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桜碧物語  作者: 碧桜依
桃桜殿
18/34

朝陽


カーテンの隙間から差し込む朝陽。

小鳥たちの元気な囀りが聞こえる。

「まぶしい…」

思わずつぶやく。

私はいつの間にか眠っていたようです。


ゆっくりとベッドから降りて、窓際へ向かう。

カーテンを開けると、全身に朝陽が差し込んできた。

今日も良いお天気です。

遠くの空は曇っている。

あちらの方の街は今日は雨でしょうか。


着替えて顔を洗って身支度を整える。

まだ少し頭がぼーっとしています。


改めて、昨日は色んなことがありました。

でも緑綬のおかげで、一筋の光が見えました。

ただ遊びに行きたい、という話から、民達にもきっと喜んでもらえる行事へ。

今日はもっと具体的な部分を詰めていきたい。

緑綬と結奏の空き時間がちょうど合う時はあるでしょうか。


身支度を整え、いつもの窓際の椅子に座って一息つく。

考えなくてはいけないことはたくさんあるけれど、とても前向きな気持ちです。

まぶしい朝陽に目を細める。

まずは結奏を安心させてあげなくてはいけませんね。


―コンコン。

ドアをノックする音。

「どうぞ。」

私の声を聞き、おずおずとドアを開けたのは結奏でした。


「姫様、おはようございます。

朝食の準備が出来ましたのでお知らせに参りました。

お持ちしても大丈夫でしょうか?」

「おはようございます結奏。

持ってきて頂いて大丈夫ですよ。

結奏もよろしければ一緒に頂きませんか?」

「はい!もちろんです!」

結奏の表情が今日の朝陽のようにパアッと明るくなりました。

「ではすぐに用意して参ります!」

ぱたぱたと廊下を走る足音が聞こえます。

「ふふっ」

私はつい笑ってしまいました。

結奏はいつも、私と共にいることをとても喜んでくれる。

私も結奏が側にいると明るい気持ちになれる。


程なくして結奏や他の侍女達が食事を用意してくれました。

もちろんハーブティーもあります。

今日は少し青みがかった薄いグリーンのハーブティー。

朝食に良く合うのです。

朝陽に照らされてキラキラと光を反射させる水滴。

瑞々しいフルーツ。

私と結奏は穏やか時間を過ごす。

朝食が終われば、昨日の緑綬との話を結奏にもしなければなりません。

でも少しも不安ではありません。

きっと結奏も喜んでくれるから。


食事が終わり、結奏や侍女達がテーブルを片付ける。

侍女達が部屋の外に出て、結奏が戻ってきました。

私の前に座る結奏。

新しく用意して頂いたハーブティーもあります。

ふぅ、と一息ついて、私は話し出しました。


緑綬の二つの提案のこと。

視察へ行くと事前に城下町へ知らせ、一つの行事とすること。

今日は警護、警備の方の人数や手配、お父様への提案書の作成などについて考えようとしていること。


ひとつひとつ丁寧に伝えました。

結奏もじっくりと聞いていました。


「さすがは緑綬様ですね…。

私は落ち込んでしまって、すぐに解決策を思いつくことなんて出来ませんでした。」

俯く結奏の顔を覗き込むように、私は声をかけた。

「私も同じですよ、結奏。

緑綬の仕事ぶりを間近で見ることは今までなかったので、私も驚きました。」

二人で目を合わせ、うんうんと頷く。


「私も昨日色々と考えてきたのですが…」

結奏が私へ恥ずかしそうに紙を差し出す。

その紙は、何度も何度も書き直したあとがあり、結奏なりにあれから色々と考えてくれていたことが伝わりました。

本当に嬉しいです。

なるべく、自然に城下町で遊べるような、当初の私の希望に少しでも添えるようにと結奏なりに考えてくれた内容でした。

「緑綬様の提案に比べたら、私のメモ書きなどお見せするのも恥ずかしいのですが…」

顔を赤くしてますます俯いてしまう結奏。


「私は、嬉しいですよ、結奏。」

私の言葉を聞き、結奏がパッと顔を上げる。

まだ心配そうな表情のままです。

「こんなにも私のことを考えてくれていて、私の希望していたことも汲んでくれていて。

本当に嬉しいです。」

結奏はやっと微笑んでくれた。

「しかし姫様、私も先ほどの緑綬様の話を聞いて、一つの行事として視察という形にするというのは大賛成です。

私だって姫様が初めて外へ出られるとあらば、絶対に絶対にそのときの姫様の様子を見たいと思いますし、何より喜ばしいことです。

民達もきっと同じ気持ちですよね!」

にっこりと笑う結奏。

よかった。

結奏も納得して賛成してくれているようです。

昨日とは違い、二人の間に流れる空気はとても穏やかでした。


その後は結奏と少し話をして、今日の予定を先に聞いておきました。

昼食準備の後の時間と、夕食後の後片付けの後の時間が、今日の結奏の空き時間。

緑綬の空き時間は、仕事柄、その日のその時間に近づかないと中々はっきりわからないのだそうです。

なので緑綬に先に結奏の予定を伝えて、その時間に合いそうでしたら私に一言お知らせしてもらえるように伝えようと思います。


緑綬はどこにいるでしょうか。

今の時間でしたら、早朝の訓練を終えて朝食をとっているか、朝食後の休憩をしているかだと思うのですが。

結奏と共に部屋を出て、緑綬が居そうな場所を探す。

緑綬はすぐに見つかりました。


緑に囲まれ、白い椅子とテーブルが並ぶ中庭。

緑綬のお気に入りの場所。

木陰で涼んでいるのが見えました。

私達の姿に気づくと、緑綬は慌てて走ってきました。


「姫様、結奏様。おはようございます。」

優しい微笑み。

緑綬の背中からさす朝陽が、彼の綺麗な黒髪を透かしていて、私は見とれてしまいました。


時間の打ち合わせをしたところ、今日の予定は先に時間がわかるものであったようです。

結奏が侍女達と夕食の後片付けが終わる頃合いに、私の部屋へ集まることになりました。

「それまでに私も色々と考えておきます。」

「私も!少しでも姫様のお役に立てるように考えておきます!」

二人は本当に頼もしいです。

私も夜までに自分に出来ることを考えなくてはいけませんね!

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