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-66- 探(さが)す

 久しぶりに休めることになった外科医の南波なんばは、朝の朝食を済ませ、満ち足りた気分でコーヒーを飲みながら新聞を呼んでいた。買い物に出るには、まだ少し時間があるな…と瞬間、思った南波は、新聞を読む手を止めると、何げなく立ち上がった。庭の雑草が少し生えていたことを、そうだ! と、思い出したのだ。思いつけば、やらないと気が済まない性分しょうぶんの南波だったから、当然、動いた。

 庭が見渡せる廊下のガラス戸を開け、足継ぎ石から外へ降りた南波は、いつも除草作業で使っている小ぶりのシャベルを出そうと収納してある置き場へと取りに行った。ところが、である。いつも置いているところにシャベルはなかった。はて? と首をひねった南波だったが、思い当たるふしはなく、妙だなあ…と、置き場の下、右横隅、左横隅・・とさがし回った。が、やはりどこにもシャベルはない。これでは作業ができないぞ…と意固地になった南波は、また、あちらこちらと探す行動に没頭ぼっとうした。15分ばかり探したが見つからず、弱ったぞ…と南波は停止して、庭から上がることなく廊下へ腰を下ろした。腕を見ると、思ったほど時間は過ぎていなかった。別の日でもいいか…と一端は思った南波だっだが、やはり、思いついたことはやらないと気が済まない性分が、それを許さなかった。南波は別の小ぶりの金属道具を手に除草を始めた。そして時間は流れた。ひと通り、作業を終えた南波は、やれやれ…と溜飲りゅういんを下げ、自分自身に納得して作業を終えた。上手うまい具合に頃合いの時間になっていた。頭の中には、シャベルはどこに? …という意識がまだ残っていたが、除草を済ませたお蔭で見つけられないわだかまりは南波の心中で小さくなっていた。その後、南波は買い物に外出し、ふたたび家へともどった。腕を見ると、昼前になっていたが、昼にはまだ少しあった。よし! もう一度、探すとするか…と、南波はふたたび廊下の足継ぎ石から庭へ下りた。そして、ないだろうが…とあきらめながらブラリと庭をひとめぐりして足継ぎ石へ戻ったときである。何げなく見た視線の先に、これも何げなくシャベルが横たわっていた。そのとき、あっ! と南波は思い出した。そうそう、植え替えで使ったとき、急患の連絡が入り、そのままになってしまったんだ…と。ばつ悪く、な~んだ…と思わず笑みがこぼれ、南波はボリボリと首筋をいた。

 探すことをやめたとき、何げなく見つかる・・ということは、確かによくある。


                    完

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