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私はお義父さまの言いつけ通り夜会の料理を堪能している。
さすが王家主催。
今まで見た事もないような謎の料理が並んでいた。
味も絶品だった。
男爵家のみんなにも食べさせてあげたかったなぁ。なんて思いながら肉料理に手を伸ばそうとすると。
「宜しければ、ダンスを一曲いかがてすか。」
顔の見えるイケメンが手を差し伸べてくるではないか。
「申し訳ありません。父に、お前はまだダンスは早いと許可を頂いておりません。
また次の機会にお誘い頂けるとありがたいですわ。」
なんて事を肉を片手に断るも
「そんなつれない事を仰らずに。
今宵、私の誘いに誰も乗って頂けていないのですよ。
そんな私を哀れに思い、一曲だけお願いできませんか。」
イケメンが眉尻を下げながら困った表情で食い下がる。
イケメンがそんな顔すると萌だわね。
ってそりゃそうでしょうよ、今夜は令嬢のお見合いパーティーなんだから。
夜会参加者は殆ど知ってるはずなのにこの目の前のイケメンは知らないときてる。
ただの頭数として呼ばれたらしい。
それに、父が。と言えばアッサリ引き下がってくれていた殿方達。
このイケメンは紳士ではなさそう。
口には出さず、それでもダンスなんぞ踊れない私はどう断るべきか悩む。
「探しましたよ。お嬢さん。
さぁ、私とダンスを。
お義父さんはお前となら構わないと許可が下りたとお聞きしましたよ。」
颯爽と勇者さま登場。
このヒトもお見合いパーティーって知らないのかしら?
「オレ達最終攻略対象だから。」
耳元で囁く勇者さま。
「最終?」
「魔王とオレ。」
救国の英雄の子孫か、魔物の頂点か。
令嬢には究極の選択らしい。
そりゃ、そうか。
そこら辺のイケメン貴族の坊ちゃんなんか足元にも及ばないくらいスペック高いもんね。
ってあれ?
「魔物、、、?」
「ああ、この世界では魔物と呼ばれても忌み嫌われる訳ではなく共生する世界なんだ。
もちろん人間との混血もたくさんいるぞ。」
いつの間にか近くにいた魔王。
へー。
いいね、そういう世界。
ほんの少しだけ好きになったよ。
「そうか?
なら、私を攻略してみるか?」
すごくゾクゾクする深みのある声だけど顔が見えないと全く萌ない。
「肉、美味いか?」
こちらの話しを無視しながら肉を頬張る勇者さま。
「コーラル、私にもその肉を分けてくれ。」
そんな事を言いながら私の取り皿から肉を攫っていく魔王。
相変わらずのマイペースな2人。
まぁ、いっか。
こんな感じでずっとやってきた私達。いい加減慣れたし、心地よいしね。
ちょっと1人でほんわかしながら3人で肉を取り合う。
目の前に山盛りいっぱいあるのにね。
そんな私の後ろで1人ほんわかしていない人がいた。
いつも通りイケメンを侍らせているあの人だ。