X.ステラ:0年前
ペネロペ様が西の女神に即位されてから、もう3年の月日がたった。
ペネロペ様育成の功績によって、最高官吏にまで上り詰めた私は日々任務に明け暮れていた。
女神に即位されるまでは、四六時中一緒にいたが、女神になってからは任務以外で合っていない。
ペネロペ様からはプライペートな誘いが何度も来ているが、すべて断っている。
なぜなら、二人きりになると使命を全うしなければいけなくなるから。
そう、私は完全に情に流されてしまったんだ。
使命のことを忘れることはできない、同胞のため女神を生かしてはおけない。
でも、ペネロペ様を殺したくないと、強く願う自分がいる。
もうあれから50年も経ってしまったんだ。
復讐の意志も、使命への決意も、燃え尽きてしまうには十分すぎる時間だ。
だが、それでも、生活と使命の葛藤が消えることはない。
この葛藤は、辛く心にのしかかる。
そんな気持ちが堂々巡りをして、どうしようもなくなってしまった時、私は街の外へ散歩に出る。
生命力あふれる大自然に囲まれると、ほんの少しだけ霊獣界のことを思い出す。
故郷を懐かしむ。
このまま使命への決意が再び強まり、ペネロペ様を殺すことができたらどんなに楽だろう。
そして、どんなに悲しいだろう。
ああ、ああ、この葛藤から解放されたい。
どうか、どうか、どうか。
私の心にもう一度火をつけてはくれないか?
誰か、誰か……。
「あれは……?」
ふと空を見上げると、人が落ちてきた。
女神殺しのフランシス ――完。




