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第5章 〜唯一の光属性〜
「離れてください。
それとも力は敵わないと見せつけたいんですか?」
久しぶりすぎてすっかり忘れていた脳内ナレーションを聞きながら黒いオーラが吹き荒れる(大げさ)
「え?」
戸惑いを見せる勇者さま。
その表情に私の黒いオーラはナリを潜めた。
そしてツキんと胸が疼いた事は気にしないでおこう。
何か嫌な予感しかしない。
「勇者、多分ソレじゃ駄目だ。
もっと率直にいかないと。」
「え?
結構ストレートなつもりだったんだけど。」
「何をごちゃごちゃと。
とにかく、そういう事はやめてくださいね。
力の性差見せつけられちゃうとイラっとしちゃいますから。どうやったって男性には敵わないんですから。
それはそうと、魔王、おはよう。
珍しいわね、アナタがこんな朝早くから学園に来てるなんて。」
「コーラルおはよう。
今日は授業を受けに来たんじゃないんだ。
勇者、一緒に国へ来てくれないか。
お前の属性の力を借りたい。」
「珍しいな、お前がオレに何か頼み事するなんて。」
属性って事は光属性よね。
なら、令嬢に頼んだ方がいいんじゃないかしら?
確か唯一の光属性持ちよね。
性格はアレでも。
「性格はアレなんで、多分本来の力を発揮できないかな。
現状はオレの方が上だと思う。
魔王、いつ行く?
こちらはいつでも大丈夫だ。」
「ああ、突然悪いな。
こちらも大丈夫だ。
なら校庭に行こうか。
転移するならある程度の広さは必要だろう。」
かつて2人は敵対していたけど、今はこんなに自然体な2人。
突然の願いにも気負わず受ける勇者さま。
願いを口にしても変なプライドを見せずに感謝の意を素直に表す魔王。
いいわねー。
なんてボケっと考えていたら、
「コーラル、一緒に行く?」
「行く?」
という言葉と共に私の腰をガッチリ捕らえる勇者さま。
「面倒だからこのまま転移するぞ。」
え?は?
転移?
どこへ?
私命名の強制転移。
この世界では相手の返事を聞く前に転移させるのが当たり前なのか。
なんて思いながら辺りを見回すと、そこは灰色の世界、、、ではなく花々が咲き乱れ、色とりどりの世界が眼下に広がっていた。
「コーラルの好みに作り変えたんだ。
好きだろう?
彩り豊かな世界は。」
さらっと言う魔王。
え?
私好みって?
作り変えたって何?
「魔王、アレか?」
私の動揺をよそに魔王に問う勇者さま。
「ああ、そうだ。
だが勇者よ、たまには私の話しも聞くがいい。」
「ムリ、同じ色持ちってだけでお前に負けてるんだから少しでも点数稼がないと。」
また私には通じない事を言いながら向こうへ指を指す勇者さま。
そこには、、、。
花は千々に乱れ、風吹き荒ぶ灰色の世界が広がっていた。




