X.ステラ:40年前
こちらの世界に来てもう十年か。
物理にもすっかり慣れてしまった。
霊獣能力は元となった霊獣の『格』に左右されるらしく、その最高峰である私は、他の兵を寄せ付けない強さを誇っていた。
それに、ステラ自身も優秀だったらしく、勉学の方で後れを取ることもなかった。
体はまだ11~12歳と幼いままだが、順調に出世し、女神に近づいていることが実感できた。
すまないステラ、君は女神を殺すことなんて望んでいないのはわかっている。
それでも私は、私のため、同胞のため、この復讐を成し遂げなくてはいけないんだ。
君の体で女神を殺そうとしている私を、君は許してくれるだろうか?
……そうだな、もう君は答えてはくれないんだったな。
ステラの記憶が徐々に薄れていくのがわかる。
いや、私の魂に浸透してきていると言ったほうが正しいか。
なんにせよ、初期の頃に感じていた、脳内のもう一人の自分と会話しているような感覚が、消え去っていた。
きっと何らかの方法で刻印を取り除けたとしても、この体はステラに戻れないだろう。
記憶のステラはいつも優しく、私に足りない知識を教えてくれた。
だから、周りに敵しかいないこの世界でも、ひとりぼっちの感覚を味わうことはなかった。
ステラ、ごめんよ。
もう少しだけ、私のわがままに付き合ってくれ。
この復讐が、この復讐が終わるまででいいから――。
そんな時、私に一つの噂が耳に入った。
女神様がご退位される?