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日本書鬼  作者: 久慈川 京
第二章 殺人鬼
15/35

其の弐




 丑門君と別れてから玄関で帰宅の挨拶を口にすると、奥の方から祖父母が走り出して来て、二人とも私の帰宅に心から安堵していた。祖母も買い物に行った時にその話を聞き、高校まで行ったようであったが、既に集団下校が終わっており、私が戻るまでは不安であったらしい。明日からは祖父が送り迎えをすると言い出したが、丑門君にお願いした旨を伝えると、祖父と祖母は正反対の表情を浮かべていた。

 嬉しそうに微笑む祖母と、何処か苦々しく眉を顰める祖父。その姿に私は困惑する。両親が私の行動などにそれ程関心を示さなかった事も影響しているのだろうが、新鮮な気持ちであった。


 翌朝は、いつもより早めに起きたが、昨晩に祖母に伝えていた為にお弁当も既に出来上がっていた。朝食を食べる間も、何処か不機嫌そうな祖父と微笑む祖母の正反対の表情が印象に残る。不思議に思いながらも私は時間を気にしながら朝食を取った。

 ご飯とお味噌汁、卵焼きに焼き魚。そんな、ザ・日本食と言っても過言ではない朝食を取りながらも時計に目をやる私を見ている祖母がくすくすと笑い声を上げ、それを遮るように祖父が一つ咳払いをする。


「まだまだ時間はあるから、ゆっくり噛んで食べなさい」


「ごめんなさい」


 小さな笑い声を上げていた祖母が小さく私を窘める。確かに、丑門君との待ち合わせ時間までまだ三十分以上の時間がある。慌てるような時間でもないし、食事を急がなければならない時間でもない。思っていたよりも、緊張していた自分に恥ずかしくなった私は小さく謝罪の言葉を述べると、再び祖母の笑い声が聞こえた。

 既に朝拝(ちょうはい)を終えている祖父は、私よりも早くに食事を終え、ゆっくりとお茶を飲んでいたが、居心地が悪くなったのか、境内の掃除に出て行ってしまう。祖母と二人だけの食事であったが、尚も時計を気にする私を見た祖母の笑い声だけが響く食事風景であった。


「はい。もしかしたら要らなくなってしまうかもしれないけれど、深雪ちゃんと虎ちゃんのお弁当」


「あ、ありがとう」


 待ち合わせ時間の十分近く前に玄関へ向かった私を追い掛けて来た祖母の手には、もう見慣れた二つのお弁当箱がある。昨日の通り魔騒ぎがあった為、もしかすると今日は午前中のみの授業になるかもしれないが、何の連絡もない為に祖母はいつも通り用意をしてくれていた。

 ずっしりと重いお弁当箱を手に取った私は、不意に昨日出会った丑門君の母親の顔を思い浮かべてしまう。あの優しそうな笑顔を浮かべた母親は、この町全体から忌避されているような存在である丑門君にも優しい眼差しを向けていた。

 通常であれば至極当然の事なのかもしれないが、両親との思い出が少ない私からすれば、あの眼差しは間違いのない愛情を宿していたと思う。我が子に向ける見返りを求めない愛情だ。

 そんな愛情を持つ母親が、何故、最愛の息子の為に弁当一つ用意出来ないのだろう。あの母親の姿を見る限り、共働きという様子ではなかった。たまたま昨日が休みの日であったのかもしれないが、あの人の瞳や表情に、私の母親のような疲れと焦燥は宿っていなかったように見える。


「今日も良い天気」


 これは、偏見かもしれないし、世の専業主婦をしている人達に怒られてしまうかもしれないが、私の母親は、仕事をする理由と意味が何時の間にか逆転してしまった人であった。

 世の中には仕事に様々な思いを持つ人がいるだろう。生きる為に必要なお金を稼ぐ為の仕事、子供や家族を養う為の仕事。または、生き甲斐、遣り甲斐を求めての仕事。子供の頃からの夢、楽しみとイコールの仕事。それは十人十色である。

 だが、そういう想いを持ち続ける事が出来る人が全てではない。中には、生きる為に仕事をしているつもりが、仕事をする為に生きているようになってしまう人は少なくないのだ。

 私の母親がそうであった。私の父の収入はそれ程少なくなかったと思う。海外に出て行く事も多い人であった為、それなりの役職に就き、それなりの給与は貰っていただろう。それにも拘わらず、彼女は私を産んだ後も仕事を続けた。それは、その仕事が好きだったからなのだと思う。そんな単純な理由ではないのかもしれないが、辞めようと思えば辞められた筈だと私は思っている。

 好きな仕事を続けたいとして続けた仕事にも拘らず、私は幼い頃から、母親の笑顔を見た記憶がない。常に疲れており、私に向かって怒鳴るような事はなくとも、構ってくれる事もなかった。『私は嫌われているのかな?』と疑問に思うほどに会話は続かず、時間と共に私の方からは母親に話し掛ける事が少なくなったのだ。『お母さんは疲れているから邪魔したらダメだ』という物から、最後には『話し掛けても無駄』という達観へ至る。母親が家に居ても仕事をするようになってからは、私との会話は皆無になった。


「おはよう」


「おはようございます」


 百四十九段の石段を下りた先にある一の鳥居の前に丑門君は既に立っていた。軽い挨拶を交わし、彼と共に学校へ向かう道すがら、祖母から手渡されたお弁当を差し出す。彼にお弁当を手渡すのも両手では足りない回数になっているにも拘らず、彼はまた、申し訳なさそうな表情を浮かべてお礼を述べていた。

 そんな彼の母親の表情の中に、私の母と重なる部分は一つもない。仕事をしながらも子供への愛情を一番に出来る人は世の中には数多くいるのだろうし、逆に専業主婦であっても日々の家事や近所付き合いに疲弊する人も多くいるだろう。それでも彼の母親は、仕事はしていないと言い切れる何かを持っていた。

 家の主とは言えない。それでも、彼の家である丑門家の昼間は、彼の母親が守っているのだと思う。それは、母親と話していた丑門君の表情と、丑門君が去った後の妹さんの表情が物語っていた。


「今日はありがとうございます」


「通り魔騒ぎが解決するまでは、一人で登下校しない方がいいぞ」


 だからこそ、彼の母親ほどの人が丑門君にお弁当を持たせない理由が解らない。思い当たる理由とすれば、彼自身がそれを固辞しているという事ぐらいだ。だが、私の祖母のお弁当は困りながらも美味しく食べてくれるところを見ていると、彼が母親の作る弁当箱を理由もなく断る事などないように思える。

 余計に謎が深まり、彼の背中を見つめていると、彼から無理難題が振って来た。現状を省みると、自業自得の部分が強いとは言え、私が他の生徒達と登下校を一緒に出来る事はない。

 だが、確かに通り魔騒ぎが解決するまでは集団下校のような物は続くだろうし、それは私立といえども教育機関が行う当然の処置である為、それに対して苦情を言うことは出来ないし、間違って苦情など言おうものなら、私自身が異常者だと疑われかねないだろう。


「まぁ、昨日も言ったけど、神山なら大丈夫だとは思うけどな」


「……引き続き、丑門君には私の警護を命じます」


 からかわれているのだろう。何故なら、彼は昨日私が一人で彼を追い駆けた際に、本気で怒り、厳しい注意を私に告げていたからだ。故にこそ、私も若干眉を潜めながらも、冗談交じりの命令を下す。予想通り、彼の軽口であったようで、私の無礼な物言いにも『了解致しました』という返事を返して来た。

 私自身、ここ最近の私自身がよく解らない。少し前の、この学校に転入する前の私であれば、赤の他人とこのようなやる取りをする事はなかっただろう。もしかすると、通り魔事件などが起きれば、これ幸いにと家に引き篭もっていた可能性が高かった。

 変われば変わるものだと自嘲しながらも、前を歩く背中の持ち主が、私自身を変えてしまう程の存在なのかと若干首を傾げてしまう。


「ここまで来れば大丈夫だろう。神山は先に行けよ」


「え? う、うん」


 色々と考えながら、他愛もない話をして行く中で、かなりの時間が経過しており、既に校門まで残り数百メートルというような場所まで来ていた。別段周囲におかしな物はなく、1分も歩けば校門を越えられるであろう場所まで来た時に、丑門君は若干後ろを歩いていた私を前へと導く。自分と一緒に入るのではなく、私を先に行かせようとしているのだろう。私が前にいた方が、何かがあった時に対処がし易いと考えたのかもしれない。どちらにしても、その心遣いに感謝しかなかった。

 一言彼にお礼を述べた後、私は校門へと近づいて行く。時間が早い事もあり、周囲には学生の姿はなく、校門前に教育指導の教員もいなかった。引き戸のような門の半分ほどしか開いておらず、出勤する教員しか中に入っていない事が伺える。静かな静寂の中、何故か校門から先に澱みを感じた。


「ちっ」


 その澱みを不思議に思いながらも校門を越えた私は、後ろから聞こえた小さな舌打ちに振り返る。そこに見えたのは、眉間に盛大に皺を寄せた丑門君の顔。何事かと思いながらも、それが余り良くない兆しに見えた私は、振り返って彼の顔を見つめた。

 私の視線に気付いた彼は、それまで校舎に向けていた視線を外し、私に向かって微妙な笑顔を浮かべる。それが尚更私の不安を煽り、彼の表情とは逆に、私の表情は強張って行った。


「神山、本当に気をつけろ。なんか、ヤバイわ」


「ど、どういう事ですか?」


 彼の言葉がどんどん私の不安を煽って行く。正直、彼の纏う空気もまた、あの一連の事件が起こった頃に感じた物へと変貌していた。生物が本能的に恐れるようなあの闇に似た空気を彼は纏っていたのだ。

 私の問いかけにも暫く答える事はせず、校舎へと視線を移し、そのまま振り返った彼は、校門の先に見える住宅街を睨みつける。後姿しか見えない私には、彼が本当に睨みつけているのか判断は出来なかったが、雰囲気がそれを明確に物語っていたように思う。暫しの時間そのまま沈黙を続けた彼は、ようやく振り返ると、私の方へとゆっくり歩いて来た。


「今日の帰りは遅くなるかもしれないけど、送って行くよ。悪いが、皆が帰るまでは図書室などで時間を潰していてくれ」


「え? う、うん。それは良いけど」


 言葉だけ聞けば、高校生同士のカップルが交わす甘い約束のようである。だが、彼の表情と雰囲気を間近で感じた者は、それが甘い物であると思わないだろう。それ程に険しく、厳しい表情を彼は浮かべていたのだ。だが、その表情とは正反対の心遣いが解る彼の言動に、私は即座に頷きを返す。

 私は僅か一ヶ月とはいえども、『丑門統虎』と呼ばれる青年と時間を共にして来た。親密な関係ではないだろうが、おそらく、この学校に通うどの生徒よりも、どの教員よりも彼と会話をし、行動しているだろう。もしかすると、彼の家族以外であれば、この町で暮らすどの人間よりも彼の性格などを理解しているのかもしれない。

 彼を知っているとか、彼を理解しているとまでは言わない。だが、彼が今発した言葉が嘘偽りのない心配から来る物である事を理解する事は出来る。だからこそ、私は何を疑う事もなく、彼の言葉に頷きを返したのだ。




 朝の教室に入れば、やはり昨日に起きた事件の事が教室内での話題となっていた。誰も彼もが、自分の身に降りかかってはいない、自分が暮らす町で起きた大事件に目を輝かせ、話を弾ませている。もしかすると、彼ら彼女らの心の中は、非日常的な興奮で湧き踊っているのかもしれない。

 そんなクラスメイト達を見ても、それが不謹慎だとは思わない。人は皆、自分自身に関わりさえしなければ、それは空想の出来事と同様なのだ。日本にある『対岸の火事』という諺は、人間という物をよく表していると改めて思った。非日常的な出来事を痛ましく思う以上に、自分の身に降り掛からなかった事に安堵し、そしてそれに好奇心を擽られる。誰もがそれこそが人間だと思っているからこそ、それを窘める者がいれば、逆に『人間らしからぬ』として距離を置くのだろう。


「でも、小学生の女の子を襲うなんて、ロリコンの仕業じゃないの?」


「しかも服を切ったって言うし、完全にそれ目的でしょ」


 いつものように、このクラスにいる生徒達の妄想には辟易するし、逆に、自分に関係のない話題でここまで想像を膨らませ、語る事が出来る物だと感心もする。

 幼少女偏愛者と称すれば良いのか解らないが、俗に言う『ロリータコンプレックス』と呼ばれる幼い少女にしか性的な興味を持てない男性というのは、かなり昔から存在していたらしい。昨今は発信されるニュースや書物、そして映像物などの多さから、偏愛者が年々増加していると考えられているが、実際は1970年代からそういう出版物が出始め、1980年代には『ロリコンブーム』という物が存在していたらしい。古くは戦国時代の『豊臣秀吉』などもそういう説があるし、中世ヨーロッパにもそのような噂を持つ貴族が数多く存在していた。

 そして、最近では、私のような女子高校生もまた、その対象として考えられるようになっている。現役の高校生である私からすれば、最早十代後半になれば、身体などは大人と同等だと思っているし、免許などが取れる年齢を越えれば、行動能力も同等だと思う。自分で生活費などを稼ぐ事が出来ていないという点を除けば、二十歳を越えた女性と変わりはないと思うのだ。


「でも、アンタは危ないかもよ……。幼児体系だし」


「なにそれ! ムカつくんだけど」


 教室内の騒ぎが大きくなり始めた頃に、担任の女性教員が入って来る。この女性教員の見た目は、明らかに疲れ切っており、昨日の事件の影響である事は間違いなかった。彼女を含め、目に付く教員全てが同様に疲れている事を考えると、職員会議やら何やらで碌に休めていないのだろう。

 それでもいつも通りのホームルームが始まり、そのまま一限目の授業へと流れて行く。近場の小学校近くでの事件であったとはいえ、対岸の火事である事実は変わらない。最近の都心の学校であれば、同じ町でこのような事件が起きてしまえば、暫し休校という可能性もあったのかもしれないが、この町は良くも悪くも平和だった。


「この時代の日本では、鬼という存在が信じられており、不可思議な出来事には鬼が拘わっていると考えられていました……」


 その日の午前中は何事もなく過ぎ行き、昼食前の四時限目の古典の授業を受けている最中には、外の景色が変わり始める。先程まで多少なりとも光が差し込んで来ていた窓側が暗くなり始め、ぽつりぽつりと窓に雫が当たり始めると、そのまま『しとしと』と雨が降り出した。

 古典、古文の授業というのは、つまらないという評価は、教員の配置によるところが大きいのだと思う。この学校でもその例に漏れず、古文の担当教員は齢六十近い男性教員であった。

 時折、昔の小話を混ぜて話をするのだが、その小話もまた、数十年前から変わらない話であると解る話であり、現代の十代には興味が湧かない類の物。教室に居る生徒の大半は、机に突っ伏すように夢の世界へ旅立っており、少ないが起きている生徒達は授業とは関係のない事に精を出している。何処かで緊急車両のサイレンの音が鳴っているが、それもまた日常的な物であり、私達の気だるさを増す要因となっていた。


「嫌な天気だな……」


「何か言いましたか?」


 古文などに多少の興味を持っている私でさえも、授業のつまらなさと蒸し暑さで机に倒れ込みたくなる程であったのだが、不意に隣から聞こえた声に反応を返してしまう。

 そのまま顔を窓側に向けると、窓から見える真っ黒い雲を見つめる丑門君の後頭部が見えた。雨が入り込まないように少しだけ開けられた部分から生温かな風が入って来るが、それがまた私達の不快指数を上げて行く。私の問いかけに首を動かした彼は、ワイシャツの襟元を持って身体の中に空気を入れながら、再度同じ言葉を口にした。

 既に校内は夏服に変わっており、男子生徒達は詰襟の学生服ではなく、半袖のワイシャツになり、女生徒もまた夏使用の制服になっている。それでも、冷房の設備がない教室は暑苦しく、私もまた下敷きで顔を軽く仰ぎながら彼の言葉に同意した。

 今思えば、彼のこの言葉は、私が考えていた物とは少し毛色が異なっていたのかもしれない。


「では、今日はここまでにします」


 終業のチャイムまで残り一分程で、古文の教員が教科書と出席簿を閉じる音が合図となり、号令係の生徒が授業終了の号令を掛けた。

 教室を出て行く教員の背中が閉じられる扉の向こうへと消えて行くと同時に、終業のチャイムがなり、一気に教室が騒がしくなる。弁当を出す者、学食へ走る者、購買のパン目当てに走る者と様々ではあるが、皆総じて、この町で昨日起きた事件の事はすっかり頭から消え失せているようであった。


「でも、お弁当が無駄にならなくて良かった」


 教室に残っている生徒が半数以下になってから、私は鞄の中からお弁当箱を取り出す。祖母が作ってくれたお弁当は、私の物だけではなく、既に隣の席から消えている男子生徒の分もあった。昨日の通り魔事件によって午前中授業という方法を高校が取らなかった事で、美味しいお弁当が無駄にならなかった事に、私は少し安堵する。今、何処にいるのか想像も出来ない丑門君も、もしかすると同じタイミングでお弁当箱の蓋を開けているのかと想像すると、面白かった。

 今日のお弁当のメニューは、アスパラの豚肉巻きや野菜の煮物など、そしていつも通りの卵焼き。この時期から旬となって来るアスパラは茹でて食べても焼いて食べても美味しく、自然と私の顔も笑顔になって行った。


「うん、美味しい」


 箸でアスパラの豚肉巻きを取り、口の中へと放り込む。噛む度に豚肉の脂の甘みと、アスパラ本来の甘みが交わり、絶妙の味わいを醸し出した。小さな声で祖母への賞賛を口にした私は、最近になって持ち込むようになった小さな魔法瓶から温かいお茶を注ぎ、口に含む。番茶ではあるが、飲み易く、私は緑茶よりも好んで飲んでいるお茶であった。

 その後も黙々と、それでいて朗らかに食事を続けていた私の耳に、突然、警報のようなサイレンが校内放送のスピーカーから飛び込んで来る。それは、火災訓練の時に聞くような音でありながら、それとは全く異なるような音で、私の小学校からの十年以上の学園生活の中でも初めて耳にする音であった。


「緊急連絡、緊急連絡。生徒達は即座に全員、自分のクラスの教室へと戻りなさい。繰り返します。校舎内、校舎外に拘わらず、全ての生徒は自分のクラスの教室に即時戻りなさい」


 けたたましいサイレンが鳴り終わった後で、男性教員の慌しい声がスピーカーから響いて来る。その声は古いスピーカーが原因なのか、若干震えているように聞こえた。

 スピーカーからは再びサイレンのような音が鳴り、廊下の方では教員達の怒声のような物が聞こえて来る。生徒達の緊張感のない騒ぎに対し、怒りをぶつけているようにも聞こえるその怒声は、校舎内の全ての階層で行われているのだろう。気のせいかもしれないが、地震と間違えかねない程に、床が揺れている感覚があった。

 サイレンの音が消え、はっきりと生徒達の騒ぎ声と教員の怒声が聞こえるようになっても、この教室内には半分の生徒も戻って来ていない。何が起こったのかも解らないし、教室内に生徒達が全て戻って来ない以上、ここから進展する事はないと考えた私は、お弁当の残りをゆっくりと口に入れた。


「この状況でも弁当を口にする神山に驚くよ」


「……もったいないもの」


 最後の一口と、白いご飯を口に入れた私の後頭部辺りから声が掛かる。私が振り返る前に、左隣の席へと腰を下ろした彼は、心底呆れたような顔で私を見ていた。しかし、彼が鞄の中へと入れた弁当箱もきっと、疾うの昔に空になっているのだろう。彼の事だから、既に食べ終え、何処かで弁当箱を洗っている最中に、この騒ぎに遭遇したのだと想像出来た。

 お弁当箱の蓋を閉じ、布で包み直して鞄へと戻す。残っていた番茶で喉を潤す頃には、ようやく教室の席の八割以上が埋まっていた。

 不満を漏らす者、何が楽しいのか笑いながらはしゃぐ者、『怖い怖い』と連呼しながらも頬はにやけ、何処か胸を弾ませている者。教室に入って来る者達は様々ではあるが、皆総じて、この非日常的な空間に心を躍らせているように見えた。


「全員揃っていますか!? 早く座りなさい!」


 未だ生徒全員が揃っていない教室に担任の女性教員が飛び込んで来る。昨日よりも酷い取り乱しようで、教室内で席に着いていない生徒達を見るや否や、この世の物とは思えない程に甲高い奇声のような怒鳴り声を発した。

 昨日以上の金切り声に、本格的に何かがあったと悟った生徒達は、昨日のような愚行を犯さず、言われるがまま着席する。担任教員が入って来た後から教室に戻った生徒達も、既に廊下の方で男性教員に怒鳴りつけられていたのか、何も言わず席へと着いて行った。


「昨日と同様に、班割りをしますので、集団で下校して下さい。自宅が遠い方達は、先生が車で駅まで送って行きます。名前を呼びますから、呼ばれた方達は廊下にいる先生に付いて行ってください」


 全員が席に着いた事を確認した女性教員は、教壇に立った後、全員に告げるようにゆっくりと言葉を紡ぐ。先程までの金切り声ではなく、しっかりとした口調がまた、現在の状況の悪さを物語っているように思えた。

 自分の言うべき事を口にした教員は、手元にある紙を広げ、次々と生徒の名前を呼んで行く。呼ばれた生徒は鞄を持って廊下の外へと出て行った。

 この高校は、小さな町の中でも進学校に位置する。故に、この町の周辺の地域からも登校している生徒は多く、電車に乗って通学する者達も少なくはない。私が本を購入しに足を運んだ駅前までは歩いていける距離とはいえ、少なくとも十五分から二十分は歩かなければならなかった。故にこそ、この教室に居た生徒達の半数以上を駅まで送る為に、教員達が車でピストン送迎をするのだろう。


「残っている方達は、自宅の地域ごとで纏まって下校してください。そのグループに男子生徒が一人もいなかったり、明らかに少なかったりした場合は先生に申し出て下さい」


 その頃には、教室内は静かになっていた。皆が女性教員の顔から事態の状況を読み取ったのだろう。中には怯えて泣き出してしまう女生徒も現れるほどであった。

 男子生徒をたてにする訳ではないのだろうが、複数の男子生徒がいれば、通り魔も手を出し辛いと判断したのだろう。何が起こったのかを説明されてはいないが、状況から察するに再び通り魔が現れた可能性が高い。そして、その被害者となったのが、女性であったと考えられた。


「少数での下校は極力避けて下さい。男の子は出来るだけ女の子を家まで送ってあげて下さい」


「先生、また通り魔ですか?」


 送迎組が既に教員用の駐車場まで移動してしまっている為、廊下は徒歩組の割り振り会場と化している。教員がそれぞれの地区ごとに教室を割り振り、そこの教室へと移動させた。そこに学年の垣根はなく、三年から一年まで、地区ごとに教室への移動を命じられている。教室から出る時に、ある生徒が教員に問いかけた言葉は、この場所にいる全ての生徒が感じている疑問であり、それに対して無言で頷きを返した女性教員の顔は、とても真剣で悲痛な表情が張り付いていた。

 ただ、教室を出て行く徒歩組が各指示された教室へと移動して行く中、私達の教室には私と丑門君だけが取り残される。私達も移動しなければならないのだろうが、最後に残っている生徒がいないかどうかを確認する為に覗き込んだ女性教員の表情を見て、私は移動する気持ち自体を失っていた。


「……私達は護るべき生徒ではないのですね」


「そういう訳でもないだろう。余り捻くれて見るなよ。あの人は真面目な先生だぞ、きっと」


 別に、『貴女達も早く移動しなさい』などという言葉を待っていた訳でもないし、そういう形で構って欲しくて着席し続けていた訳でもない。ただ、最後に覗き込んだ際に女性教員が浮かべた嫌悪感のような感情は、やはり好きになれそうにはなかった。

 だが、私よりも長い期間と強い感情を受け続けて来た筈の彼は、私を窘めるような言葉を発する。この学校の生徒達だけではなく、教員からも、他校生からも、そしておそらくは町で暮らす人間のほぼ全てから悪感情をぶつけられているにも拘わらず、彼は時々理解し難い言葉を発するのだ。

 あの女性教員が浮かべた物は、明らかに私達二人に向けた嫌悪感である。それは誰にでも理解出来るほどに明確であり、それを好意的に見る事など私には出来なかった。


「俺達に『来るな』とは言ってないだろう。行こうと思えば行けるし、皆と帰ろうと思えば帰れるよ。ただ、俺達がそうしないだけで、そういう自分勝手な行動を俺達が取るから、先生としても扱い辛いだろうな」


 そう口にする彼の表情も、本心からそう思ってはいない事が明確に解るぐらいの物。それでも、そうでも思わなければ生きていけない程の時間を彼は過ごして来たのだろう。

 もし、あの女性教員が彼の言うような感情しか持っていなかったとすれば、私はあの女性教員を信用する事が出来ると思う。教員といえども人間であり、それを職業として考えれば、自分の職務を妨害する者に好意を持とうとは思わないだろうし、今時、某教師ドラマのような熱血教員などいない事を考えれば、それは当然の感情だと思うからだ。

 だが、私には、この学校の教員達が彼に対して向ける感情は、嫌悪ではなく敵視だと思っている。それでもオブラートに包んでいる自覚はあり、本音で言うと、あの感情は憎悪に近しい物のようにさえ思えるのだ。


「私は自分勝手な行動をしているつもりは余りないのですけど……」


「は? え? あははははは……。同級生を平手で張り倒して、そのまま帰ったよな? この前も色々と理由を付けて帰ったような気もするし。俺が教師でも、神山は扱い辛いだろうな、きっと」


 『扱い辛い』という彼の発言に物申した私であったが、即座に返って来た彼の乾いた笑いと、辛辣な言葉に、心が痛くなる。確かに思い返せば、私もこの学校に転入してから身勝手な行動が多かったかもしれない。今までそれを自覚していなかった事自体が身勝手であると指摘されれば、最早『ぐぅ』の音も出なかった。

 教師という立場に私が立ったとしても、確かに私のような存在は扱い辛いかもしれない。この変な時期に転入して来るという事そのものが、何らかの触れ辛い事情があり、それが原因で友人などが出来ずに孤立しているというのであれば手を差し伸べる事も出来るのだろうが、ただただ身勝手な行動を繰り返して孤立するような生徒であれば、最早扱い辛いどころか、関わりたくないレベルの存在であろう。


「でも、今度も被害者は小学生でしょうか? 丑門君の妹さんは大丈夫なんですか?」


「……今日は熱を出して学校を休んでいるからな」


 『むっ』と口を噤んでしまった私を見て苦笑を浮かべた丑門君は、そのまま窓の外へと視線を移す。既に集団下校を始めた生徒達の声が聞こえ、地区毎に順調に下校が進んでいる事を示していた。

 丑門君の後頭部を見つめながら、私は今回の被害に付いて知らない事に気付く。先程生徒からの問いかけに教員が頷いた事で、今回も通り魔事件が起きた事は解ったが、その被害者がどういう人間なのか、どの年代で、性別はどちらなのかという事を知らない。教員の口ぶりから、被害者の性別が女性である事は察しがつくが、それでも昨日のような小学生なのか、それとも高齢者なのかなど色々と疑問は残っていた。

 故にこそ、昨日あれ程慌てふためいていた丑門君が冷静である事はある意味異常であり、それを疑問に思った私は、どうしても聞く事しか出来なかったのだ。そして、その返答はやはり簡素で素っ気無いもので、彼が妹の事を話したくないという想いの表れであると感じる。

 そんな彼の拒絶的な態度が何故か悔しく、哀しかった。


「通り魔の被害が妹さんに及ばなければ、冷静なんですね」


 だからだろう。今から考えても言う必要のない嫌味のような言葉を私は口にしてしまう。我ながら、嫌な人間であると思わざるを得ない。そのような事を言う必要は何処にもなく、先程、担任の女性教員を慮るような発言をしている彼に対して、その女性教員を悪く言った私のどの口が言うのかと自問自答してしまう程に嫌な言葉であった。

 言った傍から後悔し、何故そんな事を言ったのかが自分でも解らないまま、丑門君の挙動を恐れながらも待っていた私は、ゆっくりと振り返った彼の表情に怒りや軽蔑の色がない事に安堵する。そんな浅はかな自分が尚更に自己嫌悪へと陥れた。


「まぁ、正直、他人は他人だからな」


「……ごめんなさい。嫌な言い方でしたし、嫌な物言いでした」


 彼自身、何の拘りもなく正直な想いを口にしてくれたからなのか、私も素直に謝罪する事が出来た。頭を下げる私を彼は不思議そうに見つめていたが、『別にいいよ』と言葉を発した後で立ち上がる。そのまま窓を開けた彼は、外の様子を確かめていた。

 教室の外は、この学校の中庭のような場所がある。校門は左手にあり、窓の外へ顔を出さなければそれを確認する事が出来ないのだ。先程まで騒がしかった校門付近の声が薄れてきた事で、集団下校も終了に近づいていると感じた彼が、それを確かめる為に窓の外へと顔を出したのだろう。


「そろそろ全員出そうだな。神山も帰り支度始めておいてくれ」


「あ、私はいつでも大丈夫です」


 彼は鞄を手に取り、私の方へ気遣いを述べるが、疾うの昔に帰り支度を済ませていた私は、彼と一緒に鞄を持って立ち上がった。

 教室を出ると、既に校舎内の生徒達の下校が済んでいるのか、とても静かで、廊下に足を踏み出した私達の上履きが擦れる音だけが響く。教員も総出で対応している為か、本当に何もない静かな廊下であった。

 夜であれば、恐怖心が首を出しかねない程の静けさではあるが、午後に入ったばかりの廊下は何処か神聖めいた雰囲気を持ち、再び『しとしと』と降り始めた雨の音が、その静けさを際立たせている。梅雨時期の恒例である、湿った廊下とゴム製の上履きの底が擦れる『キュム』という音がやけに響き、まるで丑門君と私の上履きが会話をするように合唱していた。


「午前中の最後に、パトカーや救急車の音も聞こえていたから、もしかしたら近いのかもしれないな」


「……この近くですか」


 確かに、今から思い出せば、退屈な古文の授業中に、何処からか緊急車両のサイレンが鳴っていたような気もする。あれが通り魔事件の物であるのならば、彼の言うようにここからそう遠くはない場所で起きた事件という事になるだろう。

 黄泉醜女の事件は、私の目の前で起きているし、この学校内でも起きている。だが、あれは特定の人間にしか理解出来ない存在でもあり、特定の人間しか見る事の出来ない存在でもあった。

 それに比べ、今回の通り魔事件に関して言えば、この町の住民であれば誰の身にも起こり得る危険であり、誰もが遭遇する可能性のある危険でもある。相手が人間という点で、黄泉醜女よりも対処方法の幅は広がるが、警察などの国家機関を含めての大きな事件に発展する可能性もあった。


「明日は流石に休校かもな」


「そうですね。二日続けて事件があり、それがこの近隣となれば、高校は解りませんが、小学校などは休校でしょうね」


 昇降口で靴を履き替え、振り出した雨を避ける為に傘を差した私達は、一度校舎を振り返って、明日以降に想いを馳せる。

 事件がどの程度のものかは解らないが、大きな事件となれば周辺の教育機関は休校という判断を下す可能性は高い。流石に多くの生徒達の命を預かる側としては、その責任を負いかねない状況を敢えて作る必要はないのだ。

 高校生まで行けば、登下校の最中での事故や事件に関しては自己責任に近い問題であり、登校を強制しなければそれ程問題がある訳ではないだろうが、小学生、中学生となれば話は別である。自分の身を護る術はほとんどなく、抵抗する力もない。そんな存在を護る為には、逆に強制的な登校禁止を決めるしかないだろう。


「今日、どんな事が起こったのか解りませんが、この前の事といい、騒がしい町なんですね」


「ん? いや、そんな事はないぞ。本当に何もない静かな町だったけど。たまに誰かが怪我するぐらいで、それも自爆に近い事故ばかりだったしな。神山に纏わり付いていた黒い影のような物も、本当に久しぶりに見たから……そうだな、神山が転校して来るまでは、何もない町だったよ」


 通り魔のような事件は、都心では日常茶飯事だろう。殺人事件という大事件にまで至らない物であれば、ほぼ毎日何処かで起こっているかもしれない。それは、それだけ不特定多数の人間が生活しているという事なのだと思う。毎日のように出入りの激しい都心だからこそ、昨日見た人間を今日も見るという事は少なく、また今日見た人間を明日も見るという保証もない。

 それに比べ、言葉は悪いが地方と言っても過言ではないこの町は、ある程度はほぼ顔見知りに近かった。隣町とまでは言わないまでも、駅前の商店街に祖母と買い物に行けば、そこの店員や、買い物客と話をする事が多くある。そういう町であれば、通り魔事件など起きようがないのだ。何故なら、擦れ違う人のほぼ全てが知り合いである為、何か異常な行動を取れば、即座に顔も名前も割れてしまうからである。


「……私が原因だと言うのですか?」


「そうは言わない。ただ、いつからだろうと考えれば、そうだなってだけだよ」


 通り魔の犯人が捕まらない理由は、おそらくこの町ではない外部の人間の犯行だからなのだろう。そう考えると、約一ヶ月前は外部の人間であった私も、容疑者の一人なのかもしれない。

 ただ、私にはしっかりとアリバイもあるし、自分自身がそのような事をしていないという自信もある。当たり前であるが、絶対に私が犯人という事はないのだ。それにも拘わらず、まるでここ最近の事件の原因が私の転校であるかのような彼の物言いに少し『むっ』としてしまった。


「でも、本当に気をつけろよ。今の話じゃないけど、ここ最近は、少し前に比べて町全体の空気が澱んでいるから」


「……澱んでいる?」


 『むっ』としている私に苦笑を浮かべた丑門君は、急に真面目な顔で忠告を漏らす。その忠告の言葉の一部を反芻した私は、何気なく空を見上げた。

 『しとしと』と振り続ける雨の切れ間に見える空を覆う真っ黒な雲は、大地へ降り注ぐ筈であった太陽の輝きを遮っている。それは、丑門君が話す通り、この町全体を覆い尽くす影の如く、今も尚その領域を広げているようであった。

 彼の言う澱みという物がどういう物かは解らない。空気の澱みなど、気分でしかない気もするし、本当に有毒な物であれば、この空間で人間が生きては行けないだろう。梅雨時期特有の不快な湿度と温度を澱みと称するのであればその通りであろうが、彼の言うそれは、全く異なる物である事は明白であった。


「何かあったら嫌だから、今日も境内まで送るよ」


「本当にありがとうございます」


 雨の中、数少ない会話であったかもしれないが、時間的にはかなり経過していたのか、何時の間にか目の前には一の鳥居の姿があった。

 本来であれば、この一の鳥居の前で別れれば良いのだろうが、一の鳥居から、境内に続く二の鳥居までは百四十九段もの石段があり、その石段の周囲は完全な雑木林のような状態になっている。夏場はその影響でとても涼しいのだが、通り魔事件の最中となれば、絶好の潜伏場所になり得る場所であった。

 それを理解しているからなのか、彼は昨日と同様に二の鳥居まで送ってくれる提案をしてくれる。正直、本当にありがたく思った。黄泉醜女の時の背筋が凍るような恐怖ではないが、逆に相手が人間であるという現実味のある恐怖は、気を紛らわせてはいるものの、一人で行動する事を躊躇わせる程の物であったからだ。


「明日、休校にならなければ、同じ時間に下にいるよ」


「はい。送って下さり、ありがとうございました」


 百四十九段の階段を上り切り、二の鳥居まで来ると、彼は鳥居を潜る事を躊躇うように、その場で私に別れの挨拶を告げる。その様子を見て、私の祖母と会う事を避けているのだと感じた私は、彼にお礼を告げた。

 もし、学校が休校になるのであれば、緊急連絡網などで連絡が来るだろうし、連絡がなければ、再び共に登校してくれるという彼の申し出が本当にありがたいと感じる。自分で思っていた以上に、今回の通り魔事件に恐怖を感じていた事に改めて気付いた私は、彼に向かって丁寧に頭を下げた。

 彼が石段を下って行く姿を見ていると、何故か胸が温かくなる。地方の小さな町全体から忌み嫌われる存在と言っても過言ではない扱いを受ける青年は、私にとってはとても優しく大きな存在と成りつつあった。





『本日、午前十一時頃、路上を歩いていた二十代の女性が何者かに刃物で刺され、搬送先の病院にて死亡しました』


 帰宅後、着替えを済ませて居間へ向かった私の耳に、付けっ放しのテレビから流れるニュースキャスターの声が飛び込んで来る。

 流れるテロップは、この町の名前。映し出される映像は、私が通っている高校から駅前に向かう為の道。それも車通りのある大通りではなく、地元の人間が歩くような裏道であった。




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