現れた同行者
「いや、本当に……」
何かを続けようとするカシュールカの言葉を遮るように、突然、大きな音を立てて玄関のドアが開かれた。
「準備はできたか!?」
「ムウル!」
ミイとカシュールカの声が重なる。
勢いよく現れたムウルが、ニカッと笑った。
「親方に許可は取った。オレもおまえたちと一緒に旅に出るぜ! オレの仕事は終わったから安心しろ。例の指輪は無事ノーモルのもとに返った」
「え!? ちょっと待って。どういうこと?」
「親方に指輪を手に入れるよう依頼したのが、なんとあの指輪を作ったガトゥーシャの孫だったんだ!
ノーモルが指輪を取り戻したいと思っていることを知ったそのお孫さんが、親方に指輪を手に入れてノーモルのもとに届けて欲しいって依頼をしたって訳だ。
あの指輪は、ガトゥーシャがノーモルのばあさんのために作ったものだったっていうんだから、すげえよな」
「あれ? でも、失敗作なんでしょう?」
「失敗作だって噂があれば、誰も手に入れようとは思わないだろうって考えたらしいぜ」
「へえぇ」
感心した素振りを見せながらも、ミイはあの日のことを思い出す。
マキュベスト邸でロークを見かけた日だ。
あの時、ロークが関与していることには気づいていた。
ミイはそのことをムウルに隠していた。
その後襲ってきた連中が、イルソンに金で雇われた連中だということも知っていたのだ。
そうして、ムウルは幾度もミイに騙され、隠し事をされているにもかかわらず、それでもまたミイの傍に現れる。
ムウルがあまりにもすんなりと騙されるので、以前、ミイはムウルに騙されて腹が立たないのかと訊いたことがある。
その時、ムウルはこう答えた。
気づかずに騙されるのは自分が悪いし、気づいて騙されるのは俺の愛だ、と。




