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5.対等な友達

「ステラ様! おはようございます!」

「出迎えご苦労」


「ステラ様、ラルフ様がお呼びしておりました」

「南東戦線についてだな、また顔を出すと伝えておいてくれ」


「ステラ様、その者は?」

「拾いものだ。なに、噛みついたりはしないさ」


 街につくと大盛況。

 渓谷を削って作られた大通りは十分な広さがあるが、それが埋まってしまうほどの人だかりができていた。

 俺たちを囲っているのは、全て右手に虎の刻印がある獣人で、俺には数奇な視線を送られている。


「お前、けっこう偉いんだな」


 そうぽつりと呟くと。


「口を慎め」


 ステラに冷たく返された。

 他の取り巻きもこっちを睨んでくる。

 ああ、そういう感じね。黙っておこう。


「おい、そこのお前」

「はっ」


 ステラが声をかけると、一人の男が前へ出てきた。


「至急、この男に合いそうな服を何着か用意して、私の家へ届けさせろ。あと、この男の処遇を決めるために面会したいと、ペネロペ様にお伝えしろ」

「はっ、かしこまりましたっ」

「それと、私は少し疲れた、悪いが休ませてくれ」


 ステラがそういうと、周囲の兵士が人払いを始め、できた人だかりはあっという間に解散となった。




「さて、ここが、私の家だ」


 さらに渓谷内を歩くとステラの家へたどり着いた。

 街の連中の対応から察するに、ステラはか地位の高い人間だと思うが、家は案外質素で、その辺にある家の造りと大差はない。


「ふぅ」


 家の中に入ると、ステラはため息をついた。

 家の中も、まるまる一人分の一軒家といった印象。特に代わり映えはしない。


「堅苦しそうだな」

「そう言うな。それよりさっきはすまなかったな」


 街中で冷たい態度をとったことについてだろう。


「別に気にしちゃいねぇよ。つーか、俺を家の中にあげてよかったのか? 護衛もいなねぇみたいだし。そりゃ俺には敵意はねぇけど、万が一ってことがあんだろ?」

「なに、フランでは私をどうにもできんさ」


 なめられたもんだな。俺の能力も知らねぇくせに。


「で、俺はこれからペネロペ様とやらに会いに行くのか?」

「ああ、だが今すぐというわけではない。面会の約束ができるのは明日以降だろう」


 もちろん、今すぐに行くとは思っていなかった

 むしろ。


「ペネロペ様って、この国で一番偉いんだろ? 1日2日でアポイントとれんのかよ?」

「普通はとれないが、……私はこう見えてけっこう偉いんだ」

「それはわかるけどよ。偉いって、どんくらいだよ?」


「この国で2番目」


「え゛」


 思っていたより遥かに、クソ偉かった。


「最も、“2番目に偉い”に属する最高官吏は全部で8人いるがな」

「2位タイでもびっくりだっつーの。あれか? 俺も態度を改めたほうがいいか?」


 最初に出会った時から、おもっくそ失礼な態度をとり続けている。


「いや、二人の時は今のままでかまわんさ。もっとも、皆の前ではある程度礼節を持ってほしいがな」

「おー、そりゃ助かる」


 ぶっちゃけ俺は、小さいころからもてはやされて生きてきたから、敬ったりだとか謙ったりだとかを、うまくできる自信がない。


「つーか、偉いっつーわりにはずいぶん質素な家だな」


 周囲を見渡しながら言う。

 奥に一つ部屋が見えるが、いうなれば1LDK、置いてあるものもずいぶんと生活感が漂う。


「大きな家に住むと管理が大変だろう? 生活空間に使用人がいるのが許せなくてな。このくらいの家がちょうどいい」

「なるほどなぁ」


 まあ実際俺も、金持ってる割りには家も小さかったし、使用人も雇ってなかったからな。そんなもんなのかもしれない。

 もっとも、俺の場合は家にいる時間がほとんどなかっただけだが。


「さてと、まずはその傷の手当てだな。その次は食事だ、腹が空いているだろう。そして、服が届いたら外に出よう、街を紹介する」

「お、おう」


 ステラが機嫌よく胸を張った。


「よし、傷口を見せろ」


 ステラが棚から救急箱を取り出すと、俺に傷を見せるよう催促した。

 俺は言われた通りに、ステラからもらった上着を脱ぎ、傷をさらす。


「少し沁みるぞ」


 消毒液と思われるものを、ガーゼに垂らすと、それで俺の傷口を軽く叩く。


「ィッ……」


 やっぱり沁みる。めちゃくちゃ沁みる。


「あんた自らこんな下っ端みてぇなことしなくても、俺の世話なんて部下に任せりゃいいじゃねぇのか?」


 思ったことを素直に言ってみた。


「迷惑か?」


 ステラがこちらの顔色を窺ってくる。

 なんだその反応。


「いや、そういうわけじゃねぇよ。だけど、これから俺はてめぇの部下になるんだろ? 立場っつーかなんつーか」

「ああ、そういうことか」


 ステラは少し考えると、観念したように話し始める。


「素直に理由を言うと、私にとってフランは貴重なのだ。

 前も言ったが刻印に頼らず刻印者に渡り合えるものは珍しい。と、いうよりアーノルドクラスを刻印なしで下せる人間は見たことがない。

 それぞれの最高官吏の持つ権利は同等だが、その発言力は功績によって左右される。

 私は、フランが強い戦力になるのではないかと、期待しているんだ」


 そのことについては理解しているつもりだ。

 敵味方の判断は刻印でしているみたいだし、刻印なしで戦える俺はそれだけで隠密任務にもってこいだ。

 それに、俺が刻印を受けたとしたら、虎の刻印の力+俺の能力で高い戦力になるはずだ。

 だが、それだけにしては、どうも……。

 そう疑問に思っていると、ステラは「それと」と、照れ臭そうに続けた。


「私は立場上、対等に話せる者がいなかったんだ。

 だから、たとえ“ごっこ遊び”みたいでも、友人らしく話せる相手が出来て、うれしいんだ」

「立場上ってなんだ?」

「まあ、その辺は追々説明するさ」


 ステラが困ったように笑った。


「あー、まあ。いちおう納得したわ」


 俺はこっちの世界の常識に囚われないから、ステラと対等な友人になれることを期待されていたのか。


「…………」


 しばし、沈黙が走る。


 ステラは黙々と俺の手当てを続けてくれているが、少しだけ気まずそうだ。

 まあ、確かに一方的に友人になれるを期待している、なんて言ったら気まずいわな。

 俺の警戒を解くために仕方がなかったのだろうが、この気まずい感じは取っ払っておきたい。

 なんせ、俺からしたらステラは生き抜くための頼みの綱だ。


「……なあ、俺の話、していいか?」

「かまわんが……なんだ?」


「俺は元の世界……オルレットでは“大国級”って呼ばれててな。それは世界で10人もいないレアな称号で、一人で一億人分の影響力があるって意味なんだわ。

 能力の基本性能は訓練で伸ばせねぇから、持って生まれたものが他の奴ら違ったわけだ。

 それはもうもてはやされたよ。なんせ、俺に取り入りゃ一国を相手にできるほどの力が手に入るからな。

 だが、取り入ろうとするやつらにとって不運だったのは、俺がそんなバカどもより賢かったことだ。

 物心ついた時には、俺は自分を取り巻く状況をなんとなく理解してたし、取り入ろうとしてくる連中は、ゴミクズにしか見えなかった。

 俺はこんな性格だし周りのやつらをゴミクズとしてしか見てなかったから、友達なんていなかった。

 だから、今後ステラは俺の初めての友達になるわけだ。

 同じ友達初心者同士、ぎこちなくなるのは仕方ねぇが、仲良くやろうぜ」


 俺はニヤリと笑った。

 話したことにもっぱら嘘はない。

 今のさっきまで、ステラと友達になることなんて考えもしなかったが、相手がそれを望んでいるならダチでもなんでもなってやる。


「フフッ、なかなか可笑しなやつだな。フランは」


 ステラもつられて笑った。


「おう、俺のダチになるからには退屈はさせねぇよ」


 ――それに、初めての友達に、少しワクワクしている自分がいた。

おまけ、○○級について。


フランが時々口にする○○級とは、能力者の影響力を示している。


評価は五段階で、

個人級:能力者の影響力が個人の力+α程度で収まる能力者。全体の99%

組織級:個人級の100倍の影響力がある能力者。

連合級:個人級の10000倍の影響力がある能力者。

国家級:個人級の1000000倍の影響力がある能力者。

大国級:個人級の100000000倍の影響力がある能力者。

に分かれる。


だが、同じ階級内でも底辺と頂点の能力者ではかなり差があるため、上位階級には届かないがそれに近い能力者を、準○○級と表す10段階方式が一般的になりつつある。


また、能力は基本的に成長しないが、能力者は成長するので後天的に階級が上がることもある(フランシスも6歳ごろまでは準大国級だった)。


ちなみに、この階級は雇用の際、賃金に大きく影響する。

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