X.ステラ:20年前
先の戦いで頭部を破壊された。
たとえいくら再生能力が高かろうと、脳に保存されている記憶まで再生することはできないので、頭部を破壊されれば死に至る。
だが、私は生きていた。
顔は元通りに治り、記憶もちゃんと保持している。
他の皆は、霊獣能力の『格』が高いからだと理解したみたいだが、違う。
私の本体はこの右手にある刻印なのだろう。
右手を切断したことはないが、もし切断されたら右手から体が生えてきて、元の体は動かなくなるのだと思う。
そう思うと、悔やむ、悔やみ、悔やみきれない。
それはつまり、最初の段階で右手を切断していたら、右手から私が再生され、動かなくなった体は、ステラの記憶によって動き出したのではないのだろうか?
もちろんそれは可能性の域だ。
通常、再生能力者が右手を切断したところで、また刻印がある右手が生えてくる。
刻印は魂に刻まれるもの。だがら物理的に分断しても意味がないかもしれない。
だが、どれだけ小さな可能性であったとしても、やっておくべきだった。
中央界で、唯一心を許せる存在、ステラ。
もう君はどこにもいない。
頭部を破壊されてからというもの、ステラの過去を思い出すことができなくなってしまった。
知識は私自身の魂に還元されているので、生活には支障がないが、もうステラを感じることはできない。
この頭は空っぽだ。