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魔術師同士の闘いと、親方の登場

「後を追わなくてもいいのか?」


 サクがロークを睨みつける。


「ま、いいさ。屋敷の中の方も手は打ってある。おまえの相手をとっとと済ませて追えばいい話だ」

「そう上手く事を運ばせるわけにはいかない」


 続けてサクは杖を構えて呪文を唱える。


「この地に宿る精霊たちのその偉大なる力を我に貸し与え給え。火の精、その炎よこの杖に宿れ」


 杖に青い光が宿る。

 サクがその杖を一振りした。

 杖から炎の塊がロークに向かって放たれる。


「そんな攻撃が通用すると思うなよ」


 ロークは両手を交差させてそれを跳ね返した。


「予想済みだよ」


 直後、ロークのすぐ目の前にサクの顔があった。

 ロークは慌てて高度を上げる。


 下から炎が迫り、右手へ方向転換をしてそれを避ける。

 続いて第二波、第三波がロークを追ってくる。


「くっっっ」


 かわしきれなかった物は防御してやり過ごし、隙を見て手のひらをサクに向けて開く。


 生じた風の刃がサクをめがけて飛び掛る。

 サクが杖を振れば、その風の刃は目標をはずれ、地面を抉った。地に穴があく。


 炎と風の応酬。

 炎がロークの体を焦がし、風の刃がサクを切り刻む。


「さすがになかなかやるな。だが、全然足りない。そんなもんじゃないだろう?」 


 次々に風の刃がサクを襲う。

 杖で叩き落としてゆくが、ひとが不規則に弾け、サクの頬をかすめて散った。


 即座に後方に下がる。

 次の瞬間、サクの目の前にロークの顔があった。

 喉を掴まれる。


「ぐっ!」


 息ができない。両手でロークの腕を掴み、その手を離そうと力を入れるが、ロークの手はびくともしなかった。


「落ちろっ!」


 サクの喉を締め付ける手に力が込められたかと思った瞬間、サクの体は地面に向かって凄まじい勢いで落下していた。 


 ※※※


 ロークをサクに任せ、カシュールカとムウルは、なんとか屋敷内に到着していた。


「うへぇ、きったねえ……」


 ムウルが屍に触られ掴まれ引っ張られた服を見てうんざりした口調で呟く。


「血じゃないだけましだろ?」

「どっちもどっちだぜ」


 ムウルが息を吐きながら肩をすくめた。


「二階……か」


 カシュールカは天井を見上げた。

 二人は今、玄関ホールに立っている。

 屋敷に入ってすぐの場所だ。

 目の前には二階に続く階段がある。


 しかし二階までそう容易には辿りつけそうになかった。


 低く唸る声が近づいて来る。

 右から、左から、上からも。


「またかよ!? なんだって次から次へとわけのわかんねえ奴ばっかり現れるんだ。ここにはまともな人間はいねえのかよ!」

「ゾルショワナは二人しかいないらしいからな。兵力的にはこういう物を使うしかないのかもな」

「そんな悠長に分析してる場合かよ、おい」


 ムウルは先ほど鞘に戻したばかの剣を再び抜く。

 カシュールカも柄に手をかけた。


 二人が会話をしている間に、甲冑は二人へと迫って来ている。


「悠長にしてるわけじゃ……」

「ええぃ、おまえらうじゃうじゃ現れやがってっ」


 カシュールカの言葉を最後まで聞かずに、ムウルは手近な奴に斬りかかった。

 袈裟懸けに一閃。


 しかし、さすがは屍。

 斬られれば呻くものの、その程度では動きを止めたりはしなかった。


「頭だ。頭を刎ねろ」


 言いながらもカシュールカは抜きざまに剣を一閃させた。


「うへぇ。近づくんじゃねえよ、こいつっ。ちっくしょう」


 ムウルがわめきながらも剣を振るう。

 騒がしいのが玉に瑕だが、剣の腕前がなかなかのものだということは既にわかっている。


 カシュールカも目の前に迫る屍を二体、三体と始末してゆく。

 首を切り落とせば動かなくなる。

 しかし量が半端ではない。息が弾む。


「おい、ルカさんとやら」


 ルカさんって、やっぱり俺のことなのか?


 戸惑いながらも一応返事を返す。

 足元には屍の切り落とされた首がごろごろ転がっていて、移動の際には気をつけなければならない。


「なんだ」


「先に行け。オレは先に指輪を探さねえといけねえ。多分、ミイの近くにあのゾルショワナの頭領がいるはずだ。そっちの方が手間がかかるに違いない。こっち片付けて、指輪見つけたらそっちに行くから、先にミイを見つけ出して助けてやってくれ」


「おまえに言われなくても、ミイは助け出す。けれど、この量だ。一人で大丈夫なのか?」

「仕方ねえよ。体力だけは自信があるんだ。おまえに心配してもらわなくてもなんとかする」


 カシュールカは二階へ続く階段を見上げた。


 いまだ動く屍の数が減った気がしない。

 ぞろぞろと現れる。


 しかし、ここで随分と手間取ったのも事実だ。

 ミイを連れて早く逃げないと、大変なことになる。


 その時、階段の裏辺りから大きな破壊音が響いた。


 それに続いて現れたのは、ハーダッシュ、副長、そして一味の仲間三名程だった。


「随分と薄気味の悪ぃところじゃねえか」


 ハーダッシュがにやりと口を歪めて笑った。

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