮 牙 骨


<スキル発動>

緑狼に異常<狂毒>を感知

狂毒は感染生物を凶暴化させます

狂毒を含む植物、沼地は該当地図に確認されません


「あ、何か出た」

「ヒラノのスキルかい?へぇ、魔物の種類に使われた毒まで分かるのかい」

「多分、魔物図鑑とかのアイテム図鑑で取得したスキルじゃないかな」


そう、どうにも僕の適正<荷物持ち>が持つスキルは

必要に応じて自動発動するらしい しかも表示された情報は

近くの仲間と共有可能 戦える力じゃないけど そこそこ便利だった


「レフゥ、引っ掛かれたり噛まれたりは?」

「自慢の二の腕で下顎粉砕したから平気平気」


ニィッと笑うレフゥさんはそう言うと斧を地面に下ろし

ムンッと自慢の左上腕二頭筋を盛り上げて見せた

確かに、ガッチリとしたあの腕でラリアットなんて食らえば

鎧や兜で護ってたとしても無事では済むまい


女性であるレフゥに対して、この表現は良くないだろうが

岩かと思うほどガッチガチな筋肉をしているのだから・・・


「と、筋肉自慢してる場合じゃあないね

オッグ!ヒラノ!緑狼に狂毒とくりゃ人間狩人の十八番だ

魔王軍は一応人間連中とは敵対中だからね 見つかると面倒だ

森までたどり着ければ森管轄の奴がいる」


「森管轄のって?」


「魔王軍の領土を、魔王様一人で管理するのは難しいだろう?

魔王軍領土には細かく分けて40人それぞれを管理する魔物がいるのさ

この平原に限っては人間の領地ギリギリだから配属された魔物はいないが・・・」


これから向かう【群魔の森】には森全体を管理してるスライムがいるのさ


lv99のね!!

改めて上げ直しました

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